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民医連新聞

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相談室日誌 連載241 生活保護は個人単位で受給できるのに 知念 真悠子

腹痛と嘔吐を主訴に、Aさん(六〇代・女性)が当院を受診しました。Aさんは、保険に加入しておらず、医療費を支払えるお金もありませんでした。彼女は これまで清掃業などのアルバイトを続けてきましたが、数年前から体調を崩し、働くことができない状態でした。弟と二人暮らしですが、弟はなかなか仕事が見 つからず、Aさんの年金収入(二カ月で七万五〇〇〇円)で生活していました。
 Aさんは胃潰瘍と右乳腺炎(乳癌疑い)で入院となり、本人の希望で生活保護を申請することになりました。生活保護の申請窓口では、本人の入院治療の必要 性を訴え、即日受理されました。しかし、ほっとしたのもつかの間、数日後「Aさんの生活保護の申請は取り下げになった」と、担当者から連絡が入りました。 理由を聞くと、同一世帯にいる弟に就労指導をしたところ、「保護は姉だけでいい。自分は必要ない」と答えたことから、取り下げになったのです。その後、A さんが弟に理解を求め、再度保護申請にいたりましたが、それは入院してから二週間後のことでした。
 生活保護は世帯単位を原則としているため、医療費の必要なAさんだけでなく、弟もいっしょに申請する必要があるのは確かです。しかし、法の規定では「例 外として個人を単位として保護の要否程度を定めることができる」となっています。これを「世帯分離」といいます。世帯分離については、次の例があげられま す。「稼働能力があるにもかかわらず収入を得るための努力をしないなど保護の要件を欠く者があるが、ほかの世帯員が真にやむを得ない事情によって保護を要 する状態にある場合には、当該要件欠如者を世帯分離することができる」。弟を世帯分離し、Aさんだけでも生活保護を申請することはできるはずなのです。
 現在Aさんは退院し、通院治療を行っています。保護が開始となり、安定した生活を送れるようになりました。しかし、再申請までの期間にかかった医療費に ついては、一切保護費から支給されません。Aさんに渡された約二〇万円の医療費の請求書を見て、「世帯単位の原則」にこだわった保護課の対応に疑問を感じ ました。

(民医連新聞 第1406号 2007年6月18日)

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