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民医連新聞

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連載 安全・安心の医療をもとめて(53) 宮城・長町病院 回復期リハビリテーション病棟での転倒・骨折事故予防 第1回 全患者に転倒予防対策を

 第三回医療安全交流集会(三月三~四日・福岡)の分科会「転倒転落事故の予防」で基調講演した、宮城長町病院院長、リハビリテーション科医師・水尻強志さんの寄稿を連載します。

 運動器障害を持つ高齢者や脳損傷患者では、自己管理が困難であるため、転倒・骨折事故が高率に生じます。一方、転倒を恐れて十分なリハビリテーションを実施しないと、廃用症候群による機能低下を生じます。回復期病棟運営上、安全性と活動性の両立は重要な課題です。
 転倒リスク評価として、看護協会の評価表が有名です。しかし、実際に回復期病棟で使用してみると、ほぼすべての患者がハイリスク患者となり、手間がかかるだけで実用的ではありません。

リハ病棟の転倒状況

 当院調査による転倒リスク評価の概要を示します。対象は、二〇〇三年一月一日以降に当院リハビ リテーション病棟に入り、二〇〇四年一二月三一日以前に退院ないし転棟した患者三八六人です。なお、当院リハビリテーション病棟は、二〇〇四年八月に医療 療養病棟から回復期病棟に移行しています。
 転倒者は一一六人であり、転倒患者率三〇%でした。大腿骨頚部骨折が四人に生じ、全転倒回数二七〇回の一・五%でした。坂総合病院調査(二〇〇四年)で は、転倒率三二%、重大合併症発生率二・三%であり、当院と同様の傾向を示しています。なお、施設入所者では年間三〇~四〇%の方が転倒し、その中の一 〇%に骨折事故が起こると報告されています。リハビリテーション病棟では、転倒率はほぼ同様ですが、重大事故はより少数です。
 当院転倒率を、のべ入院患者数でみると、九・五回/千人日となりました。この指標は、全転倒回数/のべ入院患者数×一〇〇〇で計算します。ちなみに、欧 米の転倒予防プログラムに記載されている値をみると、約四~一〇回/千人日となっています。転倒場所は、ベッドサイドが二〇五回七五・九%と最も多く、つ いで看護室・デイルームが二九回一〇・七%でした。

転倒リスクの評価

 転倒リスクを評価し、有意だったものをロジスティック回帰分析にかけたところ、表1のような結果となりました。なお、FIMは代表的なADL指標です。
 入棟時FIM車椅子移乗二~三点(一部介助)と評価された患者は、六~七点(自立)と判断された患者と比べ、一四・七倍も転倒しやすいという結果になり ました。同様に、四~五点(監視~最小介助)群の対自立群オッズ比は六・四倍でした。また、睡眠剤などの精神神経系薬剤服用患者は、服用がない患者と比べ 転倒リスクが一・六倍という結果でしたが、統計的には有意ではありませんでした。
 初回転倒時の移乗能力を示したのが表2です。入棟時FIM車椅子移乗一点(全介助)の患者は、二七人中一六人五九・三%が一部介助以上となってから最初の転倒を起こしています。
 結果をまとめると次のようになります。(1)入棟時車椅子移乗一部介助群が最も転倒しやすい。(2)当初車椅子移乗全介助でも介助量が減ってくると転倒 する。(3)車椅子移乗が自立している患者は転倒しにくい。(4)全介助にとどまる群も転倒しにくい。(5)精神神経系薬剤内服者は転倒リスクが高まる可 能性がある。

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転倒を前提にした対策

 回復期病棟の特性を考えた場合、転倒リスク評価表をつけることに労力を費やすことは非効率的です。無駄とさえ思えます。むしろ、回復期病棟入院患者すべてに転倒リスクがあると考え対応した方が、効果的かつ効率的です。当院の転倒予防基本方針は次のとおりです。
 (1)移動当日に、転倒し骨折を起こす危険性があることを医師よりご説明します。(2)初日に病棟スタッフと療法士が起居移動動作、認知機能を評価し、 ベッドサイド環境調整や車椅子選定を共同で行います。(3)病棟でのADLを定期的に評価し、安全性が確認できた項目から監視や介助をはずしていきます。
 次回は、当院の転倒予防対策について具体的に説明します。

(民医連新聞 第1405号 2007年6月4日)

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