相談室日誌 連載237 納得できない退院先―患者もSWも 加藤 由有子
当院は三病棟のうち二病棟が回復期リハ病棟です。一病棟四五床の担当SWとなり、まもなく一年です。回復期リハ病棟には、厚生労働大臣の定める入院基準で、算定上限日数が決められ、SWのおもな仕事は、紹介入院の受け入れと退院支援です。
ご家族が迎えに来て、自宅に退院するときの患者さんの笑顔は最高です。一方で、施設に入所する患者さんの、悲しげな顔も多く見てきました。有限会社が経 営する新設のシルバーホームに、同じころ入所した二人の患者さんを思い出すと、「これでよかったのかな? これしかなかったのだ…」と複雑な気持ちになり ます。
Aさん(六〇代・男性)は要介護1の認定を受け、デイサービスとヘルパーを利用して無職の息子と二人で生活していました。五年前までドライバーとして働 き、労災の給付金と厚生年金で住宅ローンを返済しながらの生活でした。息子はAさんの預金を使い込んで行方不明になってしまいました。姉夫婦がお金の管理 や今後のことを心配してシルバーホームに入所することに。自宅退院が無理だとわかったAさんは、リハビリの意欲をなくし、車椅子で退院しました。
行方がわからなくても、Aさんにとっては心配で仕方のない大事な息子。外来受診するたびに涙を浮かべます。息子との生活を夢見ているようです。現在「成年後見制度」利用の手続きに入っています。
Bさん(六〇代・男性)もひとり暮らしで、猫数匹と住んでいました。病気になり生活保護を受けました。結婚歴があり子どもがいますが消息不明です。何と か杖歩行になりましたが、要介護2で一人暮らしは不可能。シルバーホームに入所しました。気ままな一人暮らしへの思いが強く、いやいやの入所でした。
生活保護で入所できる老健施設は待機期間が長く、Bさんに選択の余地はありませんでした。週一回デイケアに通い、「つまらない」と言いながら生活しています。
私も、「ここしかないのだから」「食事と身の回りの世話はしてくれるのだから」と無理に自分を納得させ、退院支援をしている「つらい」現状です。
(民医連新聞 第1401号 2007年4月2日)
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