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民医連新聞

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相談室日誌 連載236 入院できず自殺未遂した在日外国人 谷岡 美紀

「ブラジル人で無保険の人が昨夜救急搬入された。出血性胃潰瘍で入院したので面接してほしい」と、病棟から連絡がありました。
 Aさん(三〇代・男性)に事情を聞くと、「五年前に日本に来て神奈川にいたが、一年前から広島の銭湯で働いている。収入は二五万円ぐらいあるが、今は四万円ぐらいしか払えない」といいます。
 国民健康保険はさかのぼって加入できることを説明しましたが、「保険料を負担できないので治療せず退院したい」と希望します。外国人登録証について尋ねると、「今は持参していない。内容はわからない」といいます。
 主治医の退院許可が出るかわからないので、Aさんの了承を得て、生活保護申請のため福祉事務所に連絡しました。その後、Aさんは主治医から病状を聞いた上で、胃カメラを中止し自主退院しました。
 しかし、数時間後、服薬自殺を図り、再び救急車で運ばれてきました。診察の結果、命に別状はなく、恋人と相談室を訪れました。
 恋人は、苦しそうに嘔吐するAさんの背中をさすりながら、「国保加入は外国人登録がある神奈川で試みたが、手続きが難しく断念した。もうやりたくないと いっている。自費で支払います。これまでもそうしてきた」と言いました。結局そのまま帰宅し、現在も治療費の支払いはないままです。
 在日外国人は、外国人登録を行っていて在留期間が一年以上の場合は、国民健康保険に加入でき、就労している場合は社会保険の適用にもなります。しかし、不法就労の場合は健保の適用とはなりません。
 Aさんが不法就労なのかどうかは、本人や恋人に尋ねましたがはっきりしませんでした。母国に仕送りするため、国保に加入しなかったのかもしれません。
 公的医療保険、医療扶助の適用を受けられない外国人のため、医療費救済制度を設けている都道府県もあります。しかし、広島県にはその制度がなく、国保加入も拒んだため、Aさんは治療を中断することになりました。
 Aさんが来院したのは年末。母国から遠く離れた地で身体と心を患い、どう新年を迎えたのか、気がかりでなりません。

(民医連新聞 第1400号 2007年3月19日)