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民医連新聞

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記者の駆け歩きレポート(10) 「自宅で最期を」 その願いにこたえたい 在宅療養支援診療所

 東葛病院附属診療所は、二〇〇六年四月に、二四時間対応が要件の在宅療養支援診療所の届け出をしました。いま、往診回数、在宅での看取りが増えています。副所長で在宅医療責任者の戸倉直実医師に、苦労ややりがい、看取りへの対応を聞きました。(川村淳二記者)

 診療所がある千葉県流山市は人口約一五万人。隣の柏市には国立がんセンター東病院がありますが、緩和ケア病棟に入院できず、在宅にいて最後は救急車で東葛病院に運ばれ亡くなる患者さんもいます。
 「終末期の患者さんと家族はすごく不安なものです」。戸倉直実医師は言います。同じ法人の新松戸診療所で、在宅医療や終末期医療に携わっての実感です。 診療所が夜間や休日も対応できれば、安心して家で療養できる。在宅で最期を迎えたい、という願いにも応えられる。こうした議論で、診療報酬がついたことも 契機になり、届け出の準備をすすめました。

外来減らして往診を強化

 在宅での看取りのポイントは、患者さんの具合が悪くなった時や、家族が不安になったときは、とにかく訪問すること。手厚い往診が必要です。診療部で議論を重ね、外来単位数を減らし、往診単位数を増やし、看護師二人を専任化しました。
 休日・夜間は、医師と看護師が携帯電話を持って待機します。五人の医師が輪番で担当して、病院の当直医とも連絡をとりあい、対応しています。看護師は診 療所師長と三人で行っています。二四時間対応をしている、同法人の訪問看護ステーションとも連携を強化して対応しています。
 在宅の新患は月一〇人前後です。週一回、受け入れカンファレンスのあと、まず戸倉医師が訪問診療し、ほかの医師に割り振ります。東葛病院を退院する患者さんの場合は、退院前カンファレンスに参加して調整します。
 医師は地域を決め、継続して患者さんを担当します。往診や終末期医療の基準をつくり、基本的な診療レベルをそろえました。専門的な治療や、日中の臨時往 診、休日・夜間の往診は、お互い協力して対応しています。月一回は学習会も開催。テーマは麻薬処方やじょく創など。病棟や訪問看護ステーションの看護師も 参加しています。

患者・家族と「死」をみつめ

 患者さんや家族の不安を少しでも減らすため、看取りのためのパンフレットを作成しました。
 病院の倫理委員会と協力し、昨年一一月には二回目の「公開医療倫理講座」を開催。九割近い人が病院で亡くなり、「死の医療化」といわれる現在、あらため て「死」について考える企画にしました。今後は患者さんの尊厳を守るため、その意思を公的文書にしておく「終末期のリビングウィル」も検討課題にあがって います。

 現在、在宅医療は医師一〇人、看護師四人の体制で、二〇〇人ほどの患者さんを診ています。往診回数は届け出前の約一・五倍(月三〇〇回)に増えました。 在宅での看取りは毎月一~五人あり、終末期の患者さんの約半数にあたります。しかし、現在の体制ではこれ以上患者数を増やせません。市内の在宅療養支援診 療所は二カ所だけです。地域の医療機関との連携も課題です。
 「患者さんや家族からとても感謝され、医療者としてやりがいを実感しています。だからこそ、はじめたら決してやめない決意が必要です」と戸倉医師はいいます。

(民医連新聞 第1399号 2007年3月5日)