原爆症認定集団訴訟名古屋地裁判決について
2007年2月6日
全日本民医連原爆症認定訴訟支援医師団
全日本民医連被ばく問題委員会
1月31日、名古屋地裁は、原爆症認定愛知集団訴訟に関して、原告4名中2名について、国の認定申請却下処分を取り消す、原告勝訴の判決を下した。
私たちは、この判決が原告2名の棄却を含むものとなったとはいえ、同じ集団訴訟の近畿判決、および広島判決に引き続き、「審査の方針が採用する原因確率 論のみを形式的に適用したのでは、その因果関係の判断が実態を反映せず、誤った結果を招来する危険がある」という判断を示した点を評価するものである。
今回勝訴した2名の原告のうち1名は入市被ばくによって生じた甲状腺悪性リンパ腫であったが、残留放射線被曝の事実を積極的に肯定し、さらに原告にみら れた脱毛や下痢などの急性症状がストレスや栄養状態の悪化に因るものだとする国の主張を「相当数に上る調査等の規模、内容に照らして不自然」であると斥け ている点も評価される。
他の1名の場合も現行審査では全く認められていない慢性腎不全と多発性脳梗塞であったが、医学的な根拠や調査結果があるとする原告側の主張に沿った積極的な判決内容である。
しかしながら今回の判決が、審査の方針を明確に否定した先の大阪地裁、広島地裁の判決と比べ、DS86(02)や審査の方針について一定の合理性を認め ており、この点では一歩後退している内容になっているとの危惧をもつものである。
敗訴した2名の原告は白内障と嚢胞性膵腫瘍(良性腫瘍)であったが、判決の中でこの2つの疾病への放射線の関与を否定できないいくつかの医学的根拠や調 査に言及しているにも関わらず、結局放射線起因性は「不明」、「認めるに足りるほどの証拠はない」として原爆症と認められなかったことは残念である。
被爆者医療の現場にいる私たちは、医学的に未解明で証明困難な場合でも、原爆放射線の影響が否定できない健康被害が明確に認められる場合については、救 済していく、という認定行政への転換が必要であると考えており、今後も全国各地の集団訴訟への支援を惜しまないものである。
また国に対して、高齢化している被爆者が1日も早く救済されるように、判決が原爆症と認定した原告に関する控訴を断念するとともに、原爆症認定行政を抜本的に改めることを強く求めるものである。
(民医連新聞 第1398号 2007年2月19日)
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