地域で医療を守る(5) 乳幼児、重度障害者、ひとり親家庭 3つの医療費助成が窓口無料化に 山梨県
今回は、山梨・渡辺吉基通信員の報告です。山梨県が「乳幼児」「重度障害者」「ひとり親家庭」の医療費助成の窓口無料化を、〇八年度からの実施に むけて準備していることが、〇六年の一二月県議会で明らかになりました。窓口無料化の県内対象者は、県民人口の約一割の九万人。医療費助成について三つが 同時に窓口無料化されるのは、全国でも珍しいニュースです。
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乳幼児、障がい者、ひとり親家庭の方には医療費の助成制度があります。しかしこの制度は、都道府県や市町村の単独事業のため、対象者、所得制限、自己負担、助成方法など全国まちまちで、統一されていません。
「助成は窓口で無料化に」と、長年要望を続けて
山梨県に対し、特に助成方法について「償還払いから窓口無料にしてほしい」と強く要望し、その 運動を行ってきました。私は長年、民医連の医療ソーシャルワーカーとして働く中で、乳幼児、障がい者、ひとり親家庭では医療費助成が償還払いのため、医療 費を立て替えることさえ困難な事例を、いく度も経験してきました。
県内には窓口無料化の実現をめざしてさまざまな運動がありました。二四年前、一九八二年の二月県議会で「山梨の医療と福祉をよくする会」と「腎臓病友の 会甲府共立支部」が重度障がい者の医療費を窓口無料とする請願を行い、その請願が採択されました。しかし県は、「今後とも窓口無料化を検討する」という答 弁で、具体化しませんでした。
また、一九九一年一〇月に一一の患者会や障がい者団体の代表の呼びかけで山梨県重度障がい者(児)医療費助成制度の改善を求める会(以下、求める会)が 結成され、翌年二月に窓口無料化を求める二七六一筆(累計で一万四八〇四筆)の署名を提出して要請しました。県厚生部長は「今後検討していきたい」と回答 しました。求める会は、その後県内六四市町村長や議会へキャラバン要請行動をしました。
〇三年六月に県内の医療関係者や保育士ら有志が「子どもの医療費窓口無料を求める会」を発足させ、県への署名三万五八二三筆、甲府市への署名一万六三〇四筆を集めて県や甲府市へ一七回にわたって要請してきました。
山梨県社会保障推進協議会(以下、県社保協)は、〇三年一月県知事選で各立候補者へ「窓口無料にする考えはありますか?」の公開質問書を提出し、当選し た知事から以前に比べて一歩前進した回答をひきだしました。県社保協は六回にわたり「乳幼児、障がい者、ひとり親家庭」の窓口無料を求めて要請してきまし た。
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〇六年三月、厚生労働省が、「支払い基金が乳幼児など県や市町村の単独事業の審査支払いができることとした」と通達(保険局長)。こうした中でついに山 梨県知事は、〇六年九月県議会で「乳幼児、重度障がい者、ひとり親家庭の医療費助成について窓口無料化したい」と所信表明。〇八年度から窓口無料化が実施 されることになりました。
(民医連新聞 第1397号 2007年2月5日)