フォーカス 医療・福祉の実践(10) 早期発見・支援など実践しメンタルヘルスが改善 福岡医療団
休業や離職の原因として問題になっているメンタルヘルス不全。福岡医療団では二〇〇二年から〇三年にかけて、健康リスクが一〇% 増加したことを受けて、カウンセラー・精神科医と契約し、メンタルケアの相談・早期発見の支援を開始。〇五年六月に「心の健康づくり計画」および「職場復 帰システム」を策定し、「心の健康相談室」を設置しました。その結果、健康リスクが下がりました。舟越光彦医師が報告しています。詳しくは『民医連医療』 五月号に掲載予定です。
福岡医療団では、二〇〇二年から全職員を対象にアンケート調査を行っています。〇六年の結果は、全体的に改善傾向(回答数七三六人)を示しました。
今回の調査で、職務ストレスによる健康リスクは、〇五年の一〇五から一〇一に減少しました。仕事量や裁量度は変わりませんが、上司や同僚からの支援が改 善したためだと考えられます。また、最も健康リスクが高かった急性期病棟の看護師が一〇二となり、顕著に改善しました。ストレスの軽減に連動して「働きが い」が向上しているのが目立ちました。「働きがい」は、医療の質向上に直結します。
「心の健康づくり計画」の実践
「民医連職員が健康で働き続けられるための指針(案)」で示された、計画的で水準の高い労働安全衛生活動の推進が、「心の健康づくり計画」です。その内容は、ストレスのコントロールとメンタルヘルス不全者への支援です。
この計画を全面的に実践することが必要ですが、当面、力を入れるべきこととして、以下の点を提言しています。
一、 衛生管理者の早期の専任配置
職場のメンタルヘルス対策をいっそう推進するために産業医とともに産業保健スタッフの中心になる衛生管理者の専任化が必要。
二、職場レベルでの職務ストレス対策支援
職場レベルで解析を行い、メンタルヘルス対策を推進すること。職場ストレス対策のためにグループワークなど、効果的な学習や討論の場をつくることが望ましい。
三、メンタルヘルス教育の充実
制度教育の中に、系統的にメンタルヘルスを含む労働安全衛生教育を取り入れること。
四、仕事量の適正化
(1)全職員の労働時間管理を行うこと
(2)仕事量の適正化を図り、職務ストレスの軽減を図ること。日常的に長時間となる部長職にも、計画休暇制など休暇取得促進の手だてを行う。
五、職場での支援度を高める
上司が多忙で、部下から報告・調整がしにくい場合に、上司の支援は低下しがちである。上司の仕事を適正化することで改善が期待できる。
管理監督者に、ストレスに関する知識や部下への対応法を教育することによって、部下への支援を増加させることが期待できる。
六、職員教育の改善
OJT(仕事中、仕事遂行を通して訓練をすること)の水準を高め、職員の職務遂行能力の向上を図ること。育成面接などを通じて、キャリア開発の支援をし、メンタル不全の早期発見に努めること。
七、労働安全衛生対策の推進
PDCAサイクル(品質の維持・向上、継続的な業務改善活動を推進する手法)を用い、労働安全衛生マネジメントシステムを構築する。
(民医連新聞 第1397号 2007年2月5日)