• メールロゴ
  • Xロゴ
  • フェイスブックロゴ
  • 動画ロゴ
  • TikTokロゴ

民医連新聞

民医連新聞

リハビリ打ち切りで悪化多数 日数制限やめ維持期の評価を

 診療報酬改定でリハビリ治療に日数制限が設けられ※、打ち切られた患者さんの状態が悪化した、など被害が報告されています。全国 保険医団体連合会(保団連)の緊急調査で、「脳血管疾患等リハⅠ」届け出病院の調査(二九八カ所が回答)だけでも、一万人近くが打ち切られたことが判明し ました。「リハ打ち切りは、透析患者の透析、慢性疾患患者の投薬中止と同じ、死の宣告だ」と患者さん。一刻も早く見直すことが必要です。(木下直子記者)

機能が低下した

 「九二八二人」。リハビリ治療が打ち切られた患者数です(一一月一六日時点)。「予想以上の数 でした」と、調査を担当する保団連の阿部綾子さん。設備やスタッフの体制が厚い「Ⅰ」の施設だけで、一万人近く。脳血管疾患Ⅱや他疾病の患者を加えると、 数がもっとふくれあがります。
 調査中、病院から寄せられた怒りで多かったのは、「維持期のリハビリ効果が評価されていない」ことでした。
 一〇月二六日、保団連と「リハビリテーション診療報酬改定を考える会」(代表・多田富雄東大名誉教授)が開いた「実害告発と緊急改善を求める集会」でも、悲痛な声があいつぎました。
 「昨年末やっとリハビリ可能な病院を見つけたのに四月に打ち切り。そのあと腰痛が続き、六月から家事さえできない」(ポリオ患者)。
 「六月末で呼吸器リハを打ち切られた患者の機能低下はひどい。自分で痰が切れなくなり、夜間に痰を詰まらせ、死にそうになった人も出た」など…。

続ければ悪化しない

 高知生協病院でも、八月末で外来リハビリが打ち切りになった七〇代の患者さんが、転倒し腰椎骨折、入院した事例がありました。リハの機会を奪われ、起きあがりや歩行に支障が出た結果です。
 「打ち切り後の状態をご家族から聞き、心配していた矢先でした」とリハ室主任の山本香代さん(PT)は悔しそうに話しました。また、ある脳卒中患者さん は、二~三週間リハが中断したとたん、歩行状態が悪くなりました。
 「リハビリを続ければ改善できる」と確実にはいえない患者さんでも、多くは「止めれば機能が低下する」ことがはっきりしています。維持期のリハビリが今 回の診療報酬ではまったく考慮されていません。「日数が制限されたことで、寝たきりや介護の必要な患者さんが増え、全体の医療費を逆に増やす結果になる」 と、山本さん。

除外規定は狭く介護移行も難しい

 厚労省は最近、「切り捨ててはいない。除外規定を活用したり、介護保険のリハに移行させればよい。そうしない医療機関が悪い」と発言しています。そうでしょうか?
 福岡・健和会の四つの病院で、外来リハが終了になった患者は九〇人。医療から介護保険へ移行した患者を調べましたが、ほとんどいませんでした。介護保険 施設のリハには、医療ほど専門スタッフや設備が整っておらず、受け入れに余裕がないためです。
 また、訪問リハへ移行した患者は、九~一〇月でわずか三件。外来リハに通院できる状態の患者さんは、訪問リハの対象にはなりにくいのです。さらに、訪問 看護ステーションの訪問リハにも、介護報酬改定で回数制限が加えられました。介護保険でもリハは受けにくくされています。
 さらに「除外規定」とは、定められた対象疾患で、医師が「改善可能」と判断した患者の場合、日数制限しないというもの。しかし実際は、対象疾患が少な く、判断基準もあいまいです。「受け皿がないまま、患者さんを放り出した政府の責任は重い」と、阿部さんは指摘します。
 「患者さんといっしょに泣くのはつらい」。高知生協病院の職員は、一人五〇筆を目標に署名活動中。全国から声を集め、一刻も早く日数制限を撤廃させなければ。


 

※日数制限問題…厚労省は「効果が明らかでないリハを長期に行っている」との理由で、発症から、呼吸器疾患九〇日、心 大血管疾患と運動器疾患一五〇日、脳血管疾患一八〇日などの制限を設けた。報酬改定前からのリハ患者は四月一日が起算日。「急性期・回復期に手厚い」との ふれこみの一方、維持期のリハビリの評価がない。民医連は、「日数制限に医学的根拠はない」と緊急改善を求めている(本紙六月一九日付)。リハビリで障害 を受容し、生きる希望を見いだしていた患者も多く、打撃は身体面には止まらない。日数制限の撤廃を求めて医療機関や当事者が集めた署名は四四万筆を超え た。

(民医連新聞 第1393号 2006年12月4日)