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民医連新聞

民医連新聞

地域医療守ろう 九州・沖縄のつどい開く

 「今、日本の医療があぶない 地域医療を守る九州沖縄のつどい」が、一〇月二九日、福岡市で行われました。医師・看護師不足によ る地域医療の崩壊、窓口負担増で医療を受けられない病人が増加など、日本の医療はまさに危機。全日本民医連は、この実態を知らせ・打開する運動を大きくす るため「すべての地域協議会で集会を」と呼びかけています。九州沖縄地協がそのトップバッターになりました。(木下直子記者)

 午前一〇時、ぞくぞくとやって来た参加者は約四〇〇人。自分の県や地協の企画の参考にしたい、 と九州圏外からも四〇人近く。民医連外の医療機関からも一二事業所・三一人(医師八人)、医学生一八人が参加しました。企画の協賛に地元テレビ局四社が名 を連ね、地元紙や医療系新聞の取材も入りました。
 午前中は済生会栗橋病院副院長の本田宏医師と、全国自治体病院協議会長の小山田恵医師が講演。午後は、演者二人に民間病院長の三野原厚医師と山田智全日本民医連理事が加わり、シンポジウム。
 医療の危機をメディアや講演で精力的に発信している本田医師は、政府の医療費抑制政策が、一二万人もの医師不足(OECD加盟国平均比)をつくり、特に 勤務医の現場が崩壊しはじめていると報告。「医療は命の安全保障、私たちは儲けたくて医療費を増やせと求めているのではない、患者さんのため。国民の価値 観を変えよう」と、呼びかけました。
 小山田医師は、民間がやれない医療を担う自治体病院で勤務医が立ち去っている現状を報告。過労死寸前の労働の改善や、低すぎる収入の是正を訴えました。 また、委員として参加した厚労省の医師需給検討会の答申を「現場の声を聴かず、エビデンスもない、はじめに結論ありきの代物になった」と怒りました。
 三野原、山田両医師は、療養病床削減方針が医療機関の経営難と行き場のない患者を生んでいる、と報告しました。

医療崩壊防ごう…会場は一体に

 療養型病床の廃止やリハビリの日数制限の問題など、フロアからも活発に発言がありました。ある開業医は「参加して本当に良かった。医療崩壊への認識を改めた」と語りました。
 「医療崩壊をどう防ぐ?」というテーマに議論が移ると、さらに白熱。本田医師は「ドイツの勤務医が行ったようなストライキをいずれ日本でもやれれば」 と。医療者や患者を苦しめる医療削減策に怒り、「ここまでされて、厚労省を打ち壊しに行かないのか」と、湯気の出るような勢いで発言した開業医もいまし た。
 「医療崩壊の一端が、開業医にあると勤務医は考えているのか?」と緊迫した質問も出ました。本田医師がこれに答え、「OECD諸国比較では開業医も三倍 の患者数を診て、収入ははるかに低い」と紹介し、「開業医と勤務医という対決の構図には意味がない」と語ると、質問者は「結局、国が医療費を出してないん ですね」と共感。そして、海外で事故にあい、ストレッチャーで一六時間診察を待ち、手術まで五日かかったあげく、一週間の入院費に七八〇万円請求された自 らの体験を話し、「日本の医療費抑制策の行き着く先がこうだったら、たまらない」と語りました。
 「医療崩壊を防ごう」、この決意を、参加者が共有できたように感じました。

全病院に案内とアンケート届ける

 つどいに先立ち、同地協では九州沖縄にある病院一六五八すべてに案内を送り、二九項目のアンケートに協力を要請し、一二一病院が回答しました。
 主な項目をみると(左のグラフ参照)、四月の診療報酬改定で減収・減益になった病院が六八%、「医療改革の方向性は間違いだ」という意見が七七%。
 自由記載欄にも声が溢れました。「はじめに財政削減ありきの政策が、医療崩壊、介護・医療難民を生んでいる。机上の空論で政策をつくられてはたまらな い」「療養病床を閉鎖し、自宅に帰した患者が、環境があわず数日で死亡。かわいそうなことをした」「リハビリの所定日数を超えたが、必要な人には病院の負 担で継続している。本来の医療の姿とは言いがたい」「医師不足のひと言につきる。勤務医の労働条件が改善されなければ、救急医療は破綻するだろう。一〇年 先ではない、直近の問題だ」―立場は様ざまでも医療者同士が手をつなぎ、医療を守る条件はある―勇気の出るものでした。
 ひきつづき北海道や近畿でもつどいが計画されています。地域医療を守るウエーブがうねりはじめました。

思いは同じ ― 121病院が回答

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(民医連新聞 第1392号 2006年11月20日)