生活と健康を守る会と共同で 生活相談会 援助できる力つけた 青森・中部クリニック
青森・中部クリニックでは、月一回、「生活と健康を守る会(生健会)」と協力して生活相談を行っています。第三七回総会で「窓ガラスを割っ て家に入り、ひん死の人を救出した」と発言し、話題になりました。無保険でも治療し、生活保護の受給で生活を立て直す…連携プレーで、多くの人を助けてい ます。(川村淳二記者)
骨と皮の患者さん
きっかけは昨年の三月、生健会から「無保険で寝たきり状態の人を緊急往診してほしい」と依頼されたことです。訪 問するとまさに骨と皮の状態。看護師はショックを受けました。市役所は滞納を理由に保険証発行を拒否していました。生健会とクリニック職員が、診断書を もって交渉し、保険証を発行させました。
ちょうどそのころ、第三六期第二回評議員会方針で「民医連らしい診療所の役割」を議論中でした。学習が実践で生きたのです。所長の原徹(はらとおる)医 師を中心に、受療権を守る活動を医療活動方針に位置づけ、「共同で生活相談を」と青森生健会に正式に申し入れました。生活相談会は昨年の七月から月一回、 一年以上続けています。
緊密な連携プレー
七月一九日は生活相談の日。生健会からクリニックに連絡が入りました。「盛岡駅で路上生活をしていたAさんを青森駅に迎えに行ってほしい」との依頼です。
佐藤武則事務長は、「一〇年以上無保険のようだから、健診も必要だと思う」と古館正志事務主任に伝え、車に乗り込みました。
Aさんを生健会の事務所に送り、クリニックに戻ると、もうBさんが相談に来ていました。「国保料は非課税区分なのに、介護保険料は課税区分。どうしよ う」という内容です。佐藤事務長は話を聞いて、生健会の助言をもらうことにし、相談者を連れて、また事務所へ向かいました。
「課税対象者の同居が原因では?」。生健会のアドバイスで市役所に電話すると、やはり、きちんと世帯分離していなかったことが原因でした。そこで、妻が 入院し、同居している息子も失業したことを申し立て、減免申請をすることにしました。
お互いが身近に
中部クリニックにSWはいません。しかし、難しい相談を生健会に頼るのでなく、できるだけ職員で対応しています。今では生活保護や国保・介護保険料減免の申請、破産手続きなどにかなり詳しくなりました。
「先週のカンファレンスで出た、気になる患者さんを訪問しました。すると、借金返済のためサラ金業者に家の売却を依頼する寸前のところに出くわしまし た。それを止め、サラ金業者ではなく自分で売却するよう相談をすすめました。後日、長くたまっていた未収金も支払ってもらえました」と佐藤事務長。
中部クリニックや生健会のとりくみは、診療所の事務や看護師の学習会で報告し交流しています。
生健会にとっても民医連がぐっと身近になりました。「先日、同じ保健生協の安方クリニックから、非常勤の職員さんが、患者さんをつれて相談にきました よ」と生健会の斉藤恵子会長は微笑みました。生活と受療権を守るとりくみが広がり、強くなっています。
Aさんは助かった
Aさん(五〇代・女性)が青森駅に着いたとき、所持金は五八〇円でした。六月まで働いていた青森市の店は、経営 者が病気になり閉店。仕事が見つからずアパートにも住めず、友人に誘われ仕事を探そうと盛岡へ行きました。駅につくなり、その友人に手荷物と手持金を持ち 逃げされました。警察に届けても見つからず、盛岡駅で路上生活を続けていましたが、盛岡の生健会の人と出会えたのです。
青森の生健会でアパートの契約や生活保護の申請など援助を受け、その日のうちに寝る場所を得ました。保証人なしで契約させてくれた不動産屋さん、布団や 食器などを貸してくれた生健会の会員さんの助けです。青森生健会のホームレス相談は五年で一〇〇件以上です。
(民医連新聞 第1386号 2006年8月21日)