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民医連新聞

民医連新聞

患者さんの希望奪うな 診療報酬のリハビリ 日数制限は撤廃を

 四月の診療報酬改定で、リハビリの算定日数に上限が設けられ、例外を除き開始から九〇、一五〇、一八〇日以内になりました(※1)。三月以前から リハビリを受けている人は、四月一日が起点になり、早い人で六月末が期限。中止か、自費で続けるか、介護保険に移るか、迫られます。全日本民医連は、上限 の見直しなどで厚労省に要望書を提出、交渉も継続中です。東京・東葛病院のリハビリ患者と家族らでつくる「あゆみの会」は、期限の撤廃を求め署名活動をし ています。(川村淳二記者)

 「多くの患者が困っている」。あゆみの会の会長・Aさんは言います。「僕の経験からも、六カ月では短かすぎ る。そのころはまだリハビリの手前だった」。二二年前に脳梗塞を発症し、右半身麻痺に。九カ月たってようやく言葉が出るようになりました。一年間入院し、 その後も外来でリハビリを続けています。
 会員の岡村豊さんは、四年前に頸椎損傷で四肢麻痺になり、やはり現在も外来でリハビリを継続中です。「もし六カ月で打ちきりだったら、車イスにやっと乗 れるかどうかの状態だった。自分でもよくなってきたと思えるのは去年ぐらいから。多少自信がついて、散歩などもできるようになったのは最近」というよう に、岡村さんの機能はこの一年で著しく回復しました。
 リハビリの効果は、三カ月、半年、一年と続けていくうち、できることが増えていく―これが二人の実感です。リハビリを受けずにいると、現在の体の機能を 維持することが難しくなる、と心配します。「具合が悪くて、しばらく寝ていてリハビリなしの生活をしたら、歩けなくなった」という話も、仲間からよく聞き ます。

機能維持のリハは必要なのに

 厚労省が、一部を除き(※2)疾患別に期限を設定した理由は「長期にわたって効果が明らかでないリハ医療が行われている場合がある」というもの。
 東葛病院リハビリ室の理学療法士・加川豊さんは、これを批判します。「根拠は、八割の患者が一八〇日で回復するというもの。では残り二割の患者の可能性 を切り捨てるのか? また、元の状態に回復しないまでも、悪くならないよう維持するリハの役割を認めないのか?」。
 今回の改定で、同院のリハに通う約一五〇人のうち七~八割が受けられなくなります。加川さんは、維持期のリハを続けさせたい、と願っています。「リハ外 来に来られなくなれば、自分で適切な運動をするのは難しい。手足の動きが悪くなり、体力や筋力も落ちる。閉じこもりが増えてしまう」と。
 ここに来れば、患者同士で話したり、励まし合うこともできます。岡村さんも「他の人ががんばっている姿を見ると、自分も、という気になる。人が見ている と、思った以上に身体が動かせる」と同調しました。
 今回の診療報酬改定は、リハに関しても問題が多くあります。回復期リハ病棟は、対象が発症後二カ月までの患者に制限されました。病状が安定せずリハビリが開始できない人は、入れません。
 外来のリハを打ち切られて、介護保険の通所リハに行けるか、訪問リハを受けられるか、保証はありません。

専門医も患者団体も反対

 「リハビリ中止は死の宣告」と、東京大学名誉教授の多田富雄さんや、リハビリ専門医、患者団体が中心となり「リハビリ上限撤廃」の一点で署名活動を呼びかけています。「あゆみの会」は、これに意を強くし、その署名を推進しています。
 「リハビリを受けるのは人権だと思う。受けさせないのは、権利の蹂躙(じゅうりん)。単なる財政的な問題が人間の命より大事だと言うのか。一人でも二人でも力を貸してほしい」と岡村さんは訴えます。

※1 4月の診療報酬改定で、リハの疾患と期間が制限
(1)脳血管疾患等(180日)
(2)運動器疾患(150日)
(3)呼吸器疾患(90日)
(4)心臓・大血管疾患(150日)
※2 除外されるおもな疾患は、
(1)失語症・失認および失行症
(2)高次脳機能障害
(3)重度の頚髄損傷
(4)頭部外傷または多部位外傷、などで、「リハビリ治療を継続することにより、状態の改善が期待できると医学的に判断される場合」。
4月1日発症の方のリハビリ打ち切りまであと
呼吸器リハビリ 運動器リハビリ 脳血管疾患リハビリ
10日
70日
100日
6月29日まで 8月28日まで 9月27日まで
上記リミットまでに算定日数上限撤廃を!

(3月31日以前の発症の場合は4月1日発症とみなすとの緩和措置により上記を想定しました。)
リハビリテーション診療報酬改定を考える会ホームページより
http://www.craseed.net/

医療改悪法の成立強行に抗議する

 自民・公明与党は、医療改革関連法の成立を強行しました。全日本民医連の肥田泰(※)会長は声明を出し、強く抗議するとともに、改悪の実施を中止させ、命と健康を守るために、地域で共同の運動を強めようと呼びかけました(全文はホームページに掲載しています)。

(民医連新聞 第1382号 2006年6月19日)