紙芝居をもって地域に出よう 愛知・みなと医療生協協立総合病院
みなと医療生協では「紙芝居」が大ブレイク。「病気や予防のことが良くわかる」と組合員さんから大好評で、班会や健康講座に引っ張りだこです。紙 芝居づくりは協立総合病院の医局からはじまり、看護師や他職種へ、他の病院へと広がっています。制作と上演の中心を担っているのが研修医たちです。課外 「必修科目」のような熱いとりくみです。(小林裕子記者)
研修医も大活躍
「紙芝居のおかげで研修医が地域に行きやすくなりました」。こう語る医局長の中澤幸久さんは、医師研修と紙芝居を結びつけた人です。「病院をささえる組合員さんや地域の人たちの存在を知り、暮らしや期待に触れてほしい」との思いから。
紙芝居づくりは、前医局長の高木篤さんが始めていました。二〇〇四年、新医師臨床研修で迎えた九人の研修医に、中澤医師は「紙芝居をつくって講師をする」課題を与えました。医局合宿では紙芝居コンテストを開催しました。
ベテラン医師や研修医グループがエントリーした七点のうち、投票で、当時研修医の吉村章代さん作「認知症の話」が優勝しました。
認知症になったおばあさんの物語です。「もの忘れが激しく、お金がなくなったと騒ぐ。家族が怒ってばかりいたら 症状は重くなり…」というストーリーです。吉村医師はこの紙芝居をつくる前、ある班会にパワーポイントを持参し、講師をしました。ところが数分後には居眠 りをする人が続出。そんな経験から工夫した作品でした。
研修医の作品は「カゼの話」「タバコと健康」「教えて帯状疱疹」「急性腹症」「傷の新しい治し方」など次つぎ生 まれ、講師活動も盛んになりました。健康まつりに畳一枚分の「ビッグ紙芝居」や、子ども向けのパーツ式人体模型を作ったり、まるで学園祭のノリだそうで す。中澤医師は「研修医たちに仲間意識が育ち、臨床研修の場面でも思いやりが見られる」と注目しています。
身を乗り出して注目
中澤医師の紙芝居の実演を取材しました。東海支部の総会で「胃がんの話」です。身近な例やユーモアの交じる語り 口に、聞き手は身を乗り出します。組合員さん手作りという木枠から、めくられていく手描きの絵、居眠りする人は誰もいません。終わったとたん質問が出まし た。一つひとつていねいに答えます。
「ヨーグルトを食べると胃がんにならないって本当?」と質問があり、参加者の要望で、もう一つ新作「牛乳を飲む と身長がのびる?」を上演することに。「症例をいくつ並べても科学的な証明とはいえない」というやや難しい内容。でも組合員さんは「よく分かった」と納得 顔でした。
後継者づくりに役立つ
紙芝居を使った健康教育について、中澤医師が調べたところ、その元祖は若月俊一さん(佐々総合病院・名誉総 長)。著書『村で病気とたたかう』に「巡回診療に、演劇、紙芝居、指人形、映画などをもって行く」と記しています。医学雑誌には看護師らが「小児に治療を 理解させる効果」などを報告しています。
同院のとりくみは、医師の地域医療研修に活用した例としてユニークです。中澤医師は医学教育学会に発表したいと考えています。そこでは「組合員組織があるからできた活動」と強調するつもりです。
組合員さんも研修医を大歓迎しています。東海支部長の河辺幸子さんは「若い医師や看護師さんのときは、もっと質問して親しくなる。地域のこと、私たちの活動を知らせたいし、地元に残ってほしいから」と話しました。
研修医から見ると、兄のような存在の中澤医師。「研修医の熱いものを伸ばしてあげたい。民医連の後継者づくりにも、きっと役立ちます」と紙芝居運動を推奨しています。
(民医連新聞 第1379号 2006年5月1日)