看護もっと働きたいの (12)起こすぞウエーブ “私たちだけ考え込んでもあかん”と2年目看護師が―三重
今回は三重民医連でのとりくみを。「現場の看護師に情勢を伝えることの大切さを痛感しています」三月に行われた全日本民医連総会で、津生協病院の渡辺栄さんは、看護改善運動について、こんな風に話しました。
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一般病棟の状況が困難な時、評議員会方針に励まされました。トップ幹部研修会に参加した院長が、「看護問題を学んだ。こんなのがあった」と資料をくれ、励ましてくれました。他県の活動にも学び、とりくみをはじめました。
看護問題の根本的な原因は何か、を明らかにし、たいへんな中でも動きだそう、と『ナースレター』というニュースを週一回発行しています。A4に大きめの 文字で、一気に読める内容です。これは、機能評価受審に際して始めたものですが、いまは看護改善運動をとりくんでいく上で情勢を伝えるものになっていま す。
一般病棟の職場会議で、困難をどうしたらいいか、話し合いをした時のことです。「自分たちができる業務改善はした。他職種との話し合いも続けている、こ れ以上どうしたらいいんだろう」と、考え込んだ時、二年目の看護師が「私たちだけで考え込んでいてもあかん。世間の人にも状況を知ってもらわな」と、発言 しました。
この話から、彼女は三月四日の県の国際女性デーで、看護問題を訴えることになりました。この舞台には病棟師長や先輩看護師たちがつきそい、いっしょに考えた原稿を読み上げました。
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県看護協会にも初めて申し入れ、三月七日に会長との懇談が実現しました。県連会長と事務局長と看護部長(私)が 訪問し、この一年で民医連でとりくんできた看護問題改善や、現場の状況などを話し、看護師増員での協力などを訴えました。協会長は「看護問題の認識は同 じ、医療は総量規制で厳しい。協力していきましょう」と、語りました。
三月一一日には、看護フォーラムを行いました。診療所時代からの先輩方の、老人医療無料化請願署名運動の話も出、病院の中だけで悩んでないで、外に出てゆくことの重要性が語られました。
2年目看護師 阪口佐和子さんの発言
私の病棟は53床。患者2・5人に1人の基準で看護師が24人、産・育休で2人いませんが、基準の看護師22人はいますし、看護助手も6人います。
患者さんには高齢者が多く、介護も必要です。点滴を抜いたり、徘徊する認知症の方がいます。やってもやっても終わらない処置、重症者がいて、頻回に観察や処置が必要な時など、泣きたくなります。
転倒予防の抑制も、人権を守るためにしたくありません。それで設置した離床センサーが、あっちでもこっちでも、鳴り響きます。でも、抑制がやむをえない 時がまたたいへん。説明と同意と観察が必要だからです。書類はあふれています。検査・治療の同意書。個人情報確認書、看護のまとめを書くことにも追われま す。
診療報酬のせいで、入院日数は短くなり、患者様の入れ替わりは激しい。患者の治癒力を引き出す時間はありません。安全を守り、質の高い看護を提供する本 来の役割が、喜びにならず、疲れきり、良くなった喜びを患者と共感する暇もありません。
看護学校では、実習時間が減っています。重症でなく意思疎通可能な患者しか受け持ちませんし、1対1の看護を教わります。しかし現場で担当する患者様は 20人。新人には対応しきれません。「こんなはずでなかった」「コールにも行ってあげられない」「私に医療安全は守れない」と夢破れるのです。
私たちの病棟に起こっていることは、日本中で起きています。「1日ミスなくやれたか、寝る前不安になる」「患者が死ぬか、私が死ぬか」と、バーンアウト する人が後を断ちません。04年度、就職1年未満で辞めた新卒看護師は、11人に1人の割合でした。
100床あたりの看護職員数、諸外国では…アメリカ230人、イギリス129人、ドイツ102人、フランス70人、これに比べ日本はたった43人。日本 には皆保険制度というすばらしい医療制度があるのに、診療報酬は、患者に優しい看護を否定しています。署名にご協力下さい。
(民医連新聞 第1377号 2006年4月3日)