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民医連新聞

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記者の駆け歩きレポート(1) 埼玉協同病院

 「あなたの職場におじゃましま~す」は、「記者の駆け歩きレポート」にバージョンアップ。職場の枠を越えたチームやフィールドの活動・運動を紹介していく予定です。

危険予知トレーニング(KYT)できっと、よくなる、ためになる

 埼玉協同病院では一月二〇日、全職場が参加して、KYT(危険予知トレーニング)大会を開きました。それはどんなものか、なぜ全職場でとりくめたのか、その秘けつを聞いてきました。
(横山 健記者)

 「KYTは、医療機能評価機構が普及している医療事故防止教材の一つです。ヒヤリハットをもとに、何が危険なのか、どこに注意するか、分かりやすくシー トにします。当院も職員に学習してもらうために使い始めました」と、話すのは副総看護師長の森聖美(さとみ)さん。院内のリスクマネージャーも担当してい ます。

 KYTシートは、イラストや写真を使って、日常に潜む危険性を目で見て、再確認し、防止策が検討できるものです。

 また、だんだん仕事になれてくると、「確認したつもり」になりがちです。それを防止するため、確認するポイントをしぼって確実にチェックすることに役立ちます。

医療安全はしつこさが必要

 同院がKYT大会を開くことになったきっかけは、医療機能評価機構のKYTコンテストに応募したこと、また新入職員や異動者対象のオリエンテーションに使う資料を集めるためでした。

 院内の医療安全委員会は、「ヒヤリハット報告件数が多い事例を題材にしてKYTシートをつくり、職員の安全教育を推進しよう」と提起しました。その際、 徹底したことは「誰が見ても理解できるシートづくり」です。新入職員や他職種、患者さんが見ても分かるシートづくりでした。

 もう一つ徹底したことは、「新入職員が入る職場は、必ずKYTシートをつくる」こと、つまり全職場です。九人の安全委員は、それぞれ担当部門を決め、作 り方のアドバイスや相談にのりました。「完成するまで何度も声をかけました。私も行きました。しつこさが医療安全には必要なんです」と、森さんは振り返り ました。

高い人権意識をもつ職員に

 最優秀に選ばれた『車イス乗車時』という発表を写真を使って説明してもらいました。目標は患者さんといっしょに 確認し、患者さんにも実践してもらうことだそうです。車イス乗車時のポイントは(1)ブレーキをかけているか、(2)不安定なものにつかまっていないか、 (3)クツをきちんと履いているか、(4)フットレストを踏んでいないか、の四点が写真で示されていました。

 また優秀作の一つは、臨床工学技士(ME)さんの「輸液ポンプの設置について」でした(写真右上)。ここ何年かの間でも、点滴スタンドが転倒し、高価な 輸液ポンプが破損する事故が何件か続いていました。原因は、四本足のスタンドに輸液ポンプを高い位置で設置するとバランスを崩して転倒しやすいからでし た。

 そこでまず、四本足から五本足のスタンドに変更、看護師対象の学習会で「ポンプは腰の高さに。足の真上に設置する」と繰り返し説明しました。また、担当 のMEさんが病棟ラウンドでもチェックして回ります。「統計まで出していませんが、発表したあと、破損の報告はありません」とMEの原島貴彦さんは強調し ました。

 この大会の推進者の一人、高石光雄院長は、「医療安全は、いのちをどう見るかという点では、医療倫理にも重なり ます。両方を職員全員で学習し、高い人権意識を持った職員・病院にしていきたい。KYTが広がり、情報交換できれば、さらにいい経験、作者の思惑を超えた 意見が出そうです。私はね、(K)きっと、(Y)よくなる、(T)ためになる活動だよ、とみんなにいっているんです」と言葉を強めました。

(民医連新聞 第1377号 2006年4月3日)