厚生労働省 医療構造改革試案とは
厚生労働省が一〇月に発表した「医療制度構造改革試案」は、大幅な患者負担増と診療報酬の抑制が柱です。政府・与党は年末までに法案大綱を決定し、〇六 年通常国会に関連法案を提出する予定です。しかし「皆保険制度を根底から壊す」と日本医師会はじめ各医療団が続々と反対を表明しました。全日本民医連は、 医師会・歯科医師会・薬剤師会が呼びかけた運動に賛成し「一二月一二日までに緊急署名を」のアピールを出しました。
『改革』看板に、ひどい中身が―
試案は、(1)高齢者の窓口負担を二~三割に、(2)高齢者医療制度をつくり全高齢者から年金天引きなどにより保険料を徴収する、(3)療養病棟の食 費・居住費の徴収、(4)高額医療費の限度額引き上げ、など負担増が一つの柱です。もう一つは診療報酬の抑制。(1)平均在院日数の短縮、(2)終末期医 療の制限、(3)保険給付の対象としない医療の導入(混合診療)などとなっています。
これには財界の考え方や要求が色濃く反映されています。さらに日本経団連は、試案に対し「二〇一〇年度で三〇兆 円以内に医療給付費を抑制すべき」と不満を表し、「高齢者の所得は平均的には現役世代と遜色ない。高額貯蓄者も多い。現役並み負担にしないと若年者が納得 しない」と世代間対立をあおっています。
広がる反対の共同行動
日本医師会は「試案は財界のみを重視したものであり、医療の安全確保や質の向上について何ら触れていない。患者負担増にはすべて反対する」との声明を発表。三師会も同調、全国の市長会・町村会・国保中央会なども反対を表明しました。
県単位の共同行動も組まれています。大阪では二四日、府医師会はじめ職能団体や老人会、主婦連合会、病院会など 二七団体でつくる大阪府地域医療推進協議会が一〇〇〇人以上で集会。試案を批判する発言が続き、「国民皆保険制度を守ろう」のアピールを採択しました。長 野県では、三師会が呼びかけ一二月一〇日に県民集会を行います。これには長野民医連含め五〇団体が協賛します。北海道民医連、沖縄民医連などが、医師会に 共同を申し入れました。
厚生労働省との交渉では
一一月二四日、全日本民医連は、来年度の診療報酬改定を中心に、厚労省に要望しました。省側の見解は「試案の医療法に関わる部分は〇六年通常国会の審議を経て一〇月実施。通常の診療報酬改定がズレることはない」。
汐田総合病院の苗代浩成さん(事務)は「療養病棟には、今でさえ食事の一部負担金が大変な患者がいる。全額自己 負担にするのは治療食の位置づけをやめることか」とききました。省側は「治療の一環の考えを変えるわけではない。治療が不要で介護だけの入院を問題にして いる」と回答。「区分できないのでは?」「難病などの長期入院の除外は考えている」などのやり取りが。
「一八〇日超入院など特定療養費制度を拡大した問題点をつかんでいるのか」「患者の困難な現状を調査したか」との質問に対して、「診療報酬改定の検証部会で検討中」。「医療安全対策」も「医療安全のコストを調査している」と回答しました。
東京民医連の色部雅恵さん(看護師)は現場の実情をのべ、増員できる報酬を求めました。省側は、「看護師配置一・五対一の要望は聞いているが、先の話だ。二対一以上配置できる病院は、夜間など柔軟な配置を」などと回答しました。
中医協・社保審の委員に、『要請ハガキ』などで現場の意見を伝える活動も重要です。
診療報酬の抑制
「適正化」と称し、現状の見通しに対し2015年までに3兆円、2025年までに7兆円削減の試算を示した。
また、都道府県の医療計画に「年間総入院日数」「在宅での看取り数」「在宅復帰率」などを導入する。その達成度に連動して「高齢者医療制度」の支援金を加 減する。特定地域に適用する「診療報酬」も制度化する。
はてしない患者負担
2006年10月から70歳以上で「現役並所得」者は3割負担に。その他の人も2008年から65~74歳は2割負担。2006年10月から療養病棟の食 費・居住費を全額自己負担化。高額療養費の上限を月収・賞与を含む25%まで引き上げ。低率部分1%を2%に引き上げる。人工透析の自己負担の上限も検討 対象に。財界が主張する「保険免責制」も参考に記載。
許すな医療改悪・大増税 2・9国民集会
【日時】06年2月9日 13時開場
【会場】さいたまスーパーアリーナ
【主催】医団連 社保協 全労連
(民医連新聞 第1369号 2005年12月5日)