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民医連新聞

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医療倫理のはなし実践編 DNRガイドラインを作り倫理意識高める 北海道・函館稜北病院

 全日本民連の第七回学術・運動交流集会では、医療倫理特別分科会を開き、DNR※を考える講演やシンポジウムを行いました。シンポジストとのひとり、道南勤医協の武井寛子看護師が報告した、「函館稜北病院でのDNR指示の一年間」を紹介します。

 函館稜北病院の病床数は、急性期五六床、療養型四八床の計一〇四床です。倫理委員会は、二〇〇三年二月に始まり、一六回開催。そのうち五回、検討にの ぼったのはDNR指示についてでした。委員会では、神奈川・川崎協同病院のDNRガイドラインを参考に当院の原案を作りました。それを各職場や委員会で繰 り返し検討し、当院のDNRガイドライン、フローチャート、指示書を完成させました。

DNRフローチャートに基づいて

 当院のDNRガイドラインの目的は四点です(表1)。

表1 ~DNRガイドラインの目的~

(1)患者・家族および直接関係者に指示の内容を正しく理解してもらうこと

(2)指示決定が適切な手続きをもってなされるようにすること

(3)指示決定後の患者と家族の権利を保障すること

(4)この指示の医学的、倫理的、法的正当性を示すこと

 意思決定能力のある患者は、いつでもDNR指示を要請できます。要請を受けた担当医は速やかに患者、家族を含めた関係者と話し合います。その際は患者の 意思を優先します。

 意思決定能力のない患者に対し、医師または家族がDNR指示の可能性があると考えた場合は、双方の合意が必要になります。

 医師がDNR指示の可能性があると考えた場合は、家族との話し合いの前に、複数の医師によって医学的妥当性を判断し、コメディカルスタッフと協議します。

 DNR指示の妥当性については、複数の医師による検討のほか、判断の内容をその根拠や協議内容とともに診療録に正確、詳細に記載します。心肺蘇生術を行った場合の医学的効果の検討も必要です。

 看護師などコメディカルスタッフは、医師とのカンファレンスでDNRの検討に入るという方針を確認し、スタッフ 間での意思統一をはかります。その協議内容を診療録に記載します。その際、患者、家族の真意や置かれている状況を十分把握するために、SWが積極的に関わ ることが望まれます。

 患者、家族の同意を得る時は、担当医に加えて、最低一回は看護師が同席することを原則としました。担当医は、合意内容を示した所定のDNR指示書に署名し、診療録に添付、家族に複写を渡します。協議した旨を看護師も診療録に記載し、署名します。

 担当医は、DNR指示の同意を得たら、毎朝行う医局の打ち合わせで報告し、ただちに病院長に伝えます。倫理委員会には直近の定例会議で報告します。

ガイドライン、指示書の徹底を

表2 ガイドライン作成前と後のDNRの実施状況

  ガイドライン作成前
03年1~12月
ガイドライン作成後
04年7月~05年6月
DNR指示数 18 25
事前の意思表示 4 2
医師間の協議 0 6
スタッフの間の協議 5 4
面談時のスタッフ同席 1 4
DNR指示書の記載 0 3

※カルテ記載にもとづいて調査した。

 ガイドライン作成前と後で、DNRの実施状況を比較しました(表2)。ガイドライン作成後は、医師間の協議、面談時のスタッフの同席、DNR指示書の記 載数が増えました。

 一方、ガイドライン運用上の問題点も出されています。本人の意思を聞くタイミングが難しい、書面の内容が煩雑、医師間での協議や話し合いに看護師が同席する時間的余裕がない、などです。

 当院のガイドラインを患者家族に広く知らせ、終末期の意向を早めに把握する、看取りを前提に入院した場合などは簡易なDNR指示書とする、など今後の課題があげられます。

 問題点を改善しながら、DNRガイドラインの運用と指示書の確認を徹底し、全職員で倫理問題にとりくんでいこうと考えています。

※DNR…Do not resuscitate=心肺停止時に心肺蘇生術を行わない

病 床 数  104床
委員会設置 2003年2月
委員構成 委員長(ボランティア団体代表)、委員(内部…医師、看護師、MSW、診療放射線技師、ケアワーカー、各1人。外部…弁護士、大学教授、市民活動家、患者家族、各1人)
開  催 2カ月に1回

(民医連新聞 第1369号 2005年12月5日)

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