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民医連新聞

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安全・安心の医療をもとめて(39)大分健生病院

手技・安全性を向上させる
ユニークな内視鏡研修法

 大分健生病院では、上部消化管内視鏡検査のトレーニングに、膿(のら)盆と胃に似せた張りぼてを使い、研修医の 内視鏡挿入や胃の観察技術が向上しました。このことは患者さんの苦痛を軽減し、医療事故の予防に役立つと考えられます。安価、簡便、効率的な手法で、どん な施設でも使えます。この手法と効果を紹介した論文は、日本プライマリ・ケア学会の最優秀論文に選ばれ、表彰されました(二〇〇四年三月『日本プライマ リ・ケア学会』誌に掲載)。(編集部)

 上部消化管内視鏡検査は多くの施設で行われています。が、その初期研修の方法は各施設に委ねられ、一定していません。研修医は教科書を読み、指導医の手 技を見学し、操作法を学びます。その後、指導医の立ち会いのもとで患者に実際に挿入し、観察します。一連の動作をスムーズに行うまでになるには五〇~一〇 〇例を要します。
 その間、指導医は医療事故が起きないよう細心の注意を払います。研修医が操作に慣れない段階では、患者に苦痛を与えてしまうこともあり、安全で安心な検査技術の習得が求められました。
 内視鏡トレーニング用モデルには市販のものがありますが、高価なため中小規模の病院では購入が困難です。安価、簡便、効率的で、どんな病院でもできる研修法を考える必要がありました。

膿盆と張りぼて使って

 教科書や医学雑誌などは、図解を多用して挿入のポイントを解説しています。しかし、内視鏡に似た管を実際に挿入して、ポイントを説明したものはありません。
 そこで、まず医師が実験台になって洗浄用チューブを胃に挿入し留置。チューブ内に造影剤を入れて、ヘリカルCTを使って撮影しました。すると挿入のポイ ントは、内視鏡軸の保持と咽喉頭の「そら豆」状のカーブに沿った内視鏡操作にあることが分かりました。
 次にそのカーブに似たものとして、どこにでもある膿盆に着目しました。膿盆の縁の「そら豆」状カーブに沿うよう内視鏡を操作するトレーニングをはじめました。
 さらに、胃に似せた張りぼてを作りました。その内部は、胃がん取り扱い規約に準じて三つの領域に色分けしました。各領域には撮影や生検の目印となるアルファベットを書き入れました。
 内視鏡操作とともに張りぼて内の観察も一〇〇回行いました。開始一〇回目までは、指導医がアルファベットの見落としなどをその場で指導しました。

全員が初回で挿入

 このトレーニングをした新卒研修医六人と、従来の研修を受けた新卒研修医七人の手技を比較しました。「初回」 「五回」「一〇回」目の挿入成功数と「初回観察・写真撮影」の成功数を対比しました。なお、「挿入」の成功基準は「二〇秒以内に、一回で、患者に苦痛を与 えず、咽喉頭の出血もなく、食道内に挿入できる」です。「観察」は「一五分以内に胃の内腔をくまなくフィルム撮影できた」と複数の内視鏡医が判断した場合 に合格になります。
 「トレーニング群」では、全員が初回挿入、観察、写真撮影のすべてに成功し、一〇分程度で検査を終えました。「従来群」は全員が初回挿入も観察も失敗、一〇回目に二人が挿入に成功しただけでした。
 同院では、患者の苦痛を軽減し、医療事故を予防する上で役立つと評価し、本トレーニングを研修医の上部消化管内視鏡研修に位置づけました。

(民医連新聞 第1362号 2005年8月15日)