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民医連新聞

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アスベスト 緊急110番 鳴りやまず―九州社医研・福岡民医連などが相談活動

 アスベスト(石綿)による健康被害が問題化しています。七月一三日、九州社会医学研究所、福岡民 医連、弁護士などの「実行委員会」が実施した緊急一一〇番では、三台の電話が鳴りっぱなし。全日本民医連は「被害者の掘り起こしと救済にとりくもう」との 方針を発表しました。一六日に開いた「振動障害・じん肺医療推進責任者会議」でも関連報告がありました。

 「父が中皮腫で亡くなった。労災申請をしたいが、どうすればいいか?」「家族が中皮腫で亡くなった。 存命中に会社が就業証明を書いてくれなかった。どうにかならないだろうか?」「三〇年ほど前からアスベスト吹きつけ工事に兄弟で携わってきた。二人とも肺 がんになった」…、福岡民医連の事務所で受けた電話は、当日だけで六三件。翌日は九州社医研に四三件、翌々日は二三件…、二〇日までに一四二件に。
 とりくんだ田村昭彦医師(九州社医研所長)は、「住民に不安が募っている。しかし相談窓口がない。民医連がまず始めることが重要だ。相談活動をすすめな がら、労災制度などに詳しい職員チームを養成しよう」と報告しました。

隠れた労災被災者が

 一四二件の中に労災申請に関わる相談が多数あり、すでにアスベストの影響で発病している人が三五人(肺がん一三 人、中皮腫一二人、じん肺・石綿肺七人、間質性肺炎一人、胸膜肥厚二人)いました。また石綿製品を扱った経験のある人から、医療機関の紹介を求める相談が 四〇件ありました。
 田村医師は「石綿の害が労働者に知らされていない。潜在する被害者が多くいることを示す。労災死は五年で時効になってしまう」と問題視します。

環境・公害問題でも

 また、相談の半分ほどが、「自宅の壁、天井は大丈夫か?」「職場のむき出しの建材は?」など、不安の訴えでし た。田村医師は「石綿被害は、労災・二次労災(家族の被害)であり、公害でもある」といいます。石綿工場の跡地にいま住んでいる人だけでなく、過去に住ん でいた人にも被害が及んでいる恐れもあり、最新の建物でない限り石綿はどこでも使われているため、予防措置が重要という指摘です。

 「まず共同組織・地域住民と学習しながら運動をすすめ、建築や環境測定の専門家の協力も得ることも必要」と話しました。

X-P再読影で発見

 東京・芝病院の藤井正實医師は、一〇年間の調査をもとに「石綿被害は、製造従業者だけでなく、すでに建設従業者にも問題になっている」と指摘しました。
 同院では一九九五年から、神奈川県建設国保組合と提携して、建設労働者の石綿被害を調査してきました。胸部レントゲン写真を専門医が再読影し、じん肺所 見、石綿暴露の指標になる胸膜肥厚斑を見つけ、中皮腫・肺がんの早期発見に努めています。また組合員や組合担当者の教育にも協力しています。この提携は東 京・埼玉・千葉の組合と民医連にひろがりました。
 二〇〇四年に行った、二万八七七二人の再読影で、六〇九人にじん肺所見(うち石綿肺五四人)が、胸膜肥厚班が八二八人が見つかり、その職種は空調、電 工、板金工、鉄工、溶接、塗装、左官、大工に渡っていると報告しました。

 全日本民医連は対策本部を設け、以下の諸点での方針を提起しました。
 (1)体制の確立・職員教育、(2)相談活動・窓口の設置、(3)カルテで職歴などの再調査、(4)健診活動、(5)行政機関への働きかけ、(6)労災 と公害両面でのとりくみ、です。患者実態調査、事業所自身の建材調査、共同組織・住民との教育学習なども課題です。

(民医連新聞 第1361号 2005年8月1日)