医療倫理のはなし 実践編
患者・家族との意見の相違 検討シート使って対策
茨城・城南病院
茨城・城南病院の倫理委員会は、二〇〇四年二月に発足して二年目に入りま した。話し合いを重ねて、同院の倫理原則や身体拘束ガイドラインを策定したり、学習を重視し、例回ごとにミニ学習会をするなど、力を入れています。外部委 員とともに事例検討するための「臨床倫理検討シート」は工夫したものになっています。同院の加賀美哲也事務次長からの報告です。
毎回学習を
委員会の目的は、(1)医療倫理問題について幅広く議論し、必要なマニュアルを整備する、(2)学習会を開くなど職員や組合員さん、患者さんに対する啓 蒙活動をする、(3)個々の倫理問題に関する議論を行う、(4)緊急を要する個々の倫理問題で、臨床決断をする(心肺停止時に蘇生をしない=DNR、な ど)の四点です。
委員の構成は別項の通りです。各委員は職場で倫理問題を拾い上げ、判断が難しい事例について職場で「臨床倫理検討シート」を使って検討した結果を委員会 に報告します。また、委員会で提案した内容に対する職場の意見を集め、職業(医療)倫理感の育成をすすめます。外部委員は法人理事会の推薦です。
委員会では終末期医療の課題を話し合い、患者さんの延命治療に関する確認書やDNR指示書、終末期医療に関する指針、DNRの指針などを作りました。
また、「臨床倫理検討シート」を使った事例検討、職業倫理などの検討を通じ、当院の倫理原則や身体拘束ガイドラインを決定しました。外部委員は自分と関 わりのある分野でミニ講演を担当し、『民医連医療』なども使った学習を毎回しました。
臨床倫理検討シート
「臨床倫理検討シート」とは、東北大学文学部の清水哲郎教授がリーダーですすめている「医療システムと倫理」研究プロジェクトで使っているものです。当 院もこの研究に参加協力し、判断が難しいケースでは同シートを使います。清水教授にも委員会に来てもらい、使い方の説明も受けました。
昨年は、スタッフ間やスタッフと患者・家族との間で治療方針について意見が相違した六事例にこの検討シートを使いました。輸血の継続を望まない患者さん の事例、認知症のある高齢者に対する延命治療などです。この二例は昨年一一月に東北大学が主催した「臨床倫理研究会」で発表し、討論しました。
発表者のひとり、石川啓一医師は、「意見の違いを認め、治療法それぞれのメリット、デメリットを明らかにする。その上で、医療者の意見をそえ、患者・家 族の意見を聞き、患者さんの生活全般を検討する。この過程がインフォームド・コンセントであり、患者・家族とともに同じ方向に向かうケアの基本姿勢」と話 しました。
また、「カンファレンスのなかで、看護師や家族から待ち時間やベッドなどの改善提案が次つぎに出された。コミュニケーションのプロセスで家族の心が動 き、輸血を拒否していた患者の考えも変わったといっても良い」とも報告しました。
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今年度、倫理委員会では、二カ月に一回、全職員向けのミニ学習会をし、年に二回、外部にも開放した学習会・研究 会を開く予定です。毎月一回、各職場持ち回りで臨床倫理検討会を行います。引き続き、終末期医療について検討し、インフォームド・コンセントを中心的課題 にしてとりくむ考えです。
病 床 数 | 121床 |
委員会設置 | 2004年2月 |
委員構成 | 委員長(院長)、院内委員(医局1人、病棟看護師3人、技術1人、事務局4人)/院外委員(顧問弁護士、院所利用委員会委員長、大学教授、ホスピスを考える会代表など7人) |
開 催 | 月に1度 |
(民医連新聞 第1359号 2005年7月4日)