デイに通い続けたい…のに 「障害者自立支援法案」は納得できない
精神科デイ有志が改悪反対の「会」
東京・みさと協立病院
「障害者自立支援法案には納得できない」、精神科の患者さんたちが声をあげています。今国会で審議中の「障害 者自立支援法案」が通されれば、精神障害者の医療費負担が今の2倍から6倍と激増します。東京・みさと協立病院では、精神科デイケアの通所者が「公費負担 制度の改悪に反対する会@みさと」を結成し、活動しています。(木下直子記者)
四月末、精神科デイケアの日程が終わって、談話室に八人のメンバー(通所者)が集まりました。机の上に紙と鉛筆、計算機。「法案が通されたら、医療費の 負担はどうなるか」を、有志で試算することにしたのです。
いま、精神疾患の患者さんの通院医療費は、精神保健福祉法で保障され、自己負担分は五%(同法「三二条」)です。ところが自立支援法案では原則一割負 担、所得によっては三割に。おまけにその「所得」とは、同居中の家族の分まで合算した世帯の収入です。
こうした動きの中で、「公費負担制度の改悪に反対する会@みさと」を三月、メンバーの有志が結成しました。「制度改悪でデイケアに来られなくなる人は出 したくない。今まで励ましあってきた仲間が一人でも欠ければ、残った者の療養にも影響する」それが彼らの気持ちです。
1~3割負担は打撃
「通所日以外は、家にひきこもる」「精神科以外の病気は受診を我慢」「まだ働く準備ができていないのに、お金のためにバイトするしかない。病気が悪く なってしまう…」試算の結果を前に、皆が不安を口にしました。「家族の収入も計算されると、私はぜったい三割負担になっちゃう…」とAさんはうつむきまし た。親から「これ以上負担が増えればデイケアにはやれない」と言われています。月四万円少しの障害年金で親元で生活しているBさんは「本当は今の週四回の 通所も厳しい。一割負担になれば週三回でも難しくなる」。
「メンバーの多くが、病気になったこと自体に自信を失い、家族や友人に気兼ねして生活しています。今回の改悪でますます肩身が狭くなり、病状の悪化につ ながりかねません」と、同席していたデイケア職員の内田直子さんは怒ります。「親兄弟の収入まで含めて負担を決めるなんて。『自立支援』という言葉が入っ ていても、障害者を成人として認めていないんです」。
支給される障害年金は生活保護の七割ほど。それで生活する人にとって医療費の一割・三割への負担増はたいへんな打撃です。
「利用者が減ったら、閉鎖にならない?」彼らは、精神科デイケアの存続も心配しています。「デイは社会に戻るリハビリができる、とても大切な場所だよ。 閉鎖させちゃだめだ」それまで黙っていたCさんが口を開きました。外来通院だけの八年間を経て、通所を始めた彼の実感がこもっています。
「昔、精神疾患の患者は隔離されて地域で普通に暮らせなかった。医療費が公費で保障されて、通院しながら地域で暮らせるようになった歴史を勉強したよ ね。歴史を逆戻りさせていいの?」とDさんが皆に問いかけました。中心メンバーの彼自身も朝九時半に始まるデイケアに来ることを目標にしながら、療養して いるひとりです。
「当事者が声をあげ知らせないと」
メンバーの切実な声も紹介、病院待合室で署名を訴えます
職員も励まされ
「会」は、同院の待合室に署名台と、手書きのチラシを置き、週三回、ここで署名活動しています。院長の訴えのそばに壁新聞をつくり、張り出しました。署名は厚労省にも持っていきました。
「慣れないことだらけだけど、当事者が声をあげて、知らせていこう、って決めたんだ」とDさん。宣伝が二週間ほど続いたところで、職員も「患者さんだけ にがんばらせるわけにはいかない」と、合流しました。
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五月一二日、東京・日比谷公園内で開かれた「障害者自立支援法を考えるフォーラム」に、主催者の予想を遙かに超 える六六〇〇人の障害者や家族、福祉関係者が集まり、法案の見直しを求めました。この中には、内田さんやデイケアメンバーの姿もありました。政府与党は、 この声を無視できず、七月の都議選が終わるまで法案審議の結論を出せない、ところまで追いつめられています。一人の人間として、生きる権利を奪わせない、 患者も職員もあきらめません。
(民医連新聞 第1358号 2005年6月20日)
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