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民医連新聞

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消費税上げるって誰のため? 何のため?

消費税を2007年に10%に。政府や財界は、「年金や社会保障の財源を確保する」として消費税の増税をねらっています。福祉のためと言い、導入 された消費税。果たして、福祉は良くなったのでしょうか? 初めて給料をもらって、「直接税」の納税者になった新入職員のみなさんも、いっしょに税金のあ り方や消費税の問題点などを考えてみましょう。アドバイザーは「消費税をなくす全国の会」の杵(きね)渕(ぶち)智子事務局長です。(荒井正和記者/鐙 (あぶみ) 史朗記者)

消費税は「不」平等税

 財務省のホームページには、「消費税は社会保障をはじめとする公的サービスの費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う」と説明してあります。

 消費税は誰もが五%を負担するから、公平な税金では? と考えてしまいそうです。が、本当にそうなのでしょうか。

 図1は、年間収入にしめる消費支出の割合です。所得の低い世帯では、収入がそっくり消費にまわっています。それに対して高所得者層では、収入の四〇%しか消費にまわりません。

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 毎日の食費や生活必需品など、消費支出のほとんどすべてに五%の消費税がかかります。収入の低い人ほど消費税の負担が重く、高所得者ほど軽いわけです。つまり「不」平等です。

 杵渕さんは、「所得税や法人税は収入や利益がなくなれば、かかりません。けれども、消費税は生きている限り、寝たきりになろうと、失業しようと、災害に遭おうと一切の減免のない悪税」、と指摘します。

 所得格差のない社会なら話は別です。しかし、日本はアメリカ、イギリスに次いで所得格差が大きく、その差はさらに拡大しています。

 所得の上位二五%の世帯で国民所得の七五%を占めています。その一方で、貯蓄のない世帯は二〇%・一〇〇〇万世帯にのぼり、生活保護世帯は一〇〇万世帯を超えました。

増税の裏に戦争政策

 政府は消費税の増税は「年金や社会保障の財源を確保するため」「国の財政が厳しいから」と言います。年金や社会保障の財源なら、増税もやむを得ないのでしょうか?

 杵渕さんは話します。「消費税のおかげで老後を安心して暮らしているという人、誰かいますか? 消費税が導入された後も医療や年金など社会保障は次つぎと悪くなるばかり(図2)。話が違う、と多くの国民は怒ってますよ」。

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 杵渕さんは、税金の使い方と日本国憲法を結びつけて考えることが大切、と言います。

 戦争放棄をうたう憲法九条は、税金を軍事費や軍需産業につぎ込むことの歯止めになっています。それによって、憲法二五条が保障する生存権をささえているのです。日本国憲法は九条が中心になっていると言われる理由です。

 二五条によれば、子どもから高齢者、障害を持ち働けない人などすべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利があります。その責任は国にあり、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければなりません。

 憲法は主権者である国民が、国家が戦争政策をすすめて福祉をないがしろにすることへの「しばり」です。これを逆にして、国家が国民をしばる憲法にするのかどうかが、いまの争点でもあります。

 「税金は憲法に照らせば福祉や教育、平和にこそ支出すべきものです。福祉のためと言い、あらたに税金をとるのはおかしな話なのです」、と杵渕さん。

消費税で大企業は減税

 消費税が導入された一九八九年から二〇〇四年までの間に、私たち国民が払った消費税は一四八兆円にもなります(図3)。ところが、同時期、企業が払った法人税(地方税含む)は一四五兆円も減りました。なんと消費税は、大企業などの減税の穴埋めにされました。

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 大企業の法人税率が大幅に引き下げられた結果、日本の企業が負担する税・社会保険料は、ヨーロッパと比べても驚 くべき低さです。ヨーロッパ各国にある日本の大企業は、それぞれの国の法律通り、法人税を払っています。政府与党は「消費税をヨーロッパ並みに」といいま すが、大企業の法人税の方こそヨーロッパ並みにすれば、国の税収は年間数兆円の増加となり、消費税を上げなくてもやっていけます。

 おまけに、大企業は中小業者と違い、消費税分をすべて販売価格に転嫁することができます。商品を輸出した事業者には、消費税相当分が返されます(表1)。つまり、消費税の負担は実質ゼロ。だ

から財界は「法人税率を下げさらに社会保険料の企業負担分をゼロに近づけるため、消費税を上げ福祉は国民の自助・自律で」と圧力をかけています。

表1 主な輸出大企業の
費税還付金(2003年度)

企業名 還付金(億円)
トヨタ自動車 1,710
ソニー 1,046
本田技研工業 735
日産自動車 723
キャノン 642
松下電器産業 497
マツダ 443
三菱自動車工業 439
東芝 351
日立製作所 254

(湖東京至税理士作成より)

税金は貧困をなくすよう 使うべき

 資本主義社会では、所得格差や貧困が生じます。ですから税金は、所得のある人は多く払い、それを社会保障にまわすという「所得の再分配」の役割をもつと いうのが「世界の常識」です。そこから税制には、(1)直接税を中心にする、(2)所得に応じてとる、(3)生活費には税金をかけない、という「民主的な 税制の三つの原則」が生まれました。

 今年一月からは「公的年金控除」が縮小され、所得税の「老年者控除」も廃止されました。増税になった人は約五〇 〇万人。これに連動して住民税、介護保険料、国保料(税)が上がってしまう人も多数でます。定率減税の縮小・廃止で困るのは所得の低い人たち。税制が変わ るたびに「三原則」からかけはなれていきます。

*  *

 納税者一人ひとりが、政府がどのように税金を集め、何に使おうとしているのか、良く知り、監視していくことがとても大事です。

(民医連新聞 第1354号 2005年4月18日)