安全・安心の医療をもとめて(35) 長野中央病院 透析中の災害発生に備える患者さんと行なう”離脱訓練”
透析中に災害が起きた時、透析機器からの離脱が必要になります。長野中央病院の透析室では、患者といっしょに離脱訓練を行い、災害時への備えを始めました。初めて行った訓練の内容を中心に、看護師の高木なつ子さんにききました。
以前から、当院では、災害時に備え、離脱が簡単な回路(左)を導入していました。が、実際の場合をイメージ化できていないことが気がかりで「いざという 時、実行できるだろうか」と、不安でした。そんな時、参加した透析学会で、緊急離脱訓練について報告した病院があったのです。そこから資料もお借りして、 二〇〇三年八月、訓練することになりました。
目標は、患者様が自身で離脱できるようになること、スタッフが自力離脱できる患者様とそうでない人を把握し、速やかな介助行動ができるようになること、です。
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関わったのは、看護師一〇人、臨床工学技士五人です。スタッフはトリアージについて学習し、より多くの患者様を 迅速に救出するための方法を考えました。訓練を拒否された患者様がいた場合の対応も意思統一しました。また、指導内容のばらつきを防ぐため『訓練マニュア ル』を作り、患者様の離脱手技のレベルを一貫して評価できるよう、「評価表」も作りました。
患者様にも事前に目的や期間、方法を知らせました。訓練期間は一週間、一人の患者様に二、三回、返血時に行います。当院で外来維持透析を受けている八一人のうち、自己離脱ができると考えられた六六人を対象にしました。平均年齢は、六七・四六歳でした(当時)。
患者側の意識も変化
訓練対象の患者様のうち、六人が一回目の訓練を拒否しました。一回目は行ったものの、二、三回目に訓練を拒否した方は、それぞれ四人。しかし、最終回までには全員が訓練を行うことができました。
患者様たちの離脱手技は、訓練の回を重ねるにつれ、上達していきました。また、訓練を拒否していた方も、他の方の訓練がすすむと、参加するようになりました。訓練が、技術向上に加え、緊急離脱に関する患者側の意識も変えることになりました。
評価表の結果をみると、「自立」は一回目…三五人、最終回…四五人(六八%)。「要介助」は、一回目…三〇人、最終回…一七人。一回目「全介助」だった人も、最終回では「要介助」にレベルアップしていました。
訓練後に集めた声
訓練期間が終了した後で、患者様とスタッフから、アンケートをとりました。
「実際に災害が起きた場合、離脱手技は自分でできるか?」という設問に「できる」と、答えた患者様は五〇人でし た。それ以外の回答をした方の中に、「練習すればできる」が四人。「離脱手技を覚えているか?」という問いには五九人が「覚えている」と答えました(注・ これは、訓練からアンケートまで一週間と短期間であったことも影響していると思われる)。
一年間に望ましい訓練回数については、「二回」が最多でした。この意見を取り入れて、離脱訓練を半年に一回、年 二回のペースで続けています。他にも「三回、六回、一二回、多ければ多いほど良い」、という声もありました。訓練に参加したほとんどの方が、今後も訓練の 必要性を感じていることがわかりました。
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スタッフの回答には、改善のヒントがたくさんありました。
たとえば、「どの患者様が自力で離脱可能か、区別できるか?」の問いに、七人が「できる」、八人が「できない」 と回答しました。これに対し、「表示があれば分かる」という提案があり、患者様の名札に自己離脱の可否を表示することにしました。これは訓練のたびに書き 換えています。
また「緊急時、自分の役割がわかるか」の質問に、「分かる」と答えたのは四人、「分からない」が一一人にもなりました。このことで、役割分担表をつくりました(表)。役割分担が全員に明示されていなかったことが分かったからです。
他の災害時の役割分担についても、トリアージを考慮に入れ、学習しながら検討しているところです。
(民医連新聞 第1354号 2005年4月18日)