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民医連新聞

民医連新聞

就介護保険「見直し」で利用者・家族どうなる

 国民の声も聞かず、国会に上程された介護保険「改正」法案。その本質は保険財政を優先させ、利用者の保険給付を抑制し費用負担を増やす、改 悪そのものです。全日本民医連理事会は法案の撤回を求める運動方針を決めました。全職員が共同組織とともに法案の内容と利用者・家族の実情をつかみ、法案 撤回のとりくみを急いで広げることが求められています。軽度者の実態調査などによって、県連、事業所に寄せられた利用者・家族の声を集めました。

家族も不安「施設に居られる?」

 【山形=高橋亘通信員発】二月山形虹の会の友の会に、電話が入りました。当会のグループホームかけはしの入居者・Oさんの息子さんからでした。当会からのアンケートで制度「見直し」を知り、不安になったと言います。

 Oさんは二年前に認知症を発症、火の始末や服薬管理ができなくなり、介護度1と認定されました。独居は困難で施設を探していたとき、かけはしの増築があり、入居しました。

 県外に住む息子さんは、「母は継続して入居できますか? 費用が心配。利用者、家族に知らせない見直しとは一体どういうものか。少しでも情報があったら教えて」と訴えました。

 利用者・国民に見直し内容を知らせず、法案だけを押し通そうとすることは大問題です。

訪問介護は欠かせないのに…

 【北海道発】Hさんは九二歳の男性で一人暮らし、介護度1です。月三万円の国民年金と貯金だけで暮らしています。雨漏りする家に住み、ヘルパーが来たときだけ暖房をつけます。毛糸の帽子を被り、コートを着て就寝。外出や家事に支障があり、家事援助を受けていました。

 ある日など階段から落ちて圧迫骨折しました。高齢者の生活実態も見ず、どうして「訪問介護が自立を妨げている」と言えるのでしょうか。

 一月二九日、北海道社保協などが主催した介護保険シンポジウムでも事例報告しました。

(平伸子、勤医協めいえんヘルパーステーション・ヘルパー)

デイ利用者・家族にアンケート

 【岐阜発】華陽診療所では、デイサービスを利用する軽度者と家族に、「見直し」による影響を調査しました。

 利用者はデイサービスを、「いろんな人と話せて楽しい」「食事がおいしい」「お風呂に入れる」と答えています。利用時間の延長や入浴についての要望も多数でした。

 利用者の家族で、軽度者の保険外しを「知っている」人は五割、「知らない」人は四割でした。デイサービスが利用できなくなると、「本人が閉じこもりになる」「家族の負担が増えて困る」などの意見が出されました。

 この結果は、昨年一二月に開かれた当県連の第一回介護交流集会で発表しました。職員は、軽度者、家族の思いを受け止め、ともに声をあげる必要を痛感しました。

(岩田計成、華陽診療所・ケアマネジャー)

「10万以上年金ないと入所ムリ」と特養

 【岩手発】要介護4のアルツハイマーの母を特養に入所させたいとあちこち申し込みをしています。先日ようやくあ る施設から電話が、「もしや」と喜んだら、開口一番「お母さんの年金額はいくらですか? 一〇万円以上でなければちょっと無理です」と言われてしまいまし た。本当に驚きました。年金額が最優先される介護保険って…。

(Sさん、盛岡医療生協・組合員)

高い保険料払い受けられない

 【福岡発】 九八歳のAさんは独居で要介護1、脳血管疾患によるバランス障害があります。家で転倒を繰り返し生 傷が絶えません。しかし「住み慣れた家で思うように暮らしたい」とがんばって在宅生活してきました。二年前から毎日ヘルパーが、朝夕一時間ずつ訪問し、調 理、掃除、入浴の見守り、保清の援助、買い物の援助を行っています。「庭で転び膝から血が」「居間で転び腰痛を訴えている」…その都度Aさんの危機をいち 早く連絡し病院受診へとつなぐのはヘルパーです。

 安否確認を兼ねた毎日の訪問介護が、Aさんの独居生活の継続と危機管理をしています。こうした訪問介護の利用が改悪によって制限されるとしたら、Aさんの生活はたちまち破綻してしまいます。今回の改革案は怒りを感じます。

(松尾 香、老健施設くろさき苑・ケアマネジャー)


 

介護保険改悪法撤回の運動方針(要旨)

1.3月末までに全職員職場で介護保険法案の学習会を開こう
2.共同組織と「介護保険班会」や小集会を6月の国会会期末までに1万回開催しましょう
3.「介護改善」署名を集め、国会に届けましょう(目標300万筆)


Yさんの行く末に不安 制度改悪許せない

山梨 石川 洋子(看護師)

 Yさん(72)は一人暮らしの男性で介護度1です。心不全と肺気腫があり、月に一、二回通院し、在宅酸素療法をしています。

 妻は二〇〇二年八月に亡くなりました。脳梗塞で寝たきりになり、日常生活全般に渡って介助が必要でした。親族は他県に住む甥が一人。甥に頼ることに気兼ねしてか、当事業所の看護師の手をかり、Yさんは自分で二年ほど妻の面倒をみ、看取りました。

 妻を亡くしてから彼に物忘れがみられるようになりました。薬を飲み忘れてしまいます。一人での入浴にも不安があります。食事の用意や身の回りのことにも支障がでるようになりました。現在、看護師が週一回訪問し、身体の状態と服薬の確認をしています。

 ほぼ連日ヘルパーを利用し、一回二時間、一日二回訪問することもあります。病状を悪化させず、毎日を無事に送るためには、これらのことはどうしても必要です。ところが今でさえ、家事援助サービスだけで介護保険の利用限度額が一杯です。

 この上に介護保険の「見直し」で、サービスから外されたらどうなるでしょうか。彼のような病気で不安を抱えていても軽度と判定され、しかも頼る親族もいない一人暮らしの高齢者や老夫婦世帯の日常生活が一番心配です。

 「見直し」を先取りしたような動きがあります。軽度者のみを対象とした新規のデイサービスをはじめた事業所があります。

 当事業所の利用者は月に七〇人、同じ施設内にあるヘルパーステーションは月に六〇人が利用しています。二三〇人の居宅計画にも携わり、地域の中でも多くの高齢者と関わりを持っています。

 「見直し」の問題点を多くの人に知らせ、介護保険が真に改善されるよう、とりくみを強めていきたいです。(訪問看護ステーションあらぐさ)

(民医連新聞 第1351号 2005年3月7日)