障害の重い人ほど負担増 障害者自立支援法案
政府・厚生労働省は、今国会に「障害者自立支援法案」を出しました。公費医療制度をこわし、介護保険なみにサービス利用料を一割徴収する内容で す。さらに施設利用に食費・水光熱費の負担も求め、「支援」どころか障害者に重い負担と苦しみを課すものです。「他法との均衡」として悪い方に合わせ、介 護保険と障害者支援費制度との統合の条件づくりもねらっています。(荒井正和記者)
更正医療・育成医療・精神通院公費の各制度は心身障害者の公費医療をささえてきました。これが「自立支援医療」に一本化し、原則一割負担にすることが打ち出されています。さらに所得や病名などで対象者を制限しようとしています。
いま更正(育成)医療制度を利用している身体・知的障害者(児)の約九五%は、住民税非課税世帯のため負担金は ありません。また、精神通院公費制度には所得制限がなく、五%の負担金ですんでいます(精神保健福祉法三二条)。収入や生活面でハンデを持つ心身障害者に とって、医療費一割負担はたいへんな重荷。この影響を受ける患者は合わせて一八〇万人を超えます。
メンタルクリニックがいち早く署名運動
岡山・けやき通りメンタルクリニックでは、精神通院公費制度の維持を求めて、いち早く署名活動をはじめました。 クリニックの患者数は月に一二〇〇人。その半数は同制度の利用者です。「これまでで一番身につまされる署名です」と。職員一一人は、待合室などで患者さん 一人ひとりに署名を訴え、二月三日までに一三〇〇筆を集めました。
患者さんに法案のなかみを説明し、負担額を示すと皆驚きます。所得によっては六倍になることも知りました。患者さんは、用紙を持ち帰って家族が署名してくれたり。仲間に署名してもらい、送り返してきた人もいました。
小島忠事務長は、患者さんを紹介してくれた外部施設にも署名を申し入れました。訪問先では「これじゃ患者さん、利用者さんが困る。署名を回します」と快い回答がありました。
精神障害者の家族は
自らの職場で署名を集めてきた中元輝夫さん。精神疾患を発症した息子さん(34)のことを話しました。
息子さんはコンピューターのソフト会社に勤務し、夜遅くまで設計、製作に追われる毎日でした。ストレスで、うつ 症状が悪化、四、五年前にアルコール依存症に。林病院で入院治療し、疾病のことを学んで、自分で生活を組み立てられるようになり、退院しました。本人が公 費負担制度で助かった、と繰り返し話しました。「収入が少ない精神障害者の医料費負担が定率になったらどうなるか。患者の考えで薬を減らせば症状は悪化す るでしょう。費用のことで精神不安が助長され、なんとか送っていた生活も破綻します。制度の改悪は許せません」。
国民全体の問題
「林友の会」も熱心に活動しています。同会事務局長の中島守明さんは、「ことは精神通院公費制度だけの問題ではない。お金のない人は医療も福祉サービスも使えなくするという、国民全体の問題です。だから法案を絶対に撤回させたい」と力強く語りました。
同会は、岡山県にある六七の精神科の家族会と五一の精神の作業所に団体署名と個人署名を郵送しました。すでに半数の団体から二五〇〇筆の署名が届きました。
制度改悪で、岡山県では一万四七〇〇人の精神障害者が影響を受けます。中島さんは保健所の依頼で家族会などに精神医療や保健福祉や障害者運動などについてしばしば講演します。その中で必ず署名を訴えます。「みなさん、だまっているのですか?」。
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全日本民医連は、通院公費負担制度を守る緊急署名行動を確認し二月末めざし集約中です。
(民医連新聞 第1350号 2005年2月21日)