医療倫理のはなし 実践編
〝抑制〟全看護師に意識調査結果もとにマニュアル検討
―高知生協病院
高知生協病院(一般六〇床、療養五四床)では、全看護師を対象に「抑制」についての意識調査をし、抑制を見直しました。これを受けてマニュアル作成にも着手。昨年の看護介護活動交流集会で、このとりくみについて発表した看護師・松田和佳さんに聞きました。
まず、看護師が「抑制」についてどう考えているのかを知るために、高知生協病院の全看護師六一人を対象にアンケートをとりました。
抑制についての考え方では、約半数が否定的でした。その一方で、肯定的だとこたえた人が二割近く存在。抑制経験は、一〇〇%でした。これには新卒看護師も含まれています。
「具体的にどんな患者に抑制をしたか?」の質問では、九七%が「点滴やIVH、モニターなどのルートを抜去してしまう患者」でした。ほかに「体動が激し く、ベッドや車イスから転落する患者」、「認知障害があり、マヒや起立不安定にもかかわらず、立ち上がろうとする患者」と続きました。
抑制を否定的に考えている看護師でさえ、一般病棟の煩雑な業務の中で、「安全に看護するために抑制は必要不可欠な行為」とする見方もあることが分かりました。日常業務の中で、抑制は珍しくない措置だったのです。
また、「抑制を行うにあたって相談相手は誰か」、という質問には、八七%が「他の看護師」とこたえました。次いで「家族」でした。ごく少数ではあります が、「自己判断で行う」という回答もありました。医療者側の判断だけで抑制を行う頻度が高かったことに問題を感じました。また、抑制を行ったことはおおむ ね記録されています。
アンケートの自由記載欄に多く記入されていたのは「抑制はしたくないが、やらざるをえない」という声です。「抑制をしないでもすむ方法があったと思うか?」の問いに、グラフのように約七割が「場合によってはあった」とこたえました。
意識調査の結果は、当院のすべての看護師が、やむをえず抑制を行っている実態を明らかにしたと思います。多くの看護師が「患者の人権が大切にされる、よ り良い看護をしたい」と思っていたものの、抑制以外に安全確保の方法がないのかどうかという検討が、十分できないまま、今日に至っていた、ということで す。
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今回初めて抑制について考えなおしたことを機に、マニュアルもつくりました。看護協会のマニュアルや、『民医連 医療』(03・11)に掲載された東京・健和会のとりくみも参考にしました。柱にしたいのは「人間としての尊厳を損なわないようにする」ことです。マニュ アルの作成につづいて、いま患者様の同意書を検討しています。
(民医連新聞 第1349号 2005年2月7日)