日本は米軍の出撃基地 日本平和大会で見た 佐世保
米軍がイラク・ファルージャで住民虐殺を続けている中で開かれた「二〇〇四年日本平和大会」は緊迫感にあふれました。一一月二一~二三日、 長崎県佐世保市に約一八〇〇人が集まり、基地を視察し「平和の国際連帯をつよめ、米軍基地をなくそう」の思いを固めました。(汐満忍、全日本民医連事務 局)
イラクへ出撃
「港に戦艦がいない時の方が、ゾッとする」。船上の「動く分科会」ガイド、山下千秋さんの言葉です。イラクで蛮行を続けている沖縄の米海兵隊、彼らを佐世保基地の米軍艦船が運んでいます。「まさに今、イラクで人びとの命を奪っているんだ、と想像してしまう」と言います。
佐世保軍港の歴史は、一〇〇年前の日露戦争のころから。戦前は日本軍のアジアへの出撃基地でした。
太平洋戦争末期、米軍は佐世保の市街地だけを爆撃し、広大な軍港の施設、巨大な弾薬庫や貯油施設をほぼ無傷で残し、手に入れました。戦後はそのまま米海軍第七艦隊の基地となり、朝鮮、ベトナム、湾岸、アフガンに出撃、現在はイラク戦争の最大の補給基地になっています。
沖縄と佐世保の米軍基地がなければ、イラク戦争は遂行できないのです。
血税が基地に
強襲揚陸艦は、ヘリ空母のほか五〇〇床の病院機能を持つ艦船です。佐世保はいま、エセックスなど四隻のほか、掃海艦二隻などの母港です。また上陸演習の場でもあり、米国の世界戦略のもと機能強化がすすめられています。
視察団が乗った船上から、上陸用船艇LCACも確認できました。これは戦車や兵士を乗せる二五mプールに匹敵する巨大な船です。時速七〇キロメートルで上陸するというものです。
米軍基地の整備費用は、日本国民の税金です。佐世保でもエセックスが接岸できる岸壁や、LCACの新しい駐機場などをつくるため、千数百億円以上の血税がつぎ込まれようとしています。
住民は知らない
今年七月二六日深夜、密かに佐世保に寄港した原子力潜水艦ラ・ホーヤで、火災が発生しました。爆発音に驚いた住民の通報を受けた消防署が米軍に問い合わせると、「電気関係のトラブル」と言うだけ。原潜は再び密かに出港。事件は民家のわずか七〇m先で起きました。
「九・一一」以降、米軍は艦船入港の事前告知義務を果たしていません。港の八〇%が米軍が制する水域で、内部の実態は長い住人も、わからないそうです。
自衛隊も
一方、突如として住民の前に姿を現したのが、迷彩服・完全武装の自衛隊です。「九・一一テロ三周年」の日に、陸上自衛隊相浦駐屯地のテロ特殊部隊が市内を行進しました。食料を持たず三週間サバイバルするなどの過激な訓練で、設置四カ月で三人の自殺者を出した部隊です。
平和大会の基調報告は、「在日米軍基地は、米国が世界で起こす無法な戦争の出撃基地となっている。自衛隊は、海 外派兵を任務に米軍の再編強化に組み込まれている。これは日米政府が憲法九条を改悪する動きと結びついている」と指摘しました。今平和大会は、それを肌で 実感させるものでした。
佐世保港には、カモメがいない。それは漁船が入らないから。横浜港の2倍、神戸港の7倍という良港が基地に占有されている。
長崎県の米軍基地数は全国3位。専用基地面積は4543キロ平方メートルにおよぶ。
(民医連新聞 第1345号 2004年12月6日)