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民医連新聞

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あなたの職場におジャマしまーす(8) 長崎民医連 平和町分室

 長崎大学医学部から坂を下り、浦上天主堂の前を左に折れた商店街、ビルの2階の1室が、長崎民医連の平和町分室です。医学部から徒歩5分の 2DK。民医連の奨学生ら17人が出入りするここは、医学生担当者2人の職場でもあります。「民医連医療を担う医師になってほしい」と担当者が医学生に 日々接する、たまり場を訪ねました。(荒井正和記者)

たまり場は医学生でいっぱい

 月曜日は、医学生が定例で集まる昼食会の日です。

 記者が訪れた一〇月四日、医学生担当の牧山敬子さんと森さおりさん、そして元職員でボランティアの竹田さんは朝から大忙しでした。医学生ら二〇人分の昼食を用意するためです。

 前日の夕方、担当者二人は手分けして、参加人数の確認にメールを送ります。昼食会に友人を連れてくる奨学生もいるのです。返信のメールでもちょっとした近況が分かります。

 そして、料理は〝手作り〟。出来合いのものは出しません。学生の健康面も考えた配慮です。本日のメニューは、豚 のショウガ焼きにオクラとレタスのサラダ、じゃがいもと挽肉の甘辛煮、ご飯とみそ汁つき。「水の分量は」「味付けはどう」、エプロンを掛けた三人の会話 は、家庭にいる時と変わらないように思えます。

 正午前、テーブルの上に料理が並び、医学生たちを待つばかりとなりました。

隣に座って

 「こんにちは」すぐに学生がやってきました。四年生の松浦君です。奨学生委員長の彼は「みんなの試験結果はどうですか?」と、担当者に声をかけました。

 答えているうちに、次つぎと学生が顔を出し、食事が始まりました。「ご飯の量は」「お箸ある?」「いただきます」と、賑やかです。

 ひと息ついたところで牧山さんは、月末に行う奨学生会議の議題を持ち出しました。「地協の医学生のつどいに出す企画はどうする? 被爆者の話を聞いてみたらどう?」

 話が決まると、食卓にデコレーションケーキが置かれました。今週誕生日を迎える領家さんの名前が入っています。彼女がローソクの火を吹き消すと「おめでとう」の歓声と拍手に包まれました。

 あっという間に午後の授業に戻る時間になりました。「ごちそうさまでした」学生たちは風のように去っていきました。

 部屋には、午後の授業のない四人が残りました。牧山さんと森さんは学生の隣に座りました。この時間はいつも、引っ越しやアルバイト、学業、恋愛まで様ざまな相談にのっています。

 話がつかない場合は、別の日にあらためて相談時間をとります。時にはちゃんと意見を言い、子どもを育てると同じように、医学生に向ける目は真剣です。

〝育成〟を重視して

 臨床研修指定病院を持たない長崎民医連では、他県の民医連に奨学生の研修を委ねなければなりません。だからこそ低学年からのかかわりと奨学生づくりを重視し、他県の民医連の後継者づくりにも力をそそごうと考えています。

 センター病院である上戸町病院の医師体制が厳しいいま、毎週の医局会議の議題には医学生対策が位置づけられています。三宅裕子医学生委員長と牧山さん、森さんが学生の状況などを報告します。

 学生一人ひとりの育成目標を明らかにし、年間を通し計画的に援助します。記録をもとに一年間を振り返り、年度末に医師が面談を行い、励まします。奨学生の成長が何よりも民医連医療の発展、継承に不可欠だと考えるからです。

 学生たちは分室の雰囲気を「住人のようにいすわっている感じ」と口をそろえます。
 医学生担当といえば若い男性職員が多いなかで、ベテランの女性職員を起用した長崎民医連。学生の「話したい」「甘えたい」、一方で「社会性を身につけ良い医師になりたい」という希望に応えるひとつの試みではないかと思いました。

 「学生からも〝母の日〟の企画があるのです。それも泣かせるような演出で」。恥ずかしそうに話す、牧山さん、森さんが印象的でした。

(民医連新聞 第1343号 2004年11月1日)