働く人の健康、看護師教育、小規模施設の実践、豊かに ――看護介護活動研究交流集会シンポジウム
集会全体会で行われたシンポジウムでは、働く者の健康問題、小規模施設での介護実践、看護師養成と、三人の職員が実践を語りました。概要を紹介します。記念講演をした鎌仲ひとみさんが、コメントしました。
働く人の健康をささえる看護
福岡・九州社会医学研究所、看護師 青木珠代
私の父は炭鉱労働者でした。じん肺になり、炭鉱の閉山とともに失職しました。呼吸困難で就労できず、五七歳で亡くなってしまいました。
企業の責任を問うじん肺訴訟原告団の存在を知りました。福岡・健和会で労働者の健康問題に携わる委員会に参加して、医療人としての役割を考えました。
地域組織の相談活動に参加する中で、労働者の病気の発生や悪化の一因に、仕事との関連があることがわかりました。就労現場での健康管理や予防対策は重要です。また、病気を持った労働者にも働く権利、休む権利は本来保障されています。
拡張型心筋症と診断された労働者に、三交替職場への復帰か休職しか認めなかった会社がありましたが、患者やその同僚たちといっしょにたたかい、権利を保障させました。
交通産業で働く労働者の勤務形態と食事内容の調査もしましたが、運行ダイヤに拘束され、食事を選択できず、ゆっくり食べる暇もない状態でした。
健康管理や疾病予防は個人の努力だけでは限界があること、労働者の生活は労働に規定されており、労働環境を改善しなければ疾病予防につながらないことが分かります。
労働と生活の場から患者さんをとらえ、支援していく看護活動が重要です。病気になっても療養を継続しながら、人間らしく働く権利が保障される職場・地域をめざし、皆さんとともにがんばりたい。
地域に根づく小規模ケア施設
とやま虹の会やすらぎの郷、介護福祉士 加藤まゆみ
富山市が○三年度から始めた「小規模ケア施設支援事業」の助成第一号として、地域分散型サテライト、小規模ケア施設「市江やすらぎの郷」を開設しました。
開設地は、いままでデイサービスがなく、高齢者人口の多い中部地区にしました。それまで利用者は、長い人で片道一時間も送迎車に乗り、五〇人規模の大きなデイサービスに通っていました。高齢者は町から引き離され、非効率でもありました。
市江やすらぎの郷ができ、利用者は暮らしの延長の、家庭的雰囲気の中で過ごすことができるようになりました。ケアを個人別に組み立てられ、家族や地域住民と交流しやすいことも小規模施設のメリットです。
家族も時に訪問して利用者とこたつを囲みますし、近所の人が大正琴を演奏しに来ます。自宅からコーヒーメーカーを持参し、いれてくる利用者がいたり、花を持ってくる人、フキをつんできて煮てくれる人もいます。
ケアの目標は「自分で決め自分でやる」ことですが、スタッフは一人ひとりをよく知り、信頼関係を築くことができます。
小規模施設はつくることが目的なのではなく、心地よい居場所づくりの手段です。利用者の紹介が、市や保健師の他、民生委員、住民からあることも特徴です。健康相談や介護相談で住人の窓口となり、民生委員が日常的に出入りし、地域の交流の場としても利用されています。
建設・備品費は、富山市からの五〇〇万円の補助金と、協力資金の合計一七〇〇万円でした。運営費は人件費が一〇〇〇万円、管理費三六〇万円程度です。
いま利用者の七割が要支援・介護度1で、介護保険の見直しに不安を訴えています。「がんばって国を動かすから」 と励ましてはいますが、市町村に働きかけて公的な施策をさせることが大切です。老人福祉の団体などとも交流し、志を持って介護の質を高める必要があると思 います。
患者さん「丸ごと」とらえる卒後研修
群馬・高崎中央病院、看護師 鈴木和子
群馬民医連で行っている看護師の卒後研修について、とくに成長や変化がみられた三年目研修について報告します。 卒後三年間が、将来の看護実践能力に大きく影響する期間ととらえ、中でも二年目研修を次のように位置づけています。「仕事に自信を持つ中で、『人間観』 『患者観』をさらに深め、より高い技術を身につける時期。とくに広い視野に立ち、患者様を社会的存在としてとらえ、生活と労働の場でみる『疾患観』につい て学ぶ」。
研修内容は、医事担当者からの診療報酬や介護報酬・社会保障制度の講義とあわせ、中断患者、入退院を繰り返す患者、医療費支払いが困難な患者、といった事例を社会背景からとらえた事前レポートを発表・討論することが盛り込まれています。
レポートは事務やSWなど他職種の協力や所属職場からの支援も受けながら、対象にした患者さんの一カ月の医療費 総額、医療保険の種類、負担割合や、介護度・介護保険利用状況などを調べ、「社会的問題は?よりよい療養のためにどんな支援ができるか」、「事例から学ん だこと」という視点でまとめます。発表と討論は、七、八人のグループで。
一年目から三年目まで、担当教育委員も含め同じメンバー構成です。
研修後の感想文には、医療費三割負担で患者が病院にかかりづらいこと、SWとの連携、病気になっても医療費を気 にせず医療が受けられる社会の必要性を書いたものがみられるようになりました。事例発表を通して問題点を共有、『患者を丸ごととらえること』の大切さ、 『受療権』への関心がもてたのだと思います。
厳しい医療情勢の中、今後も他職種の力を借りながら、民医連の看護ができるような育成をしたいし、社保活動にも力を注ぎたいです。
(民医連新聞 第1342号 2004年10月18日)