猛暑でも高齢者はガマン 6割が30度超す居室に
記録的猛暑となった今夏、熱中症患者が多数でました。統計のある東京都で過去最悪の八九二人。重症者のうち約半数は高齢者でした。大阪府でも同様の患者は 四〇〇人を超えました。大阪民医連は七月三〇日~八月五日まで、在宅高齢者を対象に熱中症予防のため緊急調査を行いました。大阪民医連ではこの結果をもと に大阪府へ緊急に対策を申し入れました。
室温計を持って訪ねた職員が見たのは、暑い部屋で汗だくでがまんしているお年寄りの姿でした。
「熱中症になるやん。クーラーつけたほうがええよ!」「のどが乾いてなくても、水分を摂らなあかんよ…」。すでに脱水症状が起きていた人もいて、その場で応急手当てし、翌日入院になりました。
熱中症の予防は、まず高温環境に長時間いないこと。しかし、訪問した三一七人のうち、クーラーのない家に住んで いる人が四五人(一四%)。クーラーがあっても、電気代を気にして、一日に二時間もつけない人が七八人(二五%)もいました。このうち三人のお宅では、三 八度を超えていました。
職員自身も熱中症になりかねない中、「暑いとは感じていたけれど、これほどとは思わなかった」。ふだんから仕事で訪問している職員も、調査した午後二~三時の居室の温度にびっくり。初めて訪問に出た職員はなおさらです。
熱中症予防の諸注意を話しながら、生活の様子を聴いてきました。
「電気代が高くなるから…」と、経済的な苦しさを訴える人、「クーラーは体に悪い」と思いこんでいる人、ひとり ではクーラーのスイッチが操作できないため、使えなかったという人もいました。「日中は涼しい商店街に逃げ出す」人もいましたが、歩くのが困難な人は、そ れもできません。
往診先の暑さにびっくり
事の始まりは七月の県連社保委員会でした。論議の中で、池田信明社保委員長が「今日、往診に行ったら患者さんの 部屋がとても暑かった。熱中症は重篤になると大変です。在宅患者さんの生活環境、室温やクーラー、扇風機の有無などを調べて、熱中症予防の手立てを早急に とろう」と提案しました。
「地域から熱中症による死亡を出さないための緊急調査」の実施を決め、病院、診療所、訪問看護ステーション、ヘルパーステーションなど全事業所に協力を依頼。六五歳以上の独居・高齢世帯を一〇人以上、県連で三〇〇人以上の調査を目標にしました。
機敏に対応すぐ大阪府に要請
調査した高齢者三一七人の平均年齢は八一歳。うち室温が三〇度を超えていたのが六割でした。
大阪民医連はこの結果をマスコミに発表し、熱中症予防を広く府民に呼びかけてもらうことに。
八月一二日には大阪府に対し、(1)広報を強めること、(2)住民の生活実態把握と対策、(3)必要な世帯へクーラー設置・電気料金の補助、(4)ヒートアイランド現象への抜本的対策を要請しました。
府の担当者は「努力する」と回答しました。しかし電気代補助には難色を示したうえ、府民への熱中症への注意の呼びかけは、なんと「インターネットで知らせる」という返事。消防庁がない大阪府の責任は重大です。
職員は、患者さんや地域の人びとに思いを寄せ、機敏に動いていくことの大切さを実感しました。
(白根久美、大阪民医連)
【熱中症とは】
暑熱下や運動で、体内の水分や塩分が失われ、体温維持の機能が失調し、全身の機能不全を起こす。けいれん、意識消失、 脱力感、 体温上昇などで死亡する場合もある。
高齢者は暑さの中で…
83歳女性…独居。午後3時の室温38度。クーラーなし。平日は訪問介護、デイサービスがあるが、日曜は一人きり。痴呆があり、食欲がない。本人に知識はないが暑くてたまらず、商店街に涼みに行く。
65歳男性…独居、在宅酸素療法中。クーラーはあるが、看護師が訪問中に、生活保護の担当ワーカーが来て、「クーラーをずっとつけとったらあかん」と、電源を勝手に切ってしまった。
82歳男性…独居、生活保護。午後2時の気温40度以上。クーラーはあるが、電気代が高くて使っていない。扇風機を使い、水分は補給しているという。
(民医連新聞 第1340号 2004年9月20日)