介護予防事業の実際は?
痴呆予防「生きいき教室」など 北海道・道東勤医協
北海道・釧路市にある「介護支援センターひまわり」と「すこやか」(道東勤医協)では、市の委託を受けて、「痴呆予防教室=生きいき教室」と「手段的日常生活動作訓練教室(IADL)」を実施しています。
介護予防が必要な高齢者、家に閉じこもりがちな高齢者を対象に、週一回、おおむね二時間のプログラムです。収入は、一回あたり三万円の事業費補助と送迎した場合に片道四七〇円の加算があります。食事は利用者が実費を負担します。
「痴呆予防教室」は、陶芸など趣味の活動やレクリエーション(写真左)。「IADL訓練教室」では、ミニ料理実習(写真左下)、洗濯・掃除などの家事作業訓練のほか、買い物ツアーなどです。支援センターの職員と非常勤スタッフが担当します。
この「教室」は、介護認定に関わらず利用できること、利用者負担がないなど、福祉制度の利点を備えています。利用者のプロフィールを下に紹介します。利用者の状態とプログラム、効果などは、地域ケア会議で交流し、教室の成果としてまとめ、市にも報告しています。
自治体への働きかけが実を結んだ
これは介護保険がスタートした二〇〇〇年、それを補完する事業として釧路市が始めた「介護予防教室」の一環です。国の助成事業「介護予防・地域支え合い事業」を具体化したもので、現在は市内一一カ所の老人介護支援センターが委託を受けています。
市にこの制度を設けさせたのは、介護保険スタート前からの市民の運動でした。介護保険からはみ出す高齢者に対す る市独自の施策をもとめ、介護計画策定の市民委員会に参加するなど様ざまな働きかけをしました。行政担当者を招いた三〇〇人もの「フォーラム」の成功を境 に、市の姿勢を変え、食事、移送、介護予防事業が、介護保険と別立てサービスとして実現したのです。
今回の「介護保険制度の見直し」でも、老人世帯や独居の高齢者、経済的困難層などの実態をもとに、地域から利用者や同業者といっしょに、自治体への働きかけを強めたいと思います。(上堀百合子、保健師)
積極性を引き出す「教室」「来てよかった」の声も
A子さん(94)は、白内障で日中は独居、働く娘さんは痴呆を心配していました。しかし介護認定は自立の ため、「生きいき教室」に来ました。はじめは消極的でしたが、一年半経った今では、陶芸や書道に熱心にとりくみ、同じ年代のBさんに会うのも楽しみにして います。超高齢者でも、新たな社会参加でADLを維持できる例です。 Cさん(76)は、動脈閉塞症で片足を失い車イス生活です。排泄や入浴は自立、介護認定で通所サービスも 可能でしたが、妻が清掃の仕事をしてささえる生活では、利用料負担もつらいようでした。「生きいき教室」に来て、「障害の体を見られたくなくて家にばかり いた自分が、ここにきて変わった」と話すまでになりました。その後、妻が病気になり収入が途絶えたとき、生活保護受給の支援ができました。 |
「筋力向上トレーニング」 東京・足立区の「市町村介護予防モデル事業」
厚労省は、軽度の要介護認定者にサービス提供し、その効果を評価し「介護保険制度の見直しに資する」として、 「市町村介護予防モデル事業」を開始。今年度実施するのは七〇余自治体、そのひとつが足立区です。「筋力向上トレーニング事業」を受託している「高齢者在 宅サービスセンター西新井」を取材しました。
施設内には、四台のトレーニングマシンが並んでいました。それぞれ機能が違い、「下肢全体の強化(写真右上)」「膝への負担軽減」「歩行時のふらつき解消」「猫背の予防(写真右下)」を目的とします。
定員は八人。参加条件は、区内在住の「六〇歳以上の虚弱高齢者」、または「介護保険の認定が要支援、要介護1、要介護2の人」です。訪問・通所リハビリを受けている人は対象となりません。
一回のメニューは別表の通り、これを週二日、三カ月間続けます。初めの一、二回は、筋力向上トレーニングの説明 や体力測定など。三、四回目でトレーニングマシンの操作説明に入り、練習をします。その後は、利用者の状態に合わせ、少しずつ回数や負荷などを増やしてい きます。
同センターの鈴木肇さんは話します。「筋力向上トレーニングの効果はまだはっきりしません。しかし、トレーニン グ修了者は『歩くことや階段の昇降が楽になった』と言います。自信がつき、行動範囲が広がります。閉じこもりがちの高齢者をこの事業でサポートできるので はないでしょうか」。
また、鈴木さんは運営上の工夫について、「高齢者が対象ですので、説明に時間をかけ、長続きできるように楽しく、を心がけています。ボランティアの力も大きいです。三力月で止めてしまうと効果が薄れるので、修了しても階段の上り下りなどをすすめています」と語ります。
三カ月間のトレーニング参加費用は五〇○○円。これは事故が起きたときの保険代です。職員の人件費やトレーニングマシンの購入費は国や自治体からの助成金です。(荒井正和記者)
筋力向上トレーニングの1回の流れ
(1)保健師による問診、血圧測定
(2)運動指導員といっしょにストレッチ
(3)4台のトレーニングマシンで運動
(理学療法士が指導、援助を行い、
1時間半ほどトレーニング)
(4)再度のストレッチ、血圧測定
*ボランティアも加わり、マンツーマンで行う
(民医連新聞 第1340号 2004年9月20日)