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民医連新聞

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ISO 9001実地調査に同行しました 島根・松江生協リハビリテーション病院グループ

 「医療・介護の質と安全性を向上させ、患者・利用者により高い満足を」と、第三者評価を受ける事業所が増えています。島根・松江生協リハビ リテーション病院(三島巌院長、二四五床)とその関連施設も、ISO9001の認証を取ろうと準備中。審査の実際は? 七月に行われた実地審査に同行しま した。(荒井正和記者)

shinbun_1338_01 二八日午前九時、同院の会議室では、審査員五人を前に、ISO推進委員の職員が着席。緊張感が漂いました。実地審査の打ち合わせです。

 実地審査の判定には三段階あります。システムが機能し得ないと判断された場合は「重大な不適合」、システムに影響しない問題点があれば「軽微な不適合」、改善のための提案がなされた場合は「要観察」です。

 実地審査スケジュールを確認し、審査員とガイド役の職員が三、四人で班を編成。班はA~Dの四つが審査する項目を分担しました(表)。

 実地審査は二日間。一日目は情報の収集(サンプリング)、二日目はサンプルの適合性をチェックします。

 審査員は若手からベテラン、それに医療専門家までそろっていました。

「数値として記録」が大事
―四階病棟、午前九時五五分―

 審査員は、看護科長に概要を事細かに尋ねました。介護主任には、「ここでの介護福祉士の役割」「生活指導の内容」を質問。さらに、適切なサービス提供の数値記録を求めました。

 ISOでは目標に対し、達成度を測定し、監視するのに数値を重視することが伝わってきます。

「学習会」のあとは評価を
―三階病棟、午前一〇時四五分―

 看護科長、他二人が対応。審査員は、救急カートについて中身の点検法などを次つぎ質問。

 ホワイトボードを目にした審査員は、午後に予定されている職員の学習会「いきいきタイム」に関心を持ったらしく、参加人数や目的を尋ねました。「学習会がどう役に立ったか、その評価を明日聞きます」、と言い残しました。

高校生の一日看護体験が感心される
―通所介護、午前一一時―

 デイサービスではこの日、高校生の一日看護体験を実施していました。審査員は「どのようなことをするのですか」と質問。介護主任の説明に、「いい活動ですね」と感心。

 「サービス提供表にもとづく利用実績などの記録が基準と整合しているか、明日確認する」と告げました。

「達成率の受け止め」を重視
―訪問看護、午前一一時二〇分―

 所長に利用者数、週平均利用率、職員の月あたり訪問可能件数、稼働率統計の有無を順番に質問。その上で、「病院全体や職場では達成率がどう受け止められているか」、と尋ねました。

 つまり、収益性と利用者の満足がどう一致するか、数字で見ることが大事なのだそうです。企業的な言葉を医療従事者に説明するのに、審査員も苦労していました。

 医療人は数字に強くないといけないのです。

 売店にも立ち寄り、記録の整備や今年度の目標などを尋ね、会議室に戻りました。

 時計を見るとキッカリ正午。うまい時間配分に舌を巻きました。昼食は? と見ると、弁当が机の上に用意されてい ました。市街からかなり離れた同院の近くで、食堂を探すのは難しい。聞くと事前に依頼があったそうです。審査員は「いくらでしたか? いま支払います」 と。「接待を受けない正しい態度」と納得でした。

 食事がすみ、廊下には歩き回る審査員が…。何やら観察しているようです。

日付が合わない?
―2A病棟、午後一時―

 付箋をつけた品質マニュアルを携えた審査員は、「文書管理台帳はどれですか」、と介護主任に尋ねました。「ここ では四種類の文書を品質記録として登録していますね。勤務の流れ一覧、それにホワイトボード記入手順と…。では、他部署から配布される文書の一覧表を見せ て下さい」。と、その時です。

 「この文書一覧表の作成日は、七月一二日になっていますね。いまここにある最新版の品質マニュアルの作成日は七月一六日じゃないですか! 更新されていませんね」。審査員は、これでは最新版で管理しているのかどうか、確認ができないことが問題だと指摘しました。

 「例えば、注射針の廃棄方法が××日付で法律が変わったのを知らず、旧態のまま処理していたらどうしますか?」「必要な人が必要な時に使用できるようにする。これは間違いを起こさないための手段なのです」、と繰り返し説明しました。

審査員がほめる
―居宅支援を回り、つづいて通所リハ、午後二時四五分―

 文書管理台帳を見た審査員は、「第何版と記入されています。良い見本ですね」と発言。記者もうれしくなりました。

 各部署がそれぞれ文書管理台帳を作っていても、その記載方法が違うと、不整合があるとみなされてしまいます。「実はこれ、病院によくあるケースなんです」、と審査員はつけ加えました。

責任者がいない?
―薬局、午後三時一五分―

 薬剤師たちがあわてていました。薬局長がD班の審査に呼ばれて不在なのです。審査は職責者が立ち会う決まりはありませんが、「対応は薬局長が」と思っていた矢藤薬剤師は少し緊張したようです。

 「薬品管理業務手順書にある各マニュアルはどれですか。作成日はいつですか。薬の管理はどのように?」審査員の質問に、気をとりなおした矢藤さんはていねいに答えました。

 足岡薬剤師も助けに入り、外部文書の管理、インシデント・アクシデントのコンピュータ管理を説明しました。

*  *

 午後四時、すべての審査が終了。

 この後、審査員だけで審査結果の交流会議に入りました。

 記者はヘトヘトでした。職員の疲労に思いをやりました。

審査員のコメントは?

 午後五時半、会議室で各審査員からコメントが出されました。

 A班の審査員は、「指摘する事項は特にありません。計画にもとづく、記録がされていました。私も患者さんの話相手になり、思わぬ貴重な体験をしました」と発言しました。

 B~D班の審査員からは、手順書と実践とのくい違いがいくつか指摘されました。

 「明日は今日、サンプリングしたものが基準にそっているか審査します」「経営者の立てた方針どおり、品質目標が展開されているか、つまり、各職員が各々の目標を持っているか職場へ聞きに行きます」、と予告し、審査員は帰りました。

 緊張が一気にとけました。

明日もがんばろう

 その場で職員はまとめの会議です。明日までに準備すべきこと、指摘されたことを出し合うためです。

 審査員が言い残した、全職員の学習会「いきいきタイム」のまとめの指示がすぐ出されました。

 「審査員は昼、配膳カートの設定温度を見ていたようだ。後で誤差を指摘された」「物を置くなと張り紙してあった場所に持ち主の分からないシルバーカーが置いてあり、審査終了間際に指摘された」との報告も。

 審査を受ける中で、皆の目に見えてきたものもありました。「インシデント報告後の改善点を文書化しよう」「患者の食事摂取のチェック用文書を整備しよう」などの提案がされました。

 審査員は「職員から改善の提案がどんどん出ていますか」と管理者に聞いていました。錦織美智枝看護部長は「現場からの意見や提案が、医療・介護の質や安全性の向上に結びついている」と答えました。これがこのとりくみの大事な意味なんだな、と感じました。

 明日のガイド役の職員は、「どんな順番で周りましょうか?」と皆の顔を見回しました。「明日の審査対象は、全職場、全職員です。審査員が質問するのは仕事中でない人」。

 すると「みんな仕事中です!」と返事が。どっと笑いが起きました。疲れの中にも、ひと仕事やりおえた充実感がみえました。

 「明日の審査を成功させよう」と確認して、同院の長い一日は終わりました。

(民医連新聞 第1338号 2004年8月16日)