イラクからの撤兵は世界の流れ 自衛隊の撤退引き続き求める
全日本民医連4・21国会内社保平和活動交流集会で
「ひきつづき、今井紀明さんと家族を守り、アメリカのイラク国民への無差別攻撃の中止、自衛隊の撤退と平和と憲法を守る努力をしたい」―北海道・札幌西区病院の看護師・長谷井紀美子さんは、全国から集まった参加者に報告しました。
札幌西区病院では、職員一人ひとりが「できることはなんでもやろう」と職場で話しあい、行動に移してきました。 人質解放までの一週間、一七回の宣伝にのべ一〇五九人の職員・共同組織が参加し、五一一八筆の署名やカンパを集めました。また「全国の仲間が各地でいち早 く行動を起こしたことも大きな励ましになった」と、語りました。四月二一日、全日本民医連が開いた国会内社保・平和活動交流決起集会でのひとコマです。一 一〇人の参加者で、会議室はあふれました。
国会情勢を報告した日本共産党の宮本たけし参院議員は「自衛隊の給水活動は、四台の給水車のうち、三台を自分た ちで使い、一台しかイラク人用に使っていない。四〇〇億円かけて一万人にしか配れず、フランスのNGOが六〇〇〇万円で一〇万人に配っているのとは大ちが い。自衛隊ほど支援活動にむかない組織はない」と発言しました。
全日本民医連は「学習の強化」、「地域に打って出る」、「共同のとりくみ」をキーワードに、平和を守り、社会保障を充実させよう、と行動提起しました。
また、肥田泰会長は、政府・与党関係者、一部メディアが人質にされていた被害者たちの「自己責任」を問う動きについて触れ、「アメリカの戦争を支持し、 自衛隊を派兵した政府の責任逃れだ」と指摘。この動きには、海外や国内からも、「日本はどうなっているのか」「救出費用の一部まで請求するとは、信じられ ない対応」といった批判が起きています。
いま、無差別にイラク国民を攻撃し、戦火を拡大させているアメリカのやり方は国際社会でも孤立を強めています。総選挙での国民の声で一四〇〇人の撤兵を 開始したスペインをはじめ、ホンジュラス、ニュージーランド、ドミニカ、ポーランド、ブルガリアが撤兵の方針を固め、ポルトガル、フィリピン、タイが撤兵 を検討、ニカラグアとシンガポールはすでに撤兵しています。もはやイラクからの撤兵は世界の流れです。
参加者の上杉義美さん(東京・足立健康友の会・事務局)は「共同組織には、『昔のような時代に逆戻りするのでは?』と、心配する人も多いです。事務所に 『何をしたらいいの?』と飛び込んでくる人もいます。街頭宣伝に七〇人が参加するなど、共同組織のパワーに職員も励まされます。今後も自衛隊の撤退を求め ていく」と決意を語りました。
日本政府の姿勢に国内外から批判
被害者に全責任を負わせ、自衛隊派兵の責任をごまかそうとする政府・与党幹部の対応に、国内外で驚きと批判があがっています。
南ドイツ新聞は「自衛隊撤退や政府を批判していた人質の家族が急に口を閉ざした」と紹介、政府からの圧力を推測しました(4/15)/韓国では各紙が日 本政府批判を掲載。「人質から生還の喜びすら奪った日本社会に、国を挙げて侵略戦争を支持した昔の集団主義から脱却していない不気味さ」(4/20東亜日 報)、ハンギョレ新聞は「外国人拉致や殺傷は米軍と衝突激化の副産物。前者がテロなら、ファルージャ地域での米軍の行いは虐殺」とし、その一端を自衛隊の 派遣で担う日本の責任を問いました(4/20)/仏のル・モンド紙は「日本人は人道主義に駆り立てられた若者を誇るべきなのに、政治指導者や保守系メディ アは人質をこきおろす」「国際的に良くない日本のイメージを高めたのは彼ら(人質)だ」と報道。
日本国内でも政府を擁護する報道が行われる一方、「外国にいる自国民の保護は、どの民主主義国でも政府の責務」との社説(「朝日」)も。著名人、NGO 関係者も「憲法13条に保障された『生命権』や前文の日本国民と世界の人びとの『平和的生存権』に基づき、政府は人質救出に全力をつくせ」「日本のNGO の活動を危険にした最大の原因は自衛隊派遣」と反論。富山大の小倉利丸教授は、政府は「自己責任論」でNGOの安全を守る責任を放棄、と指摘。戦争の計り 知れない犠牲を知るNGOが、米国の戦争に加担する日本政府に批判的でもおかしくない。その彼らを「政府がどこまで手助けするか、それがその国の民主主義 の成熟度を示す」と述べました(「朝日」4/17)。
また、東京大学の教職員有志が「人質となった5人と家族の中傷をやめよ」とアピールを発表。これには350人を超える賛同が寄せられています。
(民医連新聞 第1331号 2004年5月3日)