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民医連新聞

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“関係ないヨ”と思ってない? 医療倫理のはなし(3)

インフォームドコンセントって?

医療倫理の基本の「キ」

 今回はインフォームドコンセント(IC)について考えてみます。

 もともと、医療倫理は欧米から輸入されたものです。その中で広く受け入れられているのが「自律尊重原則」です。要は「医療行為を行うとき、第一に尊重されるのは患者の意思ですよ」というごく当たり前の考え方です。ICはその根幹をなしています。

 インフォームドコンセントとは、なんでしょう。「判断能力を備えた患者が、誰からも強制されていない状況下で、 十分な医療情報の開示を受け、それを理解した上で、医師が医学的に患者にとって最善と判断し提示した診療プランに、患者自身が同意し、医師の診療行為を許 可する」、という過程のことです。

 インフォームド(informed情報を受け取る)は受動態、コンセント(consent同意する)は能動態 で、あくまでも「患者が説明を受け、同意する」ということです。「説明と同意」という訳があてられていますが、これだと医療者が説明し同意を得るという ニュアンスが強く、患者を主体において「納得医療」という訳語をあてようという主張もあります。

「医療」じゃなければ許されない

 私たちの病院では、内視鏡から造影検査、ベッドサイドでの各種の手技まで、その実施にあたっては、全て患者さん から「同意書」を取ることになっています。その種類は膨大です。大きな声では言えませんが、それが形式主義的のようでいやなのですが(!)、日本という文 化の中で本当のICは根付くのでしょうか。

  「日常の診療行為に、いちいちICが必要になる」、これは日本人の発想からすると、少しばかり違和感があるかもしれません。でも、医師をはじめとした医療 従事者の行っている診療行為の多くを振り返ってみると…診察室で患者を裸にする、触る、性器や肛門に指を入れる、針を刺す、あるいは体にメスを入れる…と いった内容です。いずれの行為も、医療を離れて一般市民の常識で考えれば、許されないことですよね。このことをまず理解しておかなければいけません。

 ですから、当然のことながら、これらの医療行為の実施にあたっては、どんな形をとるにせよ患者の同意が必要なのです。

 一方で、「IC」イコール「同意書取り」という考え方も、もう一度見直してみる必要があると思います。

 臨床、臨床研究、医学教育などで世界有数の病院とされるアメリカのメイヨークリニック※心臓外科では、手術前に 特別に用意された同意書に患者がサインする、という習慣はないのだそうです。代わりに、患者が内科医、外科医を交えてじっくり話し合い、その内容をカルテ に記載し、それがICの代わりになっています。クリニック全体としても、定型的な用紙は無いようです。

 原則的な考え方は「患者に治療内容を充分に説明し、納得してもらうのがICの本来の目的。お互いの会話をカルテ に書き留めるのが一番だ。患者のおかれている状況や質問の内容によって、同意はさまざまな形をとりうる、定型的な一枚の紙切れにおさまるものではない」と いうもの(岩波新書『心臓外科医』坂東興著)。当たり前のことですが、日常の同意書取りに追われる身には痛い言葉でした。(安田 肇・全日本民医連 医療 倫理委員)


※メイヨークリニック…ミネソタ、フロリダ、アリゾナにあり、高度な医療技術、一般診療にとどまらず、医学教育、 検診事業、福祉分野を推進。三五〇万人の患者の来院記録と二五〇〇万人の診療結果(全米、世界一五〇カ国から受診した患者データ)の膨大な情報を集積、世 界中から見学・研修者が来ている。

(民医連新聞 第1331号 2004年5月3日)