薬害C型肝炎訴訟 原告・支援者が訴え 「まだ感染知らない人が…」
出産や手術の際に血液凝固因子製剤(フィブリノゲンなど)を投与され、C型肝炎に感染した被害者が、旧ミドリ十字(現三菱ウェルファーマ・ ベネシス)など、製造、販売した製薬会社と国を相手に、「薬害肝炎訴訟」をたたかっています。東京、大阪、福岡、仙台、名古屋の五地裁に七二人が提訴。昨 年二月から公判が開始されました。二月二四日の公判後、支援者などおよそ一〇〇人が集まった報告会で、原告の声を聞きました。(鐙 史朗記者)
実名を公表してたたかっている原告の山口美智子さんが福岡から参加しました(写真)。
山口さんは出産の際に大量出血し、血液製剤を投与されC型肝炎に感染しました。「原告の生の声を聞いて、薬害C 型肝炎を理解してほしい。私たちは患者ですから、裁判は肉体的、精神的なストレスで、とてもきついです。たたかうことは、たいへんなことです。私が実名を 公表することで、報道に利用してもらい、まだ感染を知らされていない人たちが早く発見され、早く治療できるようにしたい」とのべました。
山口さんのように、出産時に血液製剤を投与された被害者の中には、感染したために、わが子を抱くことさえできなかった人もいます。
感染者の多くが偏見に耐え、C型肝炎の治療薬・インターフェロンの副作用に苦しみ、病状が悪化するかもしれないとの不安を抱えて生活しています。
原告の大学生(23)は、生後まもなく手術を受け、そのとき第Ⅸ凝固因子製剤(旧ミドリ十字社製・クリスマシ ン)を投与され感染しました。感染がわかったときのショックを語り、「インターフェロン治療は費用が高く、簡単には受けられない。お金の問題でためらう人 もいる。医療保障をしてほしい。就職の時期を迎えたが、C型肝炎のために差別された人の経験を聞くと、なかなか囲りの人に言えない。オープンにできる社会 にしてほしい」と訴えました。
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この日、薬害肝炎訴訟をささえるために来た学生、弁護士、支援者の中に、静岡・三島共立病院の職員一〇人がいました。
薬剤師の竹端尚美さんは、「前回は薬剤師三人だけで来ました。多くの職員にもっと知ってもらいたくて、今回は研修に傍聴を組み入れ、事前に学習してきました。支援を呼びかけ協力したい」と話しました。
同院は調査の結果、フィブリノゲン製剤の納入はありませんでした。いまC型肝炎と診断された患者さんに、フィブリノゲン製剤の使用や輸血歴を聞きとり、薬害肝炎の可能性を掘り起こしています。
またも、国と旧ミドリ十字
薬害肝炎訴訟で問題になっている血液製剤は、「フィブリノゲン製剤」と「第Ⅸ凝固因子製剤」。数千人の供血者の血漿をプールしてつくられたため、供血者の中に1人でもC型肝炎の感染者がいると、全部が汚染しました。
アメリカではその危険性が1960年代から指摘され、1977年にはフィブリノゲン製剤の承認は取り消しに。し かし日本では、64年に承認されて以来、ウイルスの不活化処理が完全化した94年まで放置されました。危険性を軽視し、適切な措置をしなかった国と旧ミド リ十字などメーカーの責任が問われています。
日本のC型肝炎ウィルス感染者は200万人以上いるとされ、その多くは、輸血、予防注射など「医原性」といわれます。なかでもフィブリノゲンは29万人に使用され、推定約1万人が肝炎を発症しました。
旧ミドリ十字が1994年までに製剤を納入した医療機関7000余の公表を、厚労省は拒否していましたが、2月の情報公開審査会の答申を受け、公開へ方針を変えました。
全日本民医連は加盟施設に向け、公表を待たず納入記録を確認し、カルテ調査し、感染の可能性のある人に知らせ、受診・検査を促すよう通達しています。なお検査は、07年度まで、自治体健診か保健所で受けられます。
(民医連新聞 第1330号 2004年4月19日)