国保料2回分払えず即“悪質滞納者”-死亡者出した千葉市-
「前年度分の国保料に滞納があった」として保険証を取り上げられ、手遅れで死亡する事件が昨年千葉市で起きました。千葉民医連と千葉社保協 は2月3日、「千葉市のやり方は国保法の趣旨に反する。指導してほしい」と厚労省に申し入れ。その後、市との交渉で、対応の一部改善を約束させました。 (鐙(あぶみ) 史朗記者)
「厚労省は指導せよ」 千葉民医連・社保協が申し入れ
亡くなった男性(60)は、国保険料をまったく支払っていなかったわけでありません。口座振替で二〇〇二年度分は完納。二〇〇一年度分の二回分(七万二〇〇〇円)が口座残高不足で引き落されなかっただけ。
このような事情で国保証をとりあげられたケースは、千葉市内だけで約一〇〇件もあります。この問題を市議会で追及された市側は、「国の指導に従っているだけ」と答弁しました。
そこで千葉民医連と社保協は、「納付相談も十分にせず、一律に資格書を発行するのは国保法に違反。厚労省は市を指導するように」と、厚生労働省に申し入れることに。小池晃参院議員にも協力を求め交渉に臨みました。
国保法の第二条と第三六条は、被保険者が医療を受ける「権利」を保障しています。国保料(税)の滞納を理由にした保険証の取り上げ、資格書発行は、この 「権利」を奪うものです。この罰則的措置を導入した時、政府は「悪質な滞納者に限る」と説明していました。
二〇〇一年一〇月の参議院厚生労働委員会で小池議員は「一律に資格書を発行するのでは、法の趣旨に反するではないか」と質問。厚労省の局長が「資格書の 発行は、できるだけ被保険者と接触し、その実情も考慮しながら適切な運用をするためのもの。保険料納入に対し誠意がある、その意欲と計画もある、その実績 もあるというケースには保険証を発行する」と答弁した経緯があります。
交渉で、千葉健生病院SWの松本若菜さん、花園診療所事務長の石塚俊彦さんらは、「千葉市の対応には問題がある」と指摘。
しかし、厚労省側は、「市町村は法令に沿って対応しているはず」「滞納者を放置すれば、国保制度がたちゆかない」などと答弁。千葉市のケースを調査して いないことがありあり。小池議員は「人が亡くなっているのに、こんな姿勢でいいのか」と強い口調で、「すぐに調査し指導すべきだ」と要求しました。
二月一〇日、厚生労働省は「当該ケースでは、千葉市が電話や訪問をした記録がない。対象者と接触の機会をもつことが望ましく、納付相談をするよう注意喚起したい」と小池議員に回答してきました。
二月一三日、千葉市社保協は、あらためて対市交渉を行いました。その場で市は、(1)返還通知などに分納相談のことを記載する、(2)保険料の口座振替 をしている人に対して、短期証・資格書を発行しないことを検討に乗せると、約束しました。
冷たい国保行政の被害者Aさん
六〇歳の男性Aさんは、自営業で、息子さんと二人暮らしでした。滞納を理由に千葉市から資格書を交付されたのは 〇三年四月です。このころからAさんは、友人に「めまいや頭痛がある」と訴えていました。市役所からは、毎月、一方的に催告書や、弁明書などが送られてき ました。が、対応もできないまま、資格書で病院を受診することをためらっていました。そのうち一〇月に症状が悪化、一一月に息子さんの被扶養者になり、入 院しましたが、その時には、もはや手遅れの状態でした。肺癌が脳に転移していて、一二月に亡くなりました。
石塚事務長は「Aさんは、保険料の口座振替の手続きをし、一年間保険料を払い続けていました。これは払う意思があることに他なりません。にも関わらず、 前年の滞納があったとみなし、一方的に国保証をとりあげ、Aさんを死に追いやった。払う意思があっても、払えない事情を市側が斟酌(しんしゃく)しなかっ たことが問題だ」と批判します。
千葉市では、国保加入世帯一七万九二三九世帯のうち三万一五四六世帯(一八%)が国保料を滞納。そのうちの七九三五世帯(二五%)に資格書を発行しています。全国の水準より厳しい措置が取られています。
制裁しても滞納へらず
高額な国保料(税)が払えず、滞納する世帯が急増。厚生労働省の調査(2003年6月1日)では、19%が滞納 世帯。5世帯に1つです。制裁措置として、保険証返還を求め、資格書を発行する動きが強められ、受診を妨げています。滞納しそうな場合、払えない事情を申 告し、国保料(税)を減免させること、制裁措置から除外される「特別の事情」と「公費負担医療」の対象者に当たることを認めさせるとりくみが必要です。
(民医連新聞 第1327号 2004年3月1日)
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