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民医連新聞

民医連新聞

全日本民医連第5回健診活動交流会から 「地域まるごと健康づくり」「働く人の健康まもる」

 全日本民医連は1月30~31日、第5回健診活動交流集会(滋賀)を開きました。(1)働く人、地域の健康状況・課題を明らかにし、民医連の健診 活動がめざすものを共有する、(2)医療・経営構造の転換の中で、健診活動の意義を確認する、(3)健診担当職員のスキルアップと交流、の3つが目的。 221人が参加。分科会では、共同組織といっしょに健康で住み続けられる地域づくり、生活と労働がみえる健診、健診活動を職員全体のものにする工夫、健診 センターなどのテーマで交流しました。

 総会方針でも健診活動の重視が呼びかけられています。分科会の実践報告から、いくつかを紹介します。

[地域・労働者の実態 ~集会の問題提起より]

 問題提起では、様ざまなデータから国民の健康実態があきらかになりました。

●健診「所見あり」が増加・人間ドック全国集計「異常なし」…14.5%

過去最悪(日本病院会/2002年度)
・健診での有所見率は増加。99年42.9%が02年46.7%に(厚生労働省/労働者定期健診実施結果)

●労働者は疲れている・「普段の仕事で体が疲れる」…72.2%

・「将来の健康に不安がある」…76.0%
・「仕事に強い不安、悩み、ストレス」…61.5%(2002年度労働者健康状況調査)
・「心の病にかかる従業員が増えた」企業…48.9%
・「心の病で1カ月超休業者がいる」企業…58.5%
 ※従業員3000人以上の企業の場合は、89.7%(社会経済生産性本部メンタルヘルス研/02年)

●中小零細業者の場合・健診結果で「健康」は17.6%だけ。

「再検、精査」…39.3%、「要治療」…11.5%
(民商共済2002年調査 中間発表)
・「健康不安がある」…57.6%、「医師から休養を指示されたが、仕事で休めなかった」…73.4%、
「3年以上健診を受けていない」…25.5%
(同 営業とくらし・健康実態調査/2002.9.10)

●職場健診について・職場健診を行った事業所…87.1%

(5000人以上の企業は100%、10~29人規模は84.1%。派遣や請負労働者などは対象外、健診費が労働者の自己負担になるなどの問題もある)
・がん健診または人間ドックの実施率…41%
※97年の実施率48%から後退している

50%超す会員が健診を受けて…民商健診 長野・松本協立病院

 長野・松本協立病院は、ここ数年で、受診率を年々アップさせている民商健診について、報告しました。
 民商会員の健診受診率の全国平均は一〇~二〇%。しかし松本民商では、現在五〇%を超える会員が健診を受けています(長野県平均は一六・七%)。会員の 一割が多重債務者と言われ、健診=「お金がかかる」「結果により、休業→生活が成り立たない」、などの理由で受診を敬遠する人が多いなか、様ざまな形で健 診をすすめました。
 一つは、民商役員との協力を強め、同会の総会など、機会あるごとに健診課の職員が参加し、交流をすすめてきたこと。会員の健診への理解がすすみました。
 また、時間帯、費用面でのかかりやすさを追求。春・冬に集団の日曜健診をもち、春には三度の夜間健診、都合の良い時間帯を選べるよう時間枠を広げまし た。費用面では、民商健診を友の会健診として位置づけ、二五〇〇円で受けられるようにしています(六五〇〇円の法定健診より濃い内容)。
 健診後のフォローは、看護部からも協力があります。三〇~四〇人の看護師が、民商の支部ごと(約一五カ所)に分かれ、二~三週間がかりで一人一人に結果を説明します。この説明会には五〇%以上の会員が参加します。

 なお、健診結果は要再検査、要精密検査、要治療がそれぞれ増え(グラフは全国平均との比較)、七割以上の受診者になんらかの異常が発見されており、同院ではひきつづき、受診率の向上や保健指導を努力したい、としています。

「所見有り」9割に…北海道

 北海道・道北勤医協も、民商健診の現状と課題を報告しました。同法人では、年二回の集団健診(日曜に実施)、支部健診のほか、北海道勤医協から巡回検診車を借り、旭川市外の四市町を巡る「地方健診」にもとりくんでいます。
 しかし、民商健診を始めた八五年から、有所見率が三九・一%から九四年は七九・九%へ、〇三年には、九三・四%にも上がり、会員の健康悪化は急激にすす んでいます。また、「三年以上健診を受けていない」人も二六%という事態のなか、「二次健診でのかかりやすさの工夫や、健診結果の生かし方、一次予防への アプローチなどを検討していく時期にきている」と述べました。

健診後、3段階のフォローで「健康づくり」 奈良・平和会

 奈良・平和会の自治体健診は法人全体(一病院五診)で六七〇〇件の実績ですが、このところ、個人負担の発生や医師会の宣伝自粛通達、医療改悪の影響などで、受診抑制が認められるようになりました。
 「健診フォロー外来」、「健康づくり外来」という診療単位を設けています。健診で所見があった人たちが気軽に相談し、受診、治療へと納得の上で、スムー ズに向かうことができる支援システム(図)をつくり、地域の健康づくりにとりくもうとしています。

健診日 健康づくり相談コーナー

   ↓

結果返し後、吉田病院で 健診フォロー外来

   ↓

健診フォロー後、伏見診で 健康づくり外来

 一つめの「健康づくり相談コーナー」は、健診日に自由に利用することができます。検査技師とレントゲン技師が担 当し、血管年齢・骨密度・体脂肪(健診外項目)の測定と健康相談を行います。二年前に設置し、〇三年度の健診期間中(九月~一二月二〇日)に、三六五人が 利用しました。これは健診受診者全体の一四%にあたります。
 二つめの「健診フォロー外来」は、今年度、吉田病院で開設しました。健診後の精査や再検を一般外来で行うと、待ち時間が発生したり、医師が「この程度の 検査値でなぜ受診したの?」と、かみ合わない対応をすることが健診担当者の長年の悩みでした。これを改善する内容。所見のあった人の健診結果に紹介文書を 同封し、この外来に来てもらいます。内科医を中心としたチームが、結果説明、栄養指導や検査誘導、他科・他院への紹介を行います。また、慢性疾患と認定さ れた人は、三つ目の「健康づくり外来」へ紹介します。
 この「健康づくり外来」は、吉田病院の門前診・伏見診療所で開いています。運動・栄養・禁煙で生活習慣病を改善しようというもの。健康スポーツ医を中心 に、健康運動療法士、管理栄養士、薬剤師、サプリメントアドバイザーなどが指導・援助にあたります。患者の生活スタイルや体力にあわせた、アドバイスカー ド(一四種類ある)を使って、運動・栄養の生活習慣を無理なく日常生活の中で変えていけるようサポートしています。

「職場のカルテ」発行…埼玉

 埼玉協同病院の健康管理課は、健診結果をもとに、職場集団の特徴を示す「職場のカルテ」を発行していることを紹 介。ダンプ労働者にあまりにも有所見者が多かったことからはじめたものでしたが、この活動を地域に適用し、「地域健康マップ」として発展させ、医療生協組 合員の自主的活動を励ましている、と語りました。

共同組織と癌検診無料健診、患者掘りおこしなど…

 貴重な経験は、ほかにも数多く報告されました。

●…ヘルスコープおおさか病院の経験に学び、共同組織といっしょに大腸癌検診月間にとりくむ。七〇カ所で健康班会(全七〇班)を行い、検診容器を手に、職員・共同組織が地域を訪問、五〇〇件を超える回収。約四〇人が陽性に。
 「健診は病院の営業活動であるとともに、地域まるごと健康づくり、という二つの意味がある」と実感。(大阪・加賀屋病院)

●…無産者診療所の伝統を受け継ぎ、法人創立いらい、無料健診にとりくんでいる。現在、友の会員に「無料」で健診を行っている。友の会健診を受けるための 年齢・住所の制限はない。内容は自治体健診と同じ。また、各種癌検診も、友の会員が札幌市民の場合、自己負担なし。※会場から賛否両論の意見が続出した。 (北海道勤医協)

●…地元炭鉱で働き、じん肺になった人の堀りおこしにとりくんでいる。現在、労災保険給付はゼロ。着目のきっかけは隣町でじん肺患者が見つかったこと。 「宇部炭鉱では、じん肺にはならない」という風評もあった。〇三年九月、宇部炭鉱離職者の「じん肺相談会」を実施し、通院患者の履歴をあたり、じん肺患者 を複数発見した。
 また、新たな試みで、〇三年に宇部協立病院で肺癌検診を受けた七三〇人を再検討。その結果、五七人に粉じん職歴があり、一七人がじん肺であった。地域特性を考えた特殊検診の企画も重要。これを端緒に検討したい。(山口民医連)

●…土建の国保組合から、県連に健診に関する「要望書」が提出された。(1)法人・事業所ごとにばらばらな健診内容の統一、(2)データの集積・集中と労 働・生活改善活動への貢献、(3)健診業務の改善や、土建組合員の身近な医療機関になること、が盛り込まれていた。この水準に応えるため、課題を整理し、 事業所に問題提起を行っている。(東京民医連)

(民医連新聞 第1327号 2004年3月1日)