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民医連新聞

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痴呆高齢者ささえる青年職員 グループホーム「菜の花の家」-神奈川-

にんげんが好きだから

 介護の現場でも青年職員が元気に働いています。〇二年四月に開設した痴呆対応型グループホーム「菜の花の家」で、「人間が好き」という青年たちの思いを聞きました。
(小林裕子記者 フォト・尾辻弥寿雄)

 「いい風呂だった」「おやつは焼きいもだって」「買い物はだれがいくのかね?」。お年寄りが話している所は、ふつうの家庭よりちょっと広めの居間。
 痴呆を抱える九人の暮らしを八人の職員がささえています。
 ホーム長の中川京子さんは「焼きいも、好きだものね」と、話に加わりながら、立ち上がろうとした良男さんに「トイレ?」と声かけ。自分の腕につかまらせ て立ち上がらせ、歩みを見守ります。入浴介助を終えたへルパーの野口佳美さん(34)は、「風呂上がりのお水ね」と道子さんにコップを渡しながら、「疲れ たでしょ。今日の買い物は他の人に頼もうね」。
 きっちりしたスケジュールはなく、生活は一人ひとりの希望や体調にあわせて。小規模施設の良さです。
 中川さんは「痴呆の人も秘めた力があるんです。食事づくりが得意な人、面倒見の良い人。なにか役割を持つと、自信もって暮らせます」と言います。看護師 経験の長い中川さんは「痴呆の症状のように思われる行動でも、よく話を聞くと納得できます」。そして「痴呆介護はたいへんな仕事だけど、若い職員ががん ばっています」と。
 野口さんは、OLから転職して五年目。老健やデイケア勤務を経て開設時からここに。「毎日が勉強で充実」と元気です。入所者のことを「気配りができる人 たち。職員が助けられることもあるんです」。また「OL経験が生きている」と話します。「社会の厳しさを知ったから、いま『介護させてもらっている』気持 ち。苦労してきた入所者を上から見るような態度はできません」と。
 「嬉しかったことは?」の質問に、即座にスミ子さん(68)のことをあげました。入所時、痴呆が重く弱々しかったスミ子さんは、軽度になり食欲も出て、 いまやみんなに好かれ頼られる存在に。回復の過程につぶさに関わった実感です。
 スミ子さんは「三度のご飯の心配がいらないし、みんなが良くしてくれたからこんなに治ったの。私、心配症で人のことでも知らん顔できないの」と自分のことを話しました。
 介護福祉士の川田志穂さん(29)は元フリーター。スノーボードに明け暮れていた彼女に、母がヘルパー講座の受講をすすめました。実習先の特養ホーム で、痴呆の人に初めて会いました。重度の人が縛られ、騒いでいる人を職員は放ったまま。ショックでした。「長年生きてきた人を、こんな状態にしておいて良 いのか?」。これをきっかけに、痴呆のデイサービスで働きながら、介護福祉士の養成校へ。
 「いま楽しい。入所者とは、誠意を持って話すと分かり合えます。みんな五秒前のことを覚えていられないし、年齢も毎日違って言うけど、優しい人たち。 日々衰えていくのを見るのはつらいけど、人生の最終盤の大切な時に関わっているわけだから、悲しんでばかりいられない。『人間らしく、その人らしく』生き てほしい。言うのは簡単だけど、その『らしく』をつかまえるのが難しい。結論はエンドレス」。
 「フリーター経験は生きている?」の質問に、「人ひとりが生きていくたいへんさがわかったことかな。痴呆だったらなおさら。共感してあげたい」。
 川田さんは、いま「福祉全般について制度が貧弱だ」と感じています。「老人ばかりか、知的障害者、精神障害者はもっとひどい状況。民医連に骨を埋めるつ もりで、障害者に関わるいろいろな経験をしてみたい」と希望を持っています。
 「介護をするのは根本的に人間が好きだから」。中川さん、野口さん、川田さんの思いは同じです。
(入所者名は仮名です)

(民医連新聞 第1323号 2004年1月5日)