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民医連新聞

民医連新聞

深刻な実態“肌で感じた”-受療権を守ろうと共同組織とともに地域へ-

第三回評議員会のよびかけに応えて、「受療権を守る様ざまなとりくみが行われています。折から「共同組織強化月間」でもあり、共同組織の人たちとともに 地域へ入る活動が旺盛に。そこでは、小泉政権が行った高齢者の医療費負担増、健保三割負担で病院にかかれない病人の叫びが聞こえてきます。最後のよりどこ ろとして民医連の役割を果たそうと、全国各地で奮闘しています。

「9職場の事例」もとに学習

 【東京発】東京健生病院の社保委員会では、この間の医療改悪で「病院にかかりたくてもかかれない」人が増えてい るのではないかと考え、昨年冬から「気になる事例を集めよう」と院内によびかけました。ところがなかなか事例は集まりません。そこで「事例がないのではな く、気付いていない現状が問題だ」と、九月二四日に学習会を開催することを提起し、よびかけを強めました。

 当日までに「失業し国保料が払えず、短期保険証が発行された」「脳梗塞後のリハビリが必要にもかかわらず、医療 費の支払いが困難なため退院」など、九つの職場から非常に深刻な事例の報告があがってきました。これらをもとに「なぜこのような事例が起きるのか」「医療 従事者としてなにができるのか」を、「気になる事例」は社会保障の切り捨てから起こることを学習しました。

 二六日は組合員さんとこれらの事例をもって対区交渉に臨みました。その交渉の中で、私たちが要請していた国保の高額療養費受領委任払いが実現したことがわかりました。組合員さんとともに勝ち取った大きな成果です。

 職員自身の余裕もなくなるほど病院の経営は厳しくなっていますが、だからこそ患者さんの受療権を守るため、「気になる事例」を通し患者さんが苦しい立場に置かれている情勢に目をむけ、それを変えていくために行政に働きかけていくことが必要だと思います。

 今回のとりくみをきっかけに、医事課の職員が患者さん宅を訪問し、生活実態やその思いを聞くことも始めました。これからも引き続き全職員でとりくんでいきます。(井澤真希子・東京健生病院、SW)

班会が“いのち”を救った

 【大阪発】七月のある班会で、六九歳のMさんの胸が見てわかるほど異常に腫れていました。班の人がそのことに気がつき、早く病院に行くようにすすめましたが、「お金がないから」と診療を勧めても病院に行こうとしません。

 その後「なんとなく場違いな気がして」というMさんは班会に参加しませんでした。しかし、班の人たちのねばり強い働きかけで参加するようになり、少しずつ自分の生活を話すようになっていきました。

 Mさんは、年金生活者で生活苦でできた借金の返済と家賃、光熱費などを支払い、わずかなお金で生活していました。時には、小麦粉を練って焼いて空腹を満たすことも。医療費が払える状況ではありませんでした。

 今津診療所の職員が、すぐにコープおおさか病院のケースワーカーに相談。組合員さんがMさんを病院に連れて行き 検査すると、乳ガンの疑いがある腫瘍とわかり手術が必要に。生保を受けるしかないと、ケースワーカー、生活と健康を守る会、班の人たちが区役所に足を運 び、「このままでは生命に関わること」と訴え、ようやく生保を受給しました。

 Mさんは、手術をして退院することができました。

 なんでも話せる班会と行政との橋渡しをしたケースワーカー、診療所と地域の人びととの協同がMさんを救うことができました。

 「保険証がない」「窓口で負担金が支払えない」など経済的理由で困っている人にヘルスコープおおさかの、診療所、病院の窓口でケースワーカーが相談を強めています。

 (機関紙「ヘルスコープおおさか」)

気軽に相談できる体制づくりへ

 【山口発】山口県民医連ではこの間、宇部市社保協主催の国保一一〇番や国保減免申請を実施しました。地元紙やミ ニコミ紙にも国保減免申請の日時と場所を掲載し、国保一一〇番には九件の相談がありました。集団減免申請には初回、二回目あわせて二一世帯(うち無保険者 二人も参加)が窓口に申請。初回は一三世帯すべてで何らかの減免を勝ち取ったものの、二回目は明確な返事をもらえないという結果でした。

 相談会に寄せられたこれらの深刻な実態をもとに一〇月二九日、国保実態調査を実施。市当局に対して短期証、資格書のあり方、国保制度の改善を迫りました。

 宇部協立病院では、新館に「国保なんでも相談受付中! お気軽にご相談下さい」の垂れ幕を外壁に掲げました(写真)。これは「地域に訴える看板」で、気軽に相談できる雰囲気づくりをするため。「受療権を守るとりくみ」の中に国保問題を位置づけました。

 また、病院窓口や地域訪問、班会で国保について相談されたときに、職員だれもが応えられるように、事務職員が講師を担って各職場をまわり、一五分間の「国保問題学習会」を始めました。

〔深刻事例〕

●三三歳男性。奥さんと四歳、一歳の四人家族。会社をリストラされて〇三年二月から失業中。現在、失業保険の月一六~一七万で生活。一一月で切れる。国保料は月四万三〇〇〇円請求されている。→(市職員)失業保険一六~一七万があれば減額にならない。

●四一歳女性、娘と同居。三年間滞納、無保険者。四年前に破産宣告を受け、弁護士費用の支払いなどで、国保料が支 払えなかった。パンの配達業で現在収入一四~一五万円。月に市営住宅家賃一万六〇〇〇円、医療費一万円、借金返済二万円程度あり。施設に入所している子ど もが中耳炎で、施設から保険証を持ってくるようにいわれ困っている。→(市職員)保険加入手続きします。滞納分は分納で。

●六七歳スナック経営。売上が月二〇万円しかない。店舗家賃だけで月八万円。二人の子どもと本人が病気で通院している。貯金を取り崩したり、兄弟から借りたりして生活している。国保料は年間八万円。→(市職員)減額できるか検討します。

(馬場康彰・宇部協立病院、事務長)

実は私もリストラされた

 【静岡発】静岡市をめぐる国保の実態は深刻です。資格証明書や短期保険証は日常茶飯事、その上さらに保険料の大幅な引き上げが来年四月に実施されようとしています。

 静岡市の資格証明書の発行数は一市で県全体の四五%を占めます。田町診療所の受付でも保険証を持っていない人や短期証の人が目立つようになっています。資格書の人が受診した場合には、すぐにいっしょに市役所へ相談に行っています。

 また、民主団体とも共同して「国保料の値上げをさせない会」をつくり、一〇万人署名運動を開始しました。事務局を診療所が担っています。

 一〇月二一日、静岡健康友の会の支部代表者会議で、国保料値上げ問題を討議。「すでに一人で二〇〇人を超える国保料値上げ反対署名を集めた人」「週何回か署名と会員拡大で走り回っている人」「ねばり強く会員を訪問した」など経験を交流しました。

 九月に入ってからは職員と友の会世話人さんと二人一組で国保署名と友の会リーフを持って会員宅を全戸訪問。これ までに四〇軒で対話をしました。「実は私もリストラされ、いま国保料を払えず滞納している、病気になったら心配」「私は二人暮らしで介護保険料を減免して もらった」などの話も。職員と共同組織が地域に出て、深刻な実態を肌で感じました。

 だれもが病気になったら安心して医療を受けられるように、今後も自治体交渉や署名活動に力を入れていきます。

(志田 剛、静岡田町診療所、事務長)

1万人対話を目標に地域訪問

 【岩手発】川久保病院では、生活と健康を守る会などの講師から、地域の深刻な実態を聞く学習会を2回行い、地域 訪問の構えをつくってきました。病院の半径2.5キロの地域住民を対象に、地域訪問を8月から実施。職員と組合員が1万人対話を目標に、がんばっていま す。8月から始めた地域訪問は、10月25日現在、のべ220人が参加し、1200人の人たちと対話をしています。

(川口義治・盛岡医療生協、事務)

(民医連新聞 第1319号 2003年11月3日)