酷保(国民健康保険)を社会保障へ(5) 406人が国保料減免減額求め
大阪 西淀社保協・淀協が集団交渉
中断患者も治療にもどる
「大阪市の国民健康保険料が高いと思うみなさん、減免・減額申請をしましょう」。大阪・西淀川社会保障推進協議 会(西淀社保協)は、国保料減免・減額申請のための「統一個別交渉」を呼びかけ、四〇六通もの「国保料減免・減額申請書」を集約。七月九日には九〇人が、 八月一一日には三六人が区と交渉。区役所では、淀川勤労者厚生協会(淀協)の西淀病院、のざと・姫島・柏花・千北各診療所の職員が申請者につきそい、実情 を訴えました。(小林裕子記者)
「申請書付き」チラシ3万枚
西淀川区の世帯数はおよそ四万。国民健康保険に約二万世帯が加入し、うち国保料を滞納している世帯は五〇〇〇世帯におよびます。同区では国保世帯が増 加。しかも大阪市は国保料を四年連続で値上げしています。
西淀社保協は、国保問題を正面にかかげ、生活防衛を区民的な運動にと提起。「国保の集団減免・減額申請」を大規模に行うことにしました。ていねいな説明 つきの「申請書つきのビラ」を作成、構成団体の機関紙はもとより、「滞納の五〇〇〇世帯に届け」と一般の新聞にも折り込み、三万枚を配布しました。
「払えない理由」に心を寄せて
淀協の国保の患者さんは約四〇〇〇人です。この中にも対象者がいるはず。淀協の西淀病院と四つの診療所は目標を決め、申請者の取りまとめにかかりまし た。
診療所の集約がいち早くすすみました。姫島診療所では、全職員が連係して五〇〇人余の国保の患者さん全員に声をかけ、さらに中断している患者さんに手紙 で案内し、申請者は六三人に。柏花診療所は七三人、千北診療所二四人に。
西淀病院・のざと診療所では「国保や患者さんの生活実態を職員がまず理解することを大事にした」と松本嘉子副事務長は言います。学習会をひらき、のざと 診療所のカルテにチラシを挟むために病院の職員が出向きムードづくり。友の会も会員に知らせ淀協全体で約二〇〇人を集約しました。
申請書には「払えない理由」が生なましく書いてありました。「商売がうまくいかず収入が半減。これ以上支払いが増えたら首をつるしかない」「病気になっ て治療費の支払いも困っている」「収入減なのに、支出の中で国保料の占める割合が高い」…。
中断患者さんが復帰した
「六〇万円の未納分を半分に、毎月の支払い三万円を約八〇〇〇円にさせました」。七月九日に姫島診療所の事務長の前田元也さんがつきそって申請したAさ んの例です。Aさんは昨年仕事を辞めて、その五月から治療を中断していました。前田さんはこの日、まず税金を安くさせるために納税課に行き、次にその結果 をもって国保課で減額交渉し、保険証を発行させました。他に数人が治療を再開できることになりました。
八月一一日も申請者に目配りする前田さん。聞くと、「実はこんな手続きを知ったのは、この大規模なとりくみのおかげ。Aさんは無理して市税を二回分払わ なければ国保料がもっと安くなったんです」とのこと。姫島診療所の申請者六三人のうち九人の減免・減額が認められ、残り半数は法定減免に。
千北診療所にも「こんなことができるなんて知らなかった。本当に助かった」などの声が。とりくみが実り患者さんが喜んでくれたことが職員の確信になりま した。
「ひとりぼっちで悩ませてはならない」
八月一一日、申請者の様子を見守る人たちの中に、のざと診療所の看護師一〇人ほどの姿が。主任会議を中止し急きょ「研修」に来たのです。大規模な近接診 療所の職員が交渉の様子を見るのはめったにない機会。申請者一人ひとりにつきそう診療所の職員や社保協の仲間の姿を見て、ある主任は「困っている人をひと りぼっちで悩ませてはいけないのだ」と強く感じたそうです。
「国保料高い」が区民の声
社保協のビラには反響が。折り込みした当日から社保協と労連には、連日「どこに行ったらいいのか」「よいことを聞いた」などの電話があり、ビラを見て別 個に申請した人も七〇人いました。
集団申請は従来、生活と健康を守る会と民商で一〇〇人規模でとりくんでいたもの。淀協と労連などが加わり「国保料が高い」が大きな声になりました。
七月に「不承認」になった一八〇件中、八月に再交渉し減免が勝ち取れた例もあり、「不承認」のフォローがひきつづく課題です。
淀協では九月から大阪民医連の「訪問月間」に結合させ、とりくみを強めています。
(民医連新聞 第1316号 2003年9月15日)