介護実践での課題や悩み 全国の経験を活発に交流
七月二九~三〇日、全日本民医連は第三回高齢者施設交流集会を大阪で開きました。医師、看護師、介護福祉士、ケアワーカーなど一一八人が参加。は じめに、長瀬文雄事務局長が開会あいさつ。国光哲夫介護福祉委員が「高齢者施設をめぐる情勢」「民医連の高齢者施設づくりの意義」「ケア活動」などについ て問題提起。日常の介護実践で直面する課題や悩みも含めて、全国の経験を活発に交流しました。
全体会では五つの指定報告が行われました。
福岡医療団の和田峯ゆき江さんは「福岡市高齢者施設公募に応募した特養建設のとりくみについて」。福岡医療団の 地域密着型の医療活動が評価され、近隣地域の自治会、町内会長、老人会長など四四人の賛同署名が大きな力となり、地域住民とともにすすめた特養建設運動の 経験を話しました。
また、特養ホーム待機者家族会を結成し、地域の人たちといっしょにすすめる特養建設運動のとりくみ(石川)、夜 勤帯の転倒が多いことから、昨年四月から三交代制を導入した結果、事故防止の対応がきめ細かくでき転倒事故が減少した(新潟)、小規模多機能施設「まくは り生活福祉センター」建設の経過(千葉)、第三者評価のとりくみ(山形)を、それぞれ報告。
テーマ別討議は六つの会場に分かれて。「ケア実践」をテーマに二五人が参加した第二分散会は「サービス評価」「転倒・転落事故防止」「介護施設での医療行為の問題」「職員育成」の四点について話し合いました。
「…事故防止」では、長野・あずみの里から「今年からヒヤリ・ハット報告書や集計方法を改善し、フロアごとにリスクマネージャーを配置し、現場からの報告に迅速に対応している」など、人権を守る視点の事故防止を報告。
また「職員育成」では、全職員が勉強会に参加して、介護福祉士、ケアマネジャーの試験を受験した(山形)、新人 研修委員会をつくり、看護師がアドバイザーになって介護職の研修をしている(福岡)などをはじめ、「利用者・家族の困難の背景に迫る民医連運動に、介護職 員ももっと関わろう」との発言も。
*
ナイトセッションでは、特別養護老人ホーム園田苑(兵庫)の中村大蔵施設長が講演。中村さんは、震災時に建てら れたケアつき仮設住宅の運営やハンセン病療養施設訪問を通じて感じた「人と人とのつながり」の大切さや、ライフスタイルに合わせて生活できるグループハウ スの良さを紹介しました。
二日目は、日本福祉大学の石川満助教授の講演。石川氏は、「あいつぐ社会保障給付の引き下げで生活困窮者が社会的排除を受ける」と指摘。「今後の介護保障のあるべき方向、介護の質的評価についても民医連の現場から声を上げていくことが重要」とのべました。
各分散会報告の後、国光介護福祉委員が、「共同組織を含めて地域の運動の中で事業展開をつくり出すこと、ケア内容を向上させていくこと、介護保険制度の見直しについて、現場の中から建設的な提案をしていくことが重要」と、まとめました。 鐙(あぶみ)史朗記者
(民医連新聞 第1314号 2003年8月18日)