在宅酸素患者さんを社会部長が訪問/長野県
長野県政では、医療・福祉分野でも、前例のない対応が行われています。五月には県の社会部長が上田生協診療所の在宅酸素の患者さん宅を訪問、聞き 取り調査を実施。また六月、県は「制度の狭間にある人びとが救われるような支援を検討するため」として県内のソーシャルワーカー(SW)に「保健・医療・ 福祉サービス等の調査」を依頼。長野民医連はこれに応え、困難事例を伝え、施策についても意見をのべる予定です。
【長野発】老人医療費一~二割負担が実施された昨年一〇月、高村京子県議が前の社会部長に対して「特に在宅酸素療法の患者さんの経済的負担が重くなる。患者さんの状況を直接見に来てほしい」と要望していました。五月の訪問はそれが実現したものです。
訪れたのは社会部長と医療福祉係長です。上田生協診療所に入院中のSさんを訪問し「九月まで一カ月八五〇円だっ た医療費が一〇月から一気に一万数千円に。年寄りいじめがひどくはないですか?」などの意見を聞き取り。他二軒を訪問し、介護者から「福祉医療の申請に役 場に行くと、それぞれ手続きの部所が違い、あちこちへと回されます。もっと簡単な手続きにならないものか」、「二年ほど前から酸素療法を受けています。医療費が上がったので身障の申請をしたが、三カ月はかかると言われた。負担は 一〇倍。それに私自身が疲れて、介護保険でショートステイを利用したいが、酸素療法をしているからと受け入れてくれない。そのことが一番困っている」など の声を聞きました。
従来の県政では福祉部門のトップにいる部長自らが患者さん宅に来て懇談するなどありえないこと。立ち会った上田 生協診療所の屋ヶ田寿男事務長は「部長は『知事からも積極的に現場に出かけて行くよう言われています。勉強になりました』と、クーラーのないボロ公用車で 帰りました。県政が身近なものに変わってきた」と。
この現地調査の翌日、社会部長は早急に対応すべき点をまとめた調査報告を田中知事に提出し、その報告は県と上田市の関係部局に伝えられました。
支援が必要な人の実態調査も
県内の医療ソーシャルワーカー宛に届いた調査依頼の文書は、県社会部長、衛生部長の連名です。
趣旨には「国における制度が存在しないために、これまで県・市町村の医療・福祉施策では十分にサービスが行き届 いていない、制度の狭間にある人びと」がいるので、「福祉・医療現場等の実態調査、関係団体との懇談、支援を必要としている人との面接調査等を行った上 で、国に対して政策提言を行い、併せて、来年度の県の施策に活かそうと」の説明が。調査は病院の医療ソーシャルワーカーが把握している事例や気づいた点な どの報告を求めていました。
県連SW委員会では〇二年一月~一二月に受けた医療相談から「受療権が保障されなかった事例」約二三〇件を例示 しました。赤坂律子SW委員長は「無保険、短期保険証、医療費の支払い困難など、前年の調査に比べ件数も内容も深刻化していることを伝えた。委員会は八月 に県と懇談し、施策について意見交換する予定」とのべています。
(民医連新聞 第1313号 2003年8月4日)