酷保(国民健康保険)を社会保障へ 摂津市国保窓口がていねいになった
大阪社保協の現地調査で
冷たい国保行政のために業者婦人Aさん(67)が命を落とす事件が大阪府摂津市で発生。六月一〇日、同市 で大阪社保協と「摂津市国保をよくする会」は国保行政の現地調査を実施。その結果、市の国保窓口対応が大きく変化。市民の話に耳を傾け、ていねい迅速にな り、過去を知る人が驚くほどになりました。
「『分納は滞納と同じだ』と、病気になった子どもがいるのに保険証を発行しなかった」「出産後間もない女性をイスにも座らせず、出産一時金から国保料を払うよう二時間も説得」…。三月の大阪社保協総会で報告された摂津市の仕打ちは、Aさんにだけではありませんでした。
大阪社保協は「Aさんの死は国保行政の象徴」と告発し、摂津市に対する「現地調査」を呼びかけました。
「現地調査」当日には府内各地から二八〇人、大阪民医連からも一二人が参加しました。
午前中は助役、国保課長らの市当局と交渉。Aさんを死亡させた教訓を受けとめ、対応を改善するように厳しく求めました。
午後は国保加入者から聞き取り調査、議会各派回り、商工会に申し入れ、医師会と懇談、商店街へ訪問行動などで、国保加入者の実情や行政の実態を把握しました。
まとめの集会では「この運動を大阪中の自治体にひろげ、国保を改善しよう」の呼びかけが。Aさんの悔しさを胸に「運動の手をゆるめない」との決意を固めました。
この「現地調査」をとおして得られたものは大きく、
(1)一部負担金免除制度の適用の拡大、(2)窓口対応の改善(一回目に書類を渡し二回目に受理)、(3)滞納者を受領委任払いの対象から排除していた問題は、生活状況により弾力的に運用する、の三つ。具体的な成果を勝ちとりました。
またAさんと同様の体験をした女性が「国保は命の保障。市はなんだと思っているのか」と涙ながらに迫るなど、参加者は行政への怒りと国保改善に向けた勇気と展望を共有しました。
(大谷嘉則・大阪民医連事務局)
Aさんの無念の死
Aさん夫婦は仕事が〇一年から極端に減り始めたところに不渡り手形をつかまされてしまった。
蓄えを吐きだし、やりくりする生活で、持病がある奥さんは通院もできず我慢していた。医師から呼び出され、〇二年春に民商に相談、一部負担金免除を申請 したが、市は具合の悪い奥さんを何度も市役所に呼びつけ、「民生委員から無収入の証明をもらえ」などと添付書類を要求し、書き直しをさせた。おまけに「一 部負担金免除は翌月から三カ月しか使えない」と。
〇三年一月に奥さんは激痛を訴え緊急入院、手術を受けた。ガンの転移だった。免除の延長手続きをためらい、我慢していたのだ。
夫が国保課に行くと「免除は翌月から。高額療養費の受領委任払いができるのは滞納がない人だけ。Aさんは対象外」と言われる。
Aさんの滞納は二〇〇〇年までは一度もなく、〇一年は二回だけ。〇二年度も数回は支払った。奥さんは病院にかかるのを我慢しても、何とか国保料を払おうと努力したのだ。
市は「二〇万円ある滞納のうち半分は入れてもらわないとね」と、まるで高利貸しのような発言。手術代が用意できるなら受領委任払いなど不要だ。
この数日後、奥さんは死亡。
(民医連新聞 第1312号 2003年7月21日)
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