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民医連新聞

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「医療費の相談は旭診療所や」患者さん増えた―高知・旭診療所のとりくみ―

shinbun_1311_05 昨年一〇月の高齢者一~二割負担と、四月の健保本人三割負担は、患者さんや医療機関にとって冷たい風でした。受診する患者は激減、医療を受ける権 利がおびやかされています。そんな中でも、高知の旭(あさひ)診療所はちがいます。昨年一〇月から患者件数を増やしており、四月も前年対比で一〇五%です (図)。「いまが出番、医療を受ける権利を守ろう」と、共同組織と協力し地域を歩き、積極的に医療相談や健診受診をすすめている結果です。(木下直子記者)

地域でも評判 「窓口職員は全員、医療相談にのれます」

 高齢者一割負担の影響で旭診療所でも高齢者の窓口負担金が平均二・二倍にふくれあがりました。同診療所では、高 額医療費の該当者(非課税世帯・一カ月八〇〇〇円、一般・一二〇〇〇円を超す場合)に、返金の手続き方法を知らせ、身体の不自由な人には減額認定証の手続 きも職員が代理申請するなど、いち早く対応。また、組合員さんにも「まわりに該当する人がいれば、診療所に。職員が対応します」と呼びかけました。診療所 の事務職員は、なんども市の担当窓口へ足を運び、いまでは全員が相談にのることができます。
 診療所の該当患者さん全員の手続きをすすめているうち、地域でも「医療費の相談なら旭」と評判になりました。他の病院にかかっている人からも、「支払い が一万円を超えた。どうしよう。生活保護を受けなければ、生活ができなくなる」「病院に入院したが、高額医療費に該当するでしょうか?」などの相談が寄せ られるようになりました。「いま通っている病院では、制度のことは何も教えてくれなかった。これからは旭診療所にかかる」と、転院してくる人まで。
 「一日あたりの患者数はそう変わっていませんが、件数では昨年一〇月から増えています」と、山本正博事務長。

月2回の 「訪問デー」は組合員さんといっしょに

 「お金がないと、喘息の薬を減らした。給料が入るまで支払いを待つことも(高血圧と気管支喘息・国保短期証)」 「インシュリン治療を中止、内服のみに。五月以降中断、新聞配達をはじめたが、治療費も払えないと言われた(糖尿病・退職者本人)」「今年リストラ、六月 来院なし。電話するが留守(糖尿病・任意継続)」…事務の仲眞知子さんがまとめた「気になる患者さん」のメモの一部です。
 深刻な事態に、去年までは月一度だった地域訪問を二度に増やしました。機関紙を配り、地域のことを知りつくした組合員さんといっしょの「ふれあい訪 問」。「地域に職員が来てくれたら組合員はうれしい」という運営委員の尾崎健二郎さんと松本和香さん。ほぼ毎回、この訪問行動に参加しています。
 いま高知市の基本健診のよびかけを中心に行っています。四月~一一月の健診実施期間中に五〇〇人が目標。訪問のかいあって受診者はすでに二〇〇人。健診を機会に受診する人もいます。
 まわった地域に中断患者さんがいれば、職員が訪問。もちろん「医療や介護で困っていることはないですか?」という声かけも欠かしません。

「高額医療費の制度はまだまだ知られていない」

保団連の調査では、高額医療費制度による償還を申請していない人が全国に一二万人以上、未還付金は七億円以上にも(表)。 高知市内でも、受けとれるはずの返金を申請していない人が六割(約六〇〇〇人)でした。そこで診療所などが高知市に働きかけた結果、四月に初めて該当者全 員(一万人)に通知が届けられ、申請者は増えました。「制度を知らせるとりくみは、患者さんの医療を受ける権利を守るとりくみです」と山本事務長。「組合 員さんといっしょに医療を守っていきたい」。

 

表)高額医療費償還申請の実態
( 保団連調査)
都道府県 調査時期 申請率
( %)
未申請による未支給額
( 円)
青森 03年1月 41.7 30,485,788
岩手 03年2月 42.7 29,420,666
宮城 03年5~6月 90.3 6,835,597
秋田 03年6月 80.8 9,328,989
山形 03年6月 71.8 15,311,484
福島 03年3月 30.1 23,085,368
茨城 03年6月 89.4 4,893,328
栃木 03年4月 69.1 10,538,642
東京 03年2~5月 64.4 80,765,903
神奈川 03年4月 74.5 79,911,991
石川 03年6月 73.0 21,084,736
静岡 03年4~5月 76.2 30,432,104
愛知 03年5月 90.9 12,081,095
三重 03年5月 89.8 12,292,035
京都 03年2月 50.3 11,198,533
大阪 03年5月 82.9 82,477,846
兵庫 03年6月 74.6 19,910,000
奈良 03年5~6月 50.7 18,188,235
岡山 03年5月 40.9 53,234,120
山口 03年3月 41.1 40,010,318
徳島 03年6月 74.5 4,958,122
愛媛 03年6月 61.0 41,285,371
高知 03年6月 70.8 40,063,676
福岡 03年5月 45.9 182,432,221
長崎 03年3月 56.8 22,585,664
熊本 03年6月 66.6 9,341,502
宮崎 03年6月 86.6 9,962,744
鹿児島 03年5月 43.9 95,788,493
沖縄 03年6月 71.3 11,770,545

(民医連新聞 第1311号 2003年7月7日)