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民医連新聞

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全国の仲間にささえられ「再生」へ -川崎協同病院-

  昨年の「事件」発覚から一年、神奈川・川崎協同病院は「医療の再生」「経営の再生」「組織の再生」の三つの再生を掲げ、奮闘しています。この春、川崎地域 への大宣伝行動の支援に、地元に加え関東甲信越から一五〇〇人を超す民医連の仲間が駆けつけただけでなく、全国各地から看護・医師部門への医療支援も入っ ています。二年目に入った川崎協同病院を取材しました。
(鐙史朗記者/木下直子記者)

 「支援を出してくださった病院の看護体制も決して楽ではないはずなのに…。全国の仲間に励まされ、今までがんばってくることができました。支援の仲間が 一生懸命働き、患者さんにもあたたかく接している姿勢に現場は、励まされています」と、総師長の渋谷圭子さん。
 昨年の秋、二〇〇三年四月の療養病棟導入を決めながら、「事件」と経営問題の影響で退職者数が例年以上に発生。中途入職者も少ない、看護師が足りず体制 がとれない、という事態に直面。「川崎協同病院を守ることは民医連運動を守ること」という全日本民医連からの呼びかけにこたえ、全国から看護師が送り出さ れました。「一年間」「月代わり」など、出向期間は様ざまですが、三月一六日からこれまで(五月二〇日現在)二〇人を超える看護師が各病棟に入って働いて います。
 退職する同期や先輩を見ながら働き続けている看護師の一人、津野陽子さん(四年目)は、「患者さんから「『あなたはやめずにいてくれたのね』と、声をか られます。また、支援者からは『がんばって』の言葉や具体的な業務改善のヒントが吸収できて、病棟でも刺激になっています。チームのみんなと協力して病院 をささえたい」と話します。
 全国の仲間からのささえは、現場への直接支援だけでありません。院内感染対策の研修の受け入れ(大阪・耳原総合病院)や、院内の職責者学習会への講師派遣(東京勤労者医療会)なども行われてきました。

他職種も一丸となって
 「事件」と「経営問題」という二つの危機に瀕した昨年は、川崎協同病院にとって「病院をつぶすわけにはいかない」と、ふんばった一年間でした。
 毎月、地域をまわり、病院に対する厳しい意見や注文もきき、見放さずささえてくれる組合員さんたちに接してきました。出資金の増資が前年度の二・三倍の 二億円、組合員数も増えるという形で地域からの期待も見えています。
 外来患者数も、医療改悪の影響で、全国の外来患者が平均で前年比八割という中、九割台と健闘しています。経営の面では、赤字を減らしています。
 また、この間、病棟のベッドを稼働させる点では、「ことわらない」を合い言葉に、各病棟の師長が集まり毎日調整会議をもち、稼働目標を達成しています。 あわせて、これまで看護部が行ってきた病棟業務の一部を、他職種がチームの一員として担っていこうという、これまでなかった協力関係がつくられつつありま す。

キーワードは「地域での役割」

  川崎協同病院再生の12のプロジェクト
業務改善・経費節減委員会
医療安全管理指針の整備チーム
地域医療連携室の設置
インフォームドコンセントガイドラインの作成
医療録改善プロジェクトチーム
病院の管理運営検討チーム
救急医療プロジェクトチーム
SOPプロジェクトチーム
高齢者医療検討プロジェクトチーム
10 診療情報の記録取り扱い検討チーム
11 組合員ボランティア活躍チーム
12 電子カルテの導入検討チーム

 昨年末の臨時総代会で「川崎協同病院再生プラン案」が全会一致で決まりました。
 「チーム医療、業務改善、職場での予算討議、スタートしたばかりの療養型病棟での高齢者医療など、これからの課題がたくさんあります。『地域連携や地域 からもとめられている病院の役割はなにか?』をすべての課題のキーワードにすえて、すすめていきたい」と、同病院の石井伊佐男事務長は話します。
 先述のベッド稼働の奮闘のベースになっているのもこの点です。
 「地域の声にこたえることと、ベッドを稼働させることは結びついています。開業医との連携にもなる地域連携室も早急につくりたい。今回のことをきっかけ に、私たちの病院が地域に育てられ、大きくなってきたことを再確認しました。他の病院から明らかに遅れをとっている部分にも気づいた。昨年から着手してい る『川崎協同病院再生の12のプロジェクト』(※別項)をすすめながら、現場の職員と気持ちを通じあわせて『再生』を果たしていきたい」と、石井事務長は決意を語りました。

私たちが支援にきています

支援にきている仲間のうち、五人にインタビューしました。

青森・工藤陽子さん  あおもり協立病院(3年目)
 他の病院の医療活動にも興味があり、自分の勉強にもなると思い支援に参加。
 外科病棟の勤務は初めてですが、職場も明るく、ひとつひとつ丁寧に教えてもらっています。川崎に来て新しく覚えることがたくさんあって楽しいです。
 職場の同僚とも仲良くなり、食事にも誘ってもらっています。

兵庫・内村ひとみさん 東神戸病院(11年目)
 神戸の震災の時には全国から支援をいただきました。そんな関係もあって、支援のお話をいただいた時には、ぜひ参加したいと思いました。
 整形の病棟に勤務していますが、今まで内科病棟しか勤務したことがなかったので、勉強になります。職場のみなさんもやさしく接してくれています。一カ月間の支援なのでやっと仕事がわかったころに帰らなければならないのが残念です。
 職場のみなさんと大いに交流できたらいいなと思っています。

鹿児島・徳峰健一郎さん 鹿児島生協病院(6年目)
 川崎で起きた問題は、他人ごとではない、色いろ見てきたいと思って来ました。昨日から着任したばかりですが、職場の人たちが、率直な気持ちで話してくれるのが、うれしいです。
 業務上で気づいたことや、「改善できそうだな」と思ったことは、どんどん意見をあげるようにしています。

福岡・白石真由美さん 大手町病院(7年目)
 経験したことのない科で勉強したいと思っていたので、はりきってます。
 送り出してもらうときに「大丈夫?」と、心配もいただきましたが、みな、優しくしてくれるし、新しい環境で元気にがんばります。

宮崎・北野里佳さん 宮崎生協病院(7年目)
 川崎協同病院を支援しながら、自分自身の勉強ができれば、と思って来ました。協同病院つぶしの宣伝カーが病院のまわりを走っていて、たいへんな状態なの かと覚悟してきたのですが、そこまでではなかった…。仕事のやり方の違いなど、慣れないことがいっぱいですが、がんばってます。

病院への増資は地域からの“励ましの声”

 「事件」はありましたけれども、もともとはよい病院なんです。川崎協同病院の医師、看護師さんには他の病院にはない優しさがある。私の座右の銘は「愛と 平和」だけれども、まさしくそれにあてはまる病院です。「差額ベッド料はとらない、個室は重病の人から入るもの」「医師や看護師は贈り物や謝礼はうけとり ません」、こんな風に言い切ってくれ、お金のあるなしに関係なくかかれるんですから素晴らしい。他の病院が断わった患者も、ここで引き受ける、ということ だってあります。
 私は病院をつくろうとしていたころからの組合員です。協同病院とのつきあいはかれこれ五一年になるのかな。組合員は不動の確信をもっているから、ここにかかるんです。私は、この病院で看護師さんに手をとられて死ぬつもりです。
 「この病院をささえよう」という地域からの意思表示は、とくにあらたまった言葉ではいただいていません。でもなにより、地域の組合員さんからいただく増資が、協同病院に寄せられた励ましの声そのものだと思っています。

川崎医療生協組合員 上原 幹男さん(80歳)

 (民医連新聞 第1309号 2003年6月2日)