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民医連新聞

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「いったい何を見直したの!?」 ヘルパー・ケアマネの思い裏切る

介護保険報酬4月改定

 1月23日、社会保障審議会(厚労相諮問機関)は、4月改定の介護報酬を坂口厚労相の案通り了承。介護報酬は全体で2.3%のマイナス。実施で利用者や事業所にはどんな影響が? 東京・杉並のヘルパーステーションと在宅介護支援センターを取材しました。

(汐満忍記者)

ヘルパー事業所では…

 「あてはめをしたら、すごい減収」。ヘルパーステーション「ほっと杉並」の所長で看護師の鈴木さんは、「うちでは月額約100万円のマイナスです。現在の収入の約25%が減ってしまう」と顔を曇らせました。
 厚労省が「在宅重視と自立支援の観点から、全体で2.3%アップした」はずの訪問介護報酬には、とんだ「落とし穴」が。

 生活援助(現:家事援助)については、「30分以上~1時間」の単価は3割以上の大幅アップ。身体介護も「30分未満」では1割アップ。
 『シルバー新報』(1月31日付)は「身体介護は1時間半が泣き笑いの分岐点」と報道しました。長時間のサービスは大幅ダウンとなります。厚労省は単価を下げて長時間サービスを「適正化」した、と説明しています。

 鈴木さんは「私たちのステーションは介護度の高い人をたくさん担当しています。気管切開や難病など医療依存度の高い人、重度の痴呆の人。みな長時間のサービスが必要な人です。
 改定案では、たとえば身体介護を八時間なら、収入は現在の半分以下に。1回の訪問収入が1万8952円もマイナスです。今回廃止された『複合型』より低くなる」表1

 「ほっと杉並」は天沼診療所と連携しています。
 「最近は、退院できるのだろうか? と思う患者さんが病院から在宅にもどってくる」と鈴木さんは例をあげます。
 「近く退院するという患者さんを病院に訪ねたら、水分すら摂れず誰が見ても脱水なのに点滴していない、熱があるのに抗生剤投与もない…」。主治医にデー タを求めると「検査はしていない」と。その医師は平然と「厚労省も風邪くらいで入院するなと言ってる」とも。家族は主治医から、「入院が90日を超えた ら、月100万円かかる。払えないなら家に連れて帰るか、療養型の病院に転院して」と迫られました。
 「だから身体介護の要求は高いのです。ヘルパーにとっても、やりがいのある仕事です。これまでと同じ業務内容なのになんで収入が減少するの? と言いたい」。鈴木さんは「命が軽んじられているのでは?」と憤ります。

 今回の報酬改定は、短時間サービスばかりが報酬アップ。「手の掛からない利用者」を選ぶ傾向があると批判されて いる大手企業経営のヘルパー事業所に対して「手厚くした」とも見えます。医療改悪を背景に、地域にふえる濃い医療や身体介護を必要とする人。この人たちの 負担を軽くし、介護事業所もたちゆく制度へ、抜本的な改善こそ求められます。

表1)【時間別身体介護サービスの報酬比較】 単位:円
  0.5h 1h 1.5h 2.0h 2.5h 3h 3.5h 8h
改定前 2,100 4,020 5,840 8,030 10,220 12,410 14,600 34,310
改定後 2,310 4,020 5,840 6,670 7,500 8,330 8,160 16,630
増減 210 ±0 ±0 -1,360 -2,270 -4,080 -5,440 -17,680

「身体介護30分未満」と「生活援助」(現:家事援助)は引き上げとなるが、「身体介護1時間半」以上のサービスでは、30分毎の加算が「2190→830円」となり、大幅引き下げに。3時間以上のサービスは、改定後に廃止される「複合型」すら下回る計算。

介護支援事業所ケアマネは…

 「この改定はケアマネにとってはとても酷」。在宅介護支援センターケア24西荻施設長・ケアマネジャーの斉藤稔さんは言います。
 見直し案は「ケアマネジャーのケアプラン作成の報酬を一七%アップした」としています。しかし厳しい条件を付け、できなければ「7割に減額」です表2。「ケアマネ業務の質を評価したのではなく、業務の体裁を整えさせるための改定」と斉藤さんは酷評。「監査で指摘されないために現場は必死になる。膨大な業務量となります」。
 斉藤さんは「見直し案にある3つの条件を現時点でクリアしている事業所はほとんど無いと思います。だから3割の減算が本当のところ。現行の「要支援」の報酬を下回る」。

表2)【居宅介護支援(ケアプラン作成)報酬】
   改定前 改定前
要支援 6,500円 8,500円
要介護1、2 7,200円  
要介護3以上 8,400円  

 

B ※地域加算を導入
※4種類以上サービスは1000円加算
※下の要件を満たなさい場合はマイナス30% C 要件とは(1)居宅サービス計画を利用者に交付すること (2)特設の事情のない限り、少なくとも月1回、利用者の居宅サービスを訪問し、かつ、少なくとも3月に1回、居宅サービス計画の実施状況の把握の結果を 記録すること (3)要介護の認定や更新があった場合に等において、サービス担当者会議の開催、担当者に対する照会等により、居宅サービス計画の内容について、担当者か ら意見を求めること

 ケア24西荻では、常勤換算で3.3人が月に170件のケアプランを作成しています。一人だいたい50件。報酬 上の減点を避けるためには、毎日2、3件も利用者訪問をしなければならないといいます。そうすれば一人が担当できる件数が減ってしまう。報酬単価が上がっ ても、事業所の収入は下がり、経営にも大きな打撃です。
 ケアマネの仕事は、患者さんの状況を知り、退院時の相談にのり、サービス提供事業者と連絡調整、苦情処理など多岐に渡り、地域を駆け回るといってもよい ほど。「患者さんと少しでも多く向き合えるよう診療報酬上の評価を」と改善を求めてきたケアマネの声が届いたとはとても言えません。

(民医連新聞 第1300号 2003年2月11日)