副作用モニター情報〈190〉 薬剤性間質性肺炎の早期発見と対処
全日本民医連薬剤委員会
薬剤性間質性肺炎の早期発見と対処
10~12月モニターで、3例の間質性肺炎等の副作用が報告されました。「複数の漢 方薬(柴朴湯、柴胡加竜骨牡蛎湯)を開始後五日で特有の製剤を開始し発現した例」「肺気腫のある九一才の高齢者に、アミオダロンと酸素が処方され15日で 微熱、胸部X線陰影、血清KL―6の上昇を認めた(診断は肺線維症)例」です。
その他疾病でのKL-6値陽性率;肺結核28% |
本症は、直接的細胞障害作用(抗悪性腫瘍剤)、肺実質細胞へのリン脂質沈着(抗不整脈用剤アミオダロン)、アレ ルギー反応(漢方薬その他多くの薬剤)によることが知られています。早期発見・対処により重篤化を防ぐことができますが、診断・原因薬剤の特定に長期間を要した例も報告されています。
薬剤性間質性肺炎は、原因薬剤が多種多様でしかも重篤な事例が多く、副作用の早期発見が重篤化の回避、軽減のために欠かせません。あらためて早期発見・対処について概要をまとめましたので活用して下さい。
まず「呼吸困難、乾性咳、発熱」等の初期症状が発現したら、直ちに医師に連絡するよう患者に伝えておく必要があります。診断は、胸部X線でのスリガラス 状陰影、異常肺音(捻髪音)、動脈血ガス分析による低酸素血症等により可能ですが、症例のように胸部X線で異常が認められず、LST陰性の場合もありま す。上記に加えて、診断補助および治療開始の判断指標として有用とされている「血清中シアル化糖鎖抗原KL―6」(実施料150点)での測定が有用とさ れ、肺胞壁炎症状態を把握する上で定期検査が大切です。
治療は原因薬剤の中止、呼吸管理、必要に応じてステロイド治療ですが、原因薬剤の中止が原疾患に重大な影響を与える場合(抗けいれん剤、抗不整脈剤など)は、代替え療法の検討も含め、慎重に対応します。
発現の予測は困難ですが、もとに肺病変がある場合、高齢者、放射線治療、酸素療法との併用などはリスクファクターとなること、発現時期は一定せず、癌化学療法剤では投与終了後に発症する例があることもふまえ早期発見につとめる必要があります。
(民医連新聞 第1300号 2003年2月11日)