高い保険料(税)滞納証明書ふえる 国民健康保険 酷税の異常ぶり
「国民健康保険料(税)が払えない」。全国で400万を超える世帯が滞納、これは国保に加入する世帯のおよそ18%にのぼります(図1)。 病気になっても受診できない事態は深刻です。各地の社会保障推進協議会が「国保一一〇番」や「現地調査」を行い、自治体との交渉をすすめ、民医連の病院・ 診療所窓口でも相談活動にとりくんでいます。国保の実情を探りました。
「資格書」で受診した患者さんの相談活動で
――神奈川・汐田総合病院――
「資格書の発行は増えていますが、資格書で受診する人は最近ではむしろ減っている」。神奈川・汐田総合病院の事務次長の湯川幸雄さんが、資格書で受診された方の相談活動に携わってきての印象です。同院では一年余の間に四八件の相談を受けました(表2)。02年10月以降、医事職員が全員で気を配り、小1時間かけ対応しています。
湯川さんは「01年10月ころは、資格書が何か知らずに受診する人がいましたが、最近では資格書を見せず、自費で受診するか、かからない」と言います。
なぜか。法的には、資格書で受診した場合、窓口で全額を支払い、後日7割分が返還されることになっています。しかし、実際はそうではない。返還の手続きに役所に行くと、「滞納分に充当するように」言われ、これを断れません。
「資格書のことを、ある患者さんは『保険税滞納証明書じゃないか』と言いましたが、まさにその通りで、制裁的なもの。医療機関を国保税収納業務に協力さ せるためでもある。市が言うような国保運営の円滑化には、何も役立っていない」と湯川さんは憤ります。
横浜市鶴見区では「資格書の発行義務づけ」で01年10月から発行数が激増しました(表3)。
市役所とかけあう
「えっ! これは保険証ではないのですか。いまお金がない」という患者さん、病院の未払いが累積する患者さん。湯川さんたちは事情を聞き、場合によっては保険証を発行してもらうために市役所に同行することもあります。
市役所では滞納している保険料(税)を払えと迫られます。滞納はまるで「脱税だ」と言わんばかりの対応も見られ、民医連の職員が同行するとしないでは 違った結果になってしまいます。一人で出かけ、サラ金から大金を借りて払わされた人もいました。「今日持ってきた1万円は、この一家の食費なんですよ。ど うしても治療が必要なんです。保険証を発行してやって」。患者さんの窮状、治療の必要性を強く訴え、粘ります。
湯川さんは「半日がかりで業務に支障がでる。今は市役所で話し合いの場から電話してもらい、係長に直接話します」。それでも話が2時間におよぶことも。
横浜市社保協は市当局と定期的に交渉を行っています。その場で市の担当者は、「ていねいで親切な納付相談」に心がけると発言。「対市交渉で言質を取っ て、これに反する実態があれば止めさせること。いつ誰が言ったかを、きちんと記録しておくこともたたかい」と湯川さんは強調します。
遡り保険適用させた
湯川さんは「資格書で受診せず、その日は自費で支払っておき、すぐに役所と交渉して、短期保険証を手に入れた方がむしろよい。保険証が手に入れば、その日の診療を保険扱いし、医療費の七割を返還できる」と説明します。
資格書発行の期間は「保険診療の適応外」という規定がありますが、医療機関には自費で診療した患者が、資格書を持っているかそうでないか、わかりません。交渉のなかで市側は「保険証を確認したら保険請求して良い」と認めました。
「資格書」の患者に向き合って湯川さんが実感したのは、中小業者の大変さ。「保険料が高すぎ、零細業者は払えない。解決策は?と言われれば、国と自治体の姿勢を変えるしかない」。(小林裕子記者)
(民医連新聞 第1298号 2003年1月21日)