【見解】「国保・介護110番」に深刻な相談 事例もとに自治体交渉すすめる
北海道・札幌社会保障推進協議会
北海道・札幌社会保障推進協議会は「国保・介護110番」を強化し、毎月、第4木曜日に実施しています。これを軸に、相談活動と学習会、行政当局との交渉・懇談、市民集会、国保・介護保険料の集団減免申請など、多面的な行動を展開しています。
昨年から3000枚ものポスターで各区の社保協の「110番」を市民にアピール。02年1~2月の間に556件の相談が寄せられました。
訪ねてくる人たちの相談内容はいずれも深刻です。社保協がいっしょに役所と交渉をすすめ、保険証を交付させたケースもしばしば生まれ、相談者から「やっ と安心して受診できる」と喜ばれる一方、国保行政の問題点が浮かび上がってきました(下に事例)。
札幌社保協事務局次長の斉藤浩司さん(北海道勤医協職員)は、典型的な事例と交渉の経過や役所の対応の問題点をニュースで詳細に伝え告発しています。
札幌市社保協は、11月6日に札幌市と交渉。資格書発行・解除のルールなどを求めました。
90人が参加者し、生存権侵害の実態や行政のひどいやり方を告発し、改善を迫りました。
市ははじめ拒否的な態度でしたが、参加者の粘り強い説得で、保健福祉局理事が「支払いに偏っているとしたら、調査し、指導する」と、問題の一端を認めました。運動がかたくなな行政を動かした瞬間でした。
事例1
30歳の単身世帯。大工でしたが、会社の健康診断で異常を指摘され、01年11月に退職。翌年7月に雇用保険が切れ、クレジットで20万円借り生活していました。
保険料は01年度の未納分28万円と、今年度の37.8万円を請求されましたが払えません。
入院のベッド待ちの状態のこの人に、区役所の担当者は「2年分の滞納額の1割、6万円払えば短期保険証にする」と頑迷に言い張りました。最後には「01 年度の滞納の1割2万8000円を払えば交付する」と態度を変えましたが、「入院が必要な特別な事情」の訴えは聞き入れず、拒否。係長は「救急車で運ばれ た場合に発行したことはあるが」「お金を払わないで短期保険証を出したことはない」と強弁しました。
東区110番連絡会は「重大問題だ」と翌日区役所と交渉し、3カ月の短期証を出させました。やりとりでは「この人は02年度は減免の対象世帯だ。8月に 資格書で受診し5000円支払ったので、7割分の償還金3500円と1500円足して5000円納付する」として資格書を解除させました。実はこの人は以 前、納付相談に5000円を持って行っていたことがわかりました。そのとき区の担当者は「それだけではダメ」と言い受け取りませんでした。
同市では「特別な事情」に該当した場合は無条件に短期証を発行すると定めています。これには「納付約束」や「一定額以上の納付」は要しません。区の国保 課が、市の方針に従わず、持参したお金を受けとらないのは重大な違反。この交渉の後、同様のケースでは「特別な事情の届け」を受け付けるようになりまし た。
事例2
40歳の女性。子ども2人を抱える母子世帯。年収は180万円程度。生活がたいへんで国保料を滞納。12月に資格書が送られ「病院に行けない」と悩んでいましたが、「110番」を知って相談に。
今回7000円支払い、短期証が交付されました。「貧血と歯の治療ができる」と喜びながらも、「保険料を払っていなかったから、区役所に行けなかった」と話しました。
この人は法定減免世帯。生活保護以下の収入で、暮らしがたいへんなことは役所にもわかっているはずです。こういう人に制裁措置をしてはならず、「納付相 談に来ない」ことは「払いたくない」と同じではなく、「支払うお金がないので相談に行けない」のです。保険証を取り上げるのでなく、優しく相談できる役所 なら足が向くはずです。
事例3
59歳の男性は、土曜日の早朝に自宅で倒れました。病院に運ばれ硬膜下血腫と診断され、緊急手術が必要になりました。資格書が交付されていたので、月曜日に妻が区役所に「保険証の発行を」と頼みに行きました。
市の担当者が「いくら払えますか」というので、手持ちの1万円を払って短期保険証をもらいましたが、月曜日の日付でした。土日2日分の医療費10割分として42万円を請求され、途方に暮れていました。
社保協などが区役所国保課長と交渉した結果、(1)短期証発行日を受診日前に遡る、(2)妻の資格書も解除することに。
(民医連新聞 第1298号 2003年1月21日)