くすりの話し 『民間療法』のよせる患者の気持ち?効果は?金額は?
全国糖尿病追跡調査「民間療法アンケート」より
昨年12月7日に全日本民医連糖尿病シンポジウム分科会「へんしん5」で全国糖尿病追跡調査が717人を対象に行った「民間療法アンケート」の集計結果が発表されました。これに関わった愛知・名南病院、伊藤有史医師に聞きました。(編集部)
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一般に疾患が慢性になるほど患者様は現在受けている治療の他に何かよいものがないか探そうとする傾向があり、そこには様ざまな情報(迷信や民間療法など)が入り込んできます。
そこで民医連を受診される患者様がどの程度「民間療法」を試しているのかを知り、その評価をするためにアンケートをしました。
はじめに、「民間療法をためしたことがあるか?」を質問。回答があった623人中、「現在している」が20.5%、「過去に試したことあるが現在はして いない」が28.4%と現在・過去を通して約半数の方が民間療法を試していることがわかりました(図1)。
次に「試したことがある」と答えた305人の方にその内容をたずねました。ウーロン茶と答えた人が124人ともっとも多く(約4割)、どくだみ茶、黒 酢、漢方薬、杜仲茶があとにつづきました。その他に、「健康茶」に分類されるものが19種類あり、「健康茶」を試す方が多くいます。
その療法を知ったきっかけは、回答した383人中「家族・知人からのすすめ」が39.7%、「マスコミからの情報」が37.9%で二つ合わせて約8割を占めました。家族・知人、マスコミの影響力が大きくなっています。
はじめた動機は、「血糖値が下がると思って」が41.4%と最多でした。使用期間は、254人が回答し、1年未満がもっとも多く50%を占め、1~5年 未満が37%、5年以上が13%。平均期間は34カ月(2年10カ月)で、最長期間は45年でした。
何と300万円を支払った人も
かかった費用について、回答のあった177人中、10万円未満が21%、10~50万円未満が二九%、50~100万円未満が13%、100~500万円未満が28%、500万円以上が九%になり、(図2)のように二つ山ができました。最高金額は3000万円が1人、2500万円が1人、2000万円が2人、1000万円が4人いて多額の金額を民間療法に費やしているという驚くべき結果がでました。
民間療法の効果はあったのか
「(民間療法を行いながら)病院への通院、治療はどうしたか?」を聞きました。回答した308人中、実に92.5%の九割以上の方が、民間療法を行っていても、きちんと通院・治療を続けていました。
実際に試してみた効果を質問。回答した292人のうち最も多かった答えが、「どちらともいえない」で約半数の44.2%を占めました。残りは、「非常に 効果あった」5.8%、「少し効果があった」22.9%、「あまり効果がなかった」18.5%、「全く効果がなかった」8.6%という結果でした(図3)。「効果あり」と答えた群28.7%、「効果なし」と答えた群27.1%はほぼ同程度であり、民間療法の効果に関して回答に偏りが見られなかったことは興味深いところです。
患者様の気持ち大切に
民間療法とヘモグロビンA1cの経年変化を調べたところ、男女ともに「現在あるいは過去に民間療法を試した」群と「試したことがない」群との間では、差 は認められませんでした。どちらの群も同程度のヘモグロビンA1c改善を経年的に認めました。このことから、民間療法の治療効果はあまりないと判断してい ます。ただし、二つのグループ分けで比較した場合に差がなかったと言えますが、民間療法の種類別の比較をしていないので、すべての民間療法に効果がないか どうかはわかりません。実際に患者様から聞かれたときには「あまり効果がない」と答えています。
しかし、高価なもの、血糖値を悪化させることが明らかなものでない限りは、いろいろ考えて民間療法を試す患者様の気持ちを大切にすることが重要です。
(民医連新聞 第1298号 2003年1月21日)